住み替えのポイント

2026年のマンション所有者の「資産防衛」と「売却戦略」

都心のマンション価格が高騰する中、すでにマンションを所有している人は資産を守るために、何を考えるべきなのでしょうか。ベテランの住宅評論家・櫻井幸雄さんが2026年の不動産のトレンド展望を踏まえて解説します。

目次

たしかに、今売れば高く売れそうだが

都心部を中心にマンションの値上がりが止まらない。新築はもちろん、中古も価格が上昇。これからマイホームを買おうとする人たちにとって厳しい局面が続いている。それに比べると、幸運だったといえるのが10年前や15年前にマンションを買った人たち。マンション価格が安いときに買えたし、値上がりによる売却益も見込めるからだ。

しかしながら、「価格高騰以前にマンションを買った人」は単純に値上がりを喜んでいるわけではない。たしかに、今住んでいるマンションは高く売れそう……しかし、売った後にどうするか。売却した後、より高額のマンションを買えば、重いローン返済で苦しむことになりがちだ。そもそも、今住んでいるマンションより好条件の物件が見つかるのかどうか。また、今が売り時なのかも分からない。悩めるマンション所有者のために、2026年の「資産防衛」と「売却戦略」を考えてみた。

10~15年前は「マンションはまだまだ値下がる」といわれた

株や貴金属と同様、不動産には投資商品の性格がある。タイミングよく売買することで儲けを出すことができるからだ。「安いときに買って、高いときに売る」とか「安いものを買って、高くなったときに売る」ということができれば、莫大な利益が生じることもある。が、この「相場の予測」が難しい。

というのも、経済の動きや金利動向、為替、世界情勢などいろいろな要素があり、どのように展開するか予測不可能であるからだ。

そもそも10年や15年前に都心でマンションを買った人の多くは、将来の値上がりを確信して購入を決断したわけではなかった。

2010年から2015年は「マンションはまだまだ下がる」とされた時期で、「2020年東京五輪の後は暴落する」とまでいわれた。その頃、私は「これから上がる」し、「東京五輪の後でも暴落しない」という記事を出していたが、当時は相手にされなかった。悔しい思いをしたので、私のオフィシャルサイトで2015年10月に新聞のインターネットサイトに掲載した記事を残している。

当時、同様の内容をセミナー等で解説し、それを信じて都心マンションを購入した人たちからは「おかげで、勇気を持って買うことができた」と感謝されることが多い。

間違いなく言える、たった1つのこと

そのように背中を押されなければ買う気になれなかったのが、10年前から15年前の状況。「今買えば、儲かる」と確信していた人は少なく、「将来儲かるかどうかはわからないが、今の価格水準なら、この先、さらに値下がりしたとしても大きな損にはならないだろう」。そんな考えで、購入を決断した人が多かったというのが実情である。

それくらい、将来の予測は難しい。当然、「買い時」「売り時」のベストタイミングを見極めるのも困難だ。しかし、間違いなく言えることがある。

それは、「今住んでいるマンションを売り、すぐに同条件のマンションを買えば、儲けが出ない」ということだ。

たとえば、15年前に5,000万円で購入した都心マンション3LDKを今1億2,000万円で売ったとする。ローンを精算し、手数料や税金を払った後、手元に8,000万円程度の現金が残るだろう。その8,000万円を元手にして、新築の都心マンション3LDKを買えば、1億5,000万円はする。なので、7,000万円の住宅ローンを組む……結構、大きな額のローンを組むことになるわけだ。当然、毎月の返済額も大きくなり、「儲かった」という実感はないだろう。

 

では、どのような買い替えを行えばよいのか。2つのパターンを紹介したい。

シニアなら、買い替えでローンのない老後が実現

シニアになったので仕事をリタイアした人、もしくは、まもなくリタイアする、という人ならば、お勧めしたい買い替え方がある。

それは、都心のマンションを高値で売り、郊外の駅近・新築分譲マンションに買い替えることだ。

今の「マンション高騰」は都心部ほど顕著で、周辺部は上がり幅が小さくなる。その結果、首都圏の郊外(東京市部や神奈川県、埼玉県、千葉県)ならば、駅から徒歩5分以内の新築分譲マンションで3LDKが6,000万円台、7,000万円台で購入できる物件を見つけることができる。

前述した「15年前に買った都心マンションを売却し、手元に8,000万円残った」という人ならばキャッシュで購入でき、多少の現金を残すことも可能だ。これで「住宅ローンの返済がない老後の暮らし」が確保される。

郊外で駅から徒歩5分以内で、買い物施設が身近というような便利なマンションを購入すれば、車を手放した後の生活も不便さがない。そして、便利な郊外のマンションであれば、この先、値上がりする可能性がある。つまり、資産を防衛することができるわけだ。

都心部から始まったマンション価格高騰は、今、郊外に広まり始めている。高くなりすぎた都心マンションに代わり、郊外の駅近マンションが価格上昇の主役になり始めているのだ。郊外の駅近マンションを値上がり前に買う……2026年はそれができる最後のチャンスになるかもしれない。

便利な場所に住み続けて、様子を見る手も

仕事をリタイアしたシニアであれば、郊外のマンションに移ることもしやすい。しかし、若い世代、もしくはシニアでもまだ仕事をリタイアしていない、という人は、便利な都心での生活を維持したいだろう。

そういう人たちにとって、賢く買い替えを行う手はないか……実は1つある。

それは、高値で都心マンションを売却した後、すぐに次のマンションを買わない方法だ。次のマンションを買わずに、借りる。賃貸マンションの生活を行うのである。しばらく賃貸暮らしをして、都心マンションが下がったところで買う。

この買い替え術が成功すれば、賢く資産を防衛することができる。が、そんなにうまくいくのか、というツッコミが入るだろう。実際、このような方法で資産を増やすためには、いくつかの幸運が必要だろう。予測どおりにマンション価格が変化し、思いどおりのタイミングで、理想のマンションが売りに出る……つまり、机上の空論ということになる。

実際に、この先、マンション市況が下り坂になり、都心マンションが値下がりする可能性は低い。

過去、マンションの値下がりは何度か起きているが、「暴落」と呼べるような急激な下落は一度も起きていない。値下がりするときは、ダラダラと時間をかけて下がり続けるものだ。平成バブルの崩壊も、実は20年ほど下がり続ける現象だった。

そのことを考えると、「都心の便利な場所に住み続けたい」という人は、様子見が最良だと思われる。3年から5年程度マイホームを売ることなく、市況の様子を見るわけだ。

マンションの価格上昇が続けば、わが家の価値も上がっていくので、損はない。マンション価格が下がったら、購入のチャンスとなるので、買い替えを検討する。わが家が高く売れたら、買い替える。高く売れそうもなかったら、そのまま住み続ける。どちらにしても便利な場所に住み続けることができるので、損はないはずである。

  • 本記事の内容は2025年12月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

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