売却の流れ コンテンツ一案

はじめてのマンション売却 「売り先行 VS.買い先行」メリット・デメリットを整理しよう

50代、60代となって子どもが独立すると、ライフスタイルの変化や老後の安心を見据えて、よりコンパクトで便利なマンションへの住み替えを考える人が少なくありません。しかし、いざ住み替えようと思うと、多くの人が悩むのが「先に売るか」「先に買うか」という順番の問題です。住まいのお金専門ファイナンシャル・プランナーの有田美津子さんが解説します。

目次

売り先行は資金計画が立てやすい

住み替えを考えたらまず何をすればいいのか、この記事では「売り先行」と「買い先行」のメリットと注意点を整理し、自分に合った住み替えをするための第一歩をお伝えします。

「売り先行」とは、現在のマンションを売却してから新居を購入する方法です。売却資金が確定してから新居を購入するため、資金計画を立てやすいという大きなメリットがあります。

たとえば、自宅が3,000万円で売却でき、ローン残高が1,000万円の場合、2,000万円が残ります。仲介手数料や抵当権抹消等で110万円の諸費用がかかったとしても、税金が発生しなければ手元に1,890万円が残り、新居購入に充てられる金額が確定します。

一方で、売却後すぐに新居が見つからなければ、仮住まいを確保する必要があります。家賃負担や引っ越しが2回になる手間など、生活面での負担が増える点は注意が必要です。

買い先行は仮住まい不要で、引っ越しがスムーズ

「買い先行」は、新しい住まいを先に購入し、引っ越し後に現在のマンションを売却する方法です。新居をじっくり選べるうえ、仮住まいをせずに1回の引っ越しで済むため、時間的にも心理的にも余裕が生まれます。

また、新居に移ってから旧自宅を空き家として売り出すことで、内見の対応もしやすく、落ち着いて売却活動を進められます。すでにローンを完済しているか、完済可能な預貯金がある場合は、買い先行のメリットを最大限に活かせるでしょう。

ただし、売却資金で旧ローンを完済する場合は注意が必要です。売却が遅れると二重ローンになる可能性があるほか、希望する住宅ローンが借りにくくなる場合もあります。

買い先行であっても、新居購入までに自宅を売却でき、購入と売却を同日に決済できれば、売却資金で旧ローンを完済し、手元資金を新居購入に充てることができます。しかし、売却が長引いたり、希望価格で売れなかった場合は、新居の決済時に手持ち資金で補わなくてはなりません。住み替えにはこうした資金の“ずれ”が生じることを理解しておきましょう。

買い先行で生じる資金負担の解決法

資金の“ずれ”をカバーするために、不動産会社や金融機関が用意している制度やローンを上手に活用する方法をご紹介します。

 

買い替え特約

新居の契約時に「一定期間内に今の住まいが売れなければ契約を白紙に戻せる」という特約を付ける方法です。ただし、売り主側にとっては不確実な契約となるため、価格交渉が不利になることもあります。

  

住み替えローン(買い替えローン)

旧居の残債が残っていても、新居購入資金と合わせて借りられるローンです。たとえば、「旧居の残債1,000万円+新居3,000万円=4,000万円」を一体で借りるイメージです。ただし、新居の担保価値に対して借入額が大きくなるため審査は厳しく、金利が高めになる傾向があり、返済計画を慎重に立てる必要があります。

  

元金据え置きローン

売却が完了するまでの一定期間、新居の住宅ローン返済を利息のみとする仕組みです。二重ローン期間の返済負担を軽減でき、売却資金で一括返済後に新居の返済を始められます。対応している金融機関は限られているため、早めに相談しましょう。

住み替えを成功させるためのポイント

住み替えを成功させるために大切なのは、「新居でどんな暮らしをしたいのか」という視点から計画を立てることです。そのうえで、住まい以外の家族の夢や希望を実現できるよう、無理のない資金計画を立てることが重要です。そのためには、必要に応じて、中立的な立場のファイナンシャル・プランナーに相談し、将来のお金を数字で“見える化”するのも一考です。

また、売却と購入をスムーズにつなぐためには、スケジュール調整や契約交渉をしっかりサポートしてくれる不動産仲介業者を選ぶことも大切です。「高い査定額」ではなく、住み替え全体を見据えて伴走してくれるパートナーを見つけましょう。

住み替えは、人生の次のステージをより豊かにするための大切な節目です。「売り先行」「買い先行」どちらを選ぶにしても、暮らしとお金の両面から計画を立て、安心して新しい生活へと踏み出しましょう。


  • 本記事の内容は2025年11月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。また、本コラムでご紹介している制度や金額は参考例です。制度の適用には個別の審査や条件があります。ご利用の際は、必ず関係機関にご確認をお願いいたします。

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お話を聞いたのは●有田美津子さん

ありた・みつこ/ファイナンシャルプランナーCFP(R)、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、相続診断士。銀行での住宅ローン相談や住宅販売、損保会社での実務経験と、実生活での経験を活かし、子育て世代の住宅購入や、シニア世代の住み替え相談を行う。執筆・監修に『トクする住宅ローンはこう借りる』(自由国民社)がある。
https://fparita.com/

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