みんなで備えるマンション防災

「災害に対し、マンションではどう備えておけばいいのか」。そんな不安をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。マンションには戸建てにはない「強み」があります。管理組合による組織的な備え、共用部に備えられた防災設備、そして近隣住民とのつながり。こうした要素は、いざという時の安心感を高めてくれます。ここでは、マンションならではの防災の仕組みと、日ごろからできる備えについてご紹介します。

目次

1.マンション防災の基本、組織的な備えが安心をつくる

マンションにおける防災計画

マンションでは、基本的には区分所有者で構成される管理組合を中心に防災計画を策定します。計画には以下のような内容が含まれます。

緊急連絡網や安否確認方法

複数の連絡手段を用意しておくことで、万が一の時もスムーズに情報共有ができます。掲示板の活用、管理会社経由の情報共有など、マンションならではの仕組みを知り、活用できるようにしておきましょう。

避難経路と一次避難場所

非常階段の位置や、屋外の一次避難場所を、図面やマップで確認しておくと安心です。日ごろから意識しておくことで、いざという時に迷わずに行動ができます。

共用部の備蓄品の管理体制

マンション共用部に防災備蓄倉庫がある場合は、簡易トイレ、発電機、救護用品、工具類など、共用部で備えている防災用品にはどんなものがあるか、把握しておきましょう。
1年に1度は点検を行い、その際には点検日と担当者を決めておくと管理が楽になります。


管理組合と居住者、それぞれの役割

マンション防災は、管理組合と居住者が協力しあって進めていくものです。日ごろから役割を整理しておくことで、無駄なく効率よく、安全に動けるようになります。

管理組合の役割:計画作成、備蓄管理、訓練企画

マンション防災の中心となる存在です。防災計画の作成・更新、共用部の備蓄品管理、訓練の企画など、全体の仕組みづくりを担います。災害時には管理会社との連携窓口としても機能します。

居住者の役割:避難経路の把握、訓練参加、家庭の備蓄

避難経路の確認や各家庭での備蓄、訓練への参加など、日常の行動がマンション全体の防災力を支えます。

双方に共通:協力しやすい関係づくり

普段からあいさつを交わしたり、共用スペースでの交流イベントに参加したりすることで、災害時の声かけや助け合いがスムーズになります。


日常の中の準備

特別なことをしなくても、生活の中で意識しておけることはたくさんあります。

家庭の備蓄品を定期的に見直す

食料や水、電池など、期限があるものはどうしても忘れがちに。月に一度ざっとチェックするだけでも安心度が変わります。ローリングストック(使いながら補充する方法)なら無理なく続けられます。

避難経路を実際に歩いてみる

実際に歩いてみると、「ここ暗いな」「ここの道は狭いな」など気づく点があり、いざというときに迷わず動けます。手すりの位置なども確認しておくと安心です。

家族の連絡手段を決めておく

電話がつながりにくい状況を想定しSNSや災害用伝言版など、複数の連絡方法を家族で共有しておきましょう。いざという時の集合場所も決めておくと、安心です。

こうした“ちょっとした習慣”の積み重ねこそ、実は最も実効性の高い防災準備と言えるでしょう。

2.防災訓練で「できること」を増やす

初動対応を身につける訓練

災害直後の行動は、被害の大きさを左右します。ここでは項目別に見ていきましょう。

安否確認の方法を知っておく

マンション内の掲示板、SNS、管理会社への連絡など、複数の確認方法を訓練で試しておきましょう。

消火器の場所と使い方を確認

消火器の場所と使い方を知っておくことは、火災の拡大を防ぐうえでとても重要です。
防災訓練で実際に触ってみると、操作のイメージが具体的に掴めます。

防災倉庫の使い方を体験

防災倉庫の鍵の場所、取り出し手順、照明がない環境での動き方など、実際にやってみることで、どこで詰まりやすいかがが分かります。


ライフライン停止を想定した訓練

初動の次は、水道や電気が止まった状態での生活を想定してみます。日常生活が一変する状況で、何が困るのかを体験しておくことが重要です。

・断水・停電を想定した生活体験

水や電気が使えない状況で、どんな工夫が必要か考えてみましょう。飲料水や調理用水の確保、照明の代替手段などを確認しておくと安心です。

・簡易トイレの実際の使い方

実際に設置し、使い方を試すことで、慌てず安全に使用できるようになります。使用後の処理や保管方法も確認しておくとより実践的です。

・近隣住民との協力体験

避難所やマンション内での共同生活を想定し、物資の分配や情報共有の方法を体験します。近隣住民と声を掛け合うことで、普段からのコミュニケーションの大切さも実感できます。

・備蓄品の確認や不足点の把握

普段の備蓄品が十分か、使用方法に問題はないかを確認する機会にもなります。必要に応じて追加や改善を行うことで、実際の災害時にスムーズに対応できます。

こうした訓練を通じて、「どこで困りやすいのか」「何を優先すべきか」が具体的に見えてきます。


マンションならではの訓練メニュー

マンションには集合住宅ならではの課題があります。訓練を通して、災害時の動きを体験しておきましょう。

・エレベーター停止を想定した移動

階段での避難を試し、荷物を持った場合や夜間の状況も確認します。

・防災倉庫の中身・配置を把握

備蓄品の場所や使い方を実際に確認し、スムーズに取り出せせるよう配置を検討します。

実際に動くことで、想像以上に時間がかかるなど、リアルな気付きが得られます。

3.訓練参加時のポイント

家族で事前に確認しておきたい「わが家のルール」

訓練に参加する前に、家庭内であらかじめルールを確認しておきましょう。いざという時に戸惑いが少なくなり、訓練の効果が高まります。

・集合場所

 家族全員が安全に集まれる場所を決めておきます。自宅近くの安全な屋外やマンションの集合場所なども確認しておくと安心です。

・持ち出し品の中身

 避難時に必要な物品を家族で話し合い、リュックや非常袋にまとめておきます。水や食料、懐中電灯、医療品など、誰が何を持つかも決めておくとスムーズです。

・連絡手段

携帯電話だけでなく、連絡手段を複数用意しておくことが重要です。家族間で連絡方法を共有し、万が一の場合でも安否確認ができる体制を整えましょう。

特に小さなお子さんや高齢者がいる家庭では、少し余裕を持った行動計画を立てておくことで、訓練時も安心して動けます。家庭内で事前に共有することで、訓練の理解度も高まります。


当日は「実際の災害」を想定して動く意識づくり

訓練だからと気を抜くのではなく、想像力を働かせて参加をしましょう。 「ここに段差があるな」「夜だったらもっと暗いかも」といった視点で歩くことで、普段気付かない点への気付きが得られます。


訓練後に行う振り返りが大切

訓練はやって終わりではなく、「気づき」を家庭に持ち帰るところまで含めてワンセットです。

  • 家族で気づきを共有する
  • 家庭内の備蓄や家具固定を見直す
  • 必要があればマンション側に改善点を提案する
このサイクルが、防災力の底上げにつながります。

4.三菱地所グループの取り組みを紹介

防災の考え方と標準的な備え

三菱地所グループでは、多くのマンションで防災倉庫や必要備品の整備を進めています。
情報伝達手段を含む設備も揃え、災害時の初動支援ができる体制を築いています。


防災意識向上のためのプログラム・教材の提供

居住者向けに、防災を日常的に意識できる学習コンテンツやワークショップを提供しています。
「自分のマンションにとって必要な備えは何か」を考えるきっかけにもなる取り組みです。


居住者と共に進める「共助力」向上の取り組み

管理組合と連携した訓練や交流イベントは、住民同士の顔が見える関係づくりにもつながります。
こうした小さなつながりが、非常時の大きな安心につながる、そんな考えのもとで取り組みが進められています。

ザ・パークハウスの防災プログラム

まとめ

マンションでの防災は決して特別なことではありません。日頃の備えや訓練の積み重ねは、いざという時の不安を大きく減らします。ぜひ今日をきっかけに、わが家の防災を少しだけ見直してみてください。


監修:一級建築士 尾間紫

  • 本記事の内容は2025年12月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

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