1. なぜ災害時にトイレが使えなくなるのか
マンションのトイレが使えなくなる原因
給排水ポンプの停止
多くのマンションでは、災害時の停電により給水ポンプが動かせず、水が使えなくなることはご存じと思いますが、給水ポンプだけでなく、排水を外に出すために電動の排水ポンプを使っているマンションもあります。停電や浸水で排水ポンプが止まると、流した水が逆流したり詰まったりする原因になります。
排水管の破損
マンションでは共用の排水管を使用しています。排水管が破損した状態で誰かが流すと、汚水が逆流する恐れがあります。
下水道の問題
下水処理施設の停止や、大雨で公共下水道が満杯になると、マンションの排水が流れにくくなり、逆流の危険が高まります。
トイレを流すのは安全確認ができるまで控えましょう
停電や断水が解消しても、排水設備の安全確認ができるまでは、トイレを流すのは避けましょう。必ず、管理組合や管理会社の指示に従ってください。
トイレ問題が命を脅かす
不衛生なトイレを避けようとして水分摂取を控えると、脱水や深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)のリスクが上がります。災害関連死の一因になりうるため、我慢より衛生的な代替手段の準備が重要です。
2. どれくらいの備蓄が必要?|家族で計算してみよう
必要量の計算式
携帯トイレの必要量は、基本的には1日5回×7日分×家族の人数で計算します。例えば4人家族なら、5回×7日×4人=140回分です。ただし、病人や高齢者、乳幼児などは排泄回数が多くなる場合もあるため、必要量を別途確保しましょう。
子どもと大人が家族を想定して一緒に考える防災ツール、「そなえるドリル」では、「家族が1日で何回トイレに行くのか?」を話し合い、必要な備蓄量を計算する問題があります。家族で取り組んでみましょう。
なぜ7日分なのか
大規模災害時、インフラの復旧には最低3日、通常は1週間以上かかります。行政からの支援物資が届くまでにもタイムラグがあるため、最低7日分を準備しておくことが推奨されています。
3. 携帯トイレ・簡易トイレの種類と選び方
便座取り付けタイプ(携帯トイレ)
自宅トイレの便座に袋をかぶせて使用するタイプ。排泄物は凝固剤で固め、平常時は自治体の分別に従って可燃ごみ扱いが一般的です。
ただし、災害時は収集が止まる場合がありますので、二重袋+防臭袋で密封し、直射日光を避けて一時保管できるようにしておきましょう。その後、自治体の案内に従って排出してください。
組み立て式簡易トイレ
段ボールやプラスチック製の便座を組み立てて使用。袋と凝固剤をセットします。自宅トイレが完全に使えなくなった時に便利です。
選び方のポイント
凝固剤の消臭効果
排泄物を素早く固め、臭いを抑える
処理袋の防臭性
二重構造など、臭い漏れを防ぐ工夫
使用期限
5~10年が目安。定期的にチェックを
家族構成
高齢者や小さな子どもがいる場合は多めに
その他の必要な備品
トイレットペーパー、ウェットティッシュ・アルコール消毒液(断水で手が洗えないため)、黒いポリ袋(中身が見えない)、密閉できるゴミ箱も用意しておきましょう。
4. マンションで断水・停電した時の対処法
排水管の安全確認は指示に従って
災害発生時は、排水管やトイレの異常を自己判断で確認するのは危険です。管理組合や管理会社からの情報を待ち、安全が確認できるまでトイレを流さないでください。
マンホールトイレ
三菱地所グループのマンションでは、敷地内にマンホールトイレを設置できるよう準備されています(設置率88.2% ※2024年度引渡物件を対象とした試算に基づく)。防災倉庫に組立キットが保管されており、共用のトイレとして使用できます。その際には、必ず管理組合の指示に従って使用しましょう。
出典:三菱地所レジデンス「まち・サービス 災害対応力|暮らしに、いつも新しいよろこびを。」
自宅トイレでの対処法
携帯トイレを使用する場合:
- 便座に専用袋をかぶせる
- 用を足す
- 凝固剤を入れて固める
- 袋を密閉し、黒いポリ袋に入れてゴミ箱へ
- 手指をアルコール消毒
復旧後の注意点
断水から復旧した直後は、水道管に空気がたまっています。まずキッチンや洗面所の蛇口を開けて空気を抜き、その後にトイレを使用してください。空気抜きをせずに流すと、水圧でトイレの部品が破損することがあります。
5. 今すぐ備えよう|トイレ備蓄チェックリスト
☑ 携帯トイレを計算して購入
基本的には1日5回×7日分×家族の人数分を目安に準備
高齢者や乳幼児、病人がいる場合は必要量を増やしておく
☑ 保管場所を決める
防災バッグ、トイレの収納棚など、すぐに取り出せる場所に
☑ 使用期限を確認
目安として 年1回チェックして、期限が近いものは買い替え
☑ 家族で使い方を確認
実際に試してみるのもおすすめ。使い方を知っていれば慌てません
☑ その他の備品も揃える
消毒液、ポリ袋、ゴミ箱も忘れずに
まとめ
トイレ問題は見過ごされがちですが、生活に欠かせない備えのひとつです。水や食料と同じく、トイレの備蓄も最優先で準備しましょう。「そなえるドリル」で家族のトイレ回数を計算し、適切な量を備蓄することが安心につながります。
監修:一級建築士 尾間紫
- 本記事の内容は2025年12月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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