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【心を添える手紙習慣】シンプルでもちゃんと伝わる日頃の感謝

何気なく口にすることが多い“ありがとう”。あなたが感じた感謝の気持ちは、どれほど相手に伝わっているだろうか。画面に打ち込んだメッセージで、はたして想いのすべては伝わっているのだろうか。電話やメール、SNSが普及し、かつて連絡手段だった“手紙”は想いを伝えるツールとしてその役割を変えた。あたたかな想いで綴られた手紙は、読む人を特別な気持ちにしてくれる。

伝えたい思いを素直に綴る

シンプルなものから華やかなあしらいやイラストのものまでバリエーション豊富に展開されている。

SNSの登場で、周囲に自分の想いを伝える術は一変した。だが、ネットと繋がらないアナログな伝達手段が役立つ日が訪れることもある。

先日スポーツをしていて脚にケガを負ってしまった時のこと。その痛みに立ち上がることすらできない私に、仲間の一人が肩を貸してくれ、もう一人が私の荷物を運び、さらに別の人は家まで送ってくれて本当に助けられた。後日、お礼に菓子を買い求めて渡したのだが、お礼状は入れずじまい。言葉を添えるべきだったと後で後悔した。

この出来事を、手紙や文章の書き方を指南する、手紙文化振興協会代表理事のむらかみかずこさんに話してみると「感謝の気持ちを伝えるお礼状は、良いことを相手に伝えるものですから、本来はとても書きやすいもの。難しく考えずに心から思ったことを綴ればいいのです」とのこと。

さらに、むらかみさんは「私はむしろ声に出して伝えることが苦手。でも文字なら書き直しもできるので、スムーズに自分の気持ちを伝えることができます。会話でも自然と言葉が出てくるようになりました。手紙は相手と1対1でつながる、本当にゆったりとしたツールです。相手を想像して丁寧に綴った言葉は自己肯定感を上げてくれますし、自分を客観視して考える力も身につきます。これを味方につけると暮らしが豊かになると思いますよ」と手紙の効用についても教えてくれた。

確かに私も菓子を手渡す時、「本当にあの時嬉しくて」とクドクド話すことがためらわれ、「お礼です」としか口に出せずに終わってしまったけれど、手紙だったらもう少し嬉しかった気持ちを伝えられたかもしれない。

一筆箋に太いペンで大きめに書く

ではこうした場合に、どんな便箋が適しているのか。

「一筆箋は、気軽なお礼状に最適です。ほんの5行くらいのスペースなので、頭に相手の名前、最後に自分の名前を書き入れたら、本文はたったの2、3行。それなら書き慣れていない人でも書くことを躊躇せずにすむのではないでしょうか」

美しい文字を書けないことについては、どうしようもないだろうと思いつつ、その点についても聞いてみると、「えてして自分の字を気にする人は、目立たない様に細いペンで小さく文字を書きがちですが、むしろ太ペンで大きめの字にした方が文字の美醜(びしゅう)って気にならないものですよ。ボールペンであれば0.7mm以上のものを使うと良いですね」

なんと、そんなテクニックまであるとは! なんだか自分の字で手紙を書きたくなってムズムズしてきた。またケガをしたくはないけれど、次に何かお礼ができる日を楽しみに待つとしよう。

小さい文字で字間、行間を詰めて書くと頼りない印象に(右)。大きな字で字間や行間をゆったり取るとこなれた印象で読みやすくなる(左)。

教えてくれたのは●むらかみ かずこさん

(社)手紙文化振興協会代表理事。東京女子大学卒。企業経営者の仕事に込める想いを言葉にしてまとめる小冊子の制作を手がけた後、2013年に(社)手紙文化振興協会を設立。「手紙の書き方アドバイザー®認定講座」を行い手紙の書き方講師の育成に尽力するとともに、自宅で学べる通信講座「手紙の書き方講座」「仕事で差がつく!メール・文章の書き方講座」を開発・販売。企業研修・セミナー、講演、メディアを通して、心が通じる手紙の書き方や仕事で成果につなげる文章術を広く社会に発信している。

文●柳澤 美帆 撮影●小林 久井(2024年10月掲載)

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