理想の住まいの選び方

都心の高額中古マンションが値下がりの兆し!? トレンドから読み解く価格の動向

マンション価格が高騰を極め、今や一般的な会社員では容易に手を出せない水準となっています。そうした中、これまで堅調だった都心部の高額物件でも、富裕層や高額所得者の買い控えによって需要が減退し、下落傾向が見られ始めました。この値下がりの波は今後、周辺エリアへも波及していくのでしょうか。住宅ジャーナリストの山下和之さんに詳しく分析していただきました。

目次

港区の資産価値は10年前の2.8倍に高騰

全国市区町村 中古マンション価格騰落率ランキング(2026年5月)

各種マンションの総合情報サイト「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、全国の市区町村を対象とした「70㎡換算価格ランキング」を定期的に発表しています。あわせて、10年前・5年前・3年前・1年前・6カ月前・3カ月前と比較した騰落率も調査・公表しています。

それによると、2026年5月時点において、直近3カ月前を除くほぼ全ての期間において大半の市区町村で価格が上昇しており、中古マンションの高騰トレンド自体は依然として続いていることが分かります。

図表1が示す通り、10年前と比較して価格・騰落率ともにトップとなったのは東京都港区です。平均価格は2億1,606万円、騰落率は+182.65%に達し、10年で資産価値が2.8倍以上に膨らんだ計算になります。なお、上昇率50位の千葉県浦安市でも+45.83%と、1.5倍近く値上がりしています。

「都心3区」の上昇ペースが鈍化

全国市区町村 中古マンション価格ランキング(2026年5月)

しかし足元では、これまでの流れを変える「異変」の兆しが現れ始めています。高額物件が集積する都心エリアの一部で、明確な値下がりが見られ始めたのです。

図表2をご覧ください。これは、2026年5月時点における70㎡換算価格の上位10区と、直近3カ月間の騰落率をまとめたものです。一目で分かる通り、価格水準が高い区ほど上昇ペースが鈍化しており、特に港区・千代田区・中央区の「都心3区」は、グラフ内の赤文字で示された通りマイナスへと転じています。港区は3カ月で1.7%ダウンしており、仮にこのペースが1年間続けば年6.8%の下落となります。千代田区(0.2%減)や中央区(0.7%減)も、港区ほどではないもののマイナスとなっています。

一方で、価格順位4位の渋谷区以降は依然としてプラスを維持しています。価格帯が落ち着くにつれて(とはいえ十分高額ですが)、上昇率が高くなる傾向が読み取れます。例えば10位の大阪市北区は12.6%増と急伸しており、年率換算では50.4%もの上昇ペースです。

高額所得者や富裕層にも広がる「買い控え」

現在、港区の中古マンションの70㎡換算価格は2億円を超えていますし、千代田区も2億円近く、中央区は1億6,000万円台に達しています。ここまで来ると、一握りの高額所得者や超富裕層でなければ手が出せません。購入をためらう人が増えれば、需要と供給のバランスが崩れて、売れ行きが鈍化します。その状態が続けば、値引き物件が相次ぎ、相場全体が下落トレンドに向かうことになります。

また、実需(自身での住み替え)だけでなく、賃貸運用を狙った投資目的の需要も少なくありません。そのためには一定の投資利回りが必要ですが、価格が高くなり過ぎると利回りが低下して、投資意欲を阻害することになります。

具体例を挙げると、2億円の物件で5%の表面利回りを確保するためには「2億円×5%÷12カ月=月額約83万円」の賃料を設定する必要があります。それだけの家賃を払える人であれば、賃貸ではなく、自ら購入を考えるのが自然でしょう。そのため、かなり恵まれた立地のハイグレードマンションでない限り、借り手を見つけるのは容易ではありません。

金利上昇と物価高がさらなる重荷に

さらに2026年に入ると金利が上昇局面に進んだほか、株や貴金属の価格が上がり、金融市場には比較的高利回りな選択肢が増えてきました。こうした背景から、資産の投資先としてのマンションの優位性は相対的に低下しているのではないでしょうか。

これらの諸条件を勘案すると、これまでのような買い控えの動きが、都心3区からその周辺エリアへと波及していく可能性が高いかもしれません。現時点で3カ月前比マイナスとなっているのは都心3区のみですが、図表2にある通り4位の渋谷区は1億5,000万円台、9位の江東区までズラリと「1億円台」が並んでいます。

1億円前後の物件であれば、いわゆる「パワーカップル」などが多少無理すれば購入できるでしょうが、ギリギリの資金計画の場合、今後の金利上昇や生活コスト全般の高騰が大きな足かせとなり、購入意欲を冷やす要因となり得ます。

中古マンション市場は「転換期」へ

2億円に迫る都心超高額エリア、そしてそれに次ぐ周辺の高額エリアの双方で、価格上昇にブレーキをかける条件が整いつつあります。こうした状況が続けば、これまで続いてきた価格上昇の流れに歯止めがかかり、じわじわと下落基調が広がっていく可能性があります。

現在売却を考えている人は、相場が本格的な下落が始まる前に売り抜ける判断が良いかもしれません。逆に購入を考えている人は、今後の下落リスクを織り込み、当面は市場の動向をじっくり見極める姿勢が求められます。いずれにしても、市場の動向をしっかりと見極める目が、これまで以上に重要になりそうです。

  • 本記事の内容は2026年9月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

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