マンションは「一生モノ」ではなく、買い替えるもの
かつては、マンションを購入したら「終の住処」として住み続けるのが一般的でした。しかし、マンションは比較的流動性が高く、売却しやすい資産です。資産価値が維持されやすい物件であれば、売却によって得た資金を次の住まいに活用することも可能です。
また、人生には結婚、出産、転勤、子どもの独立、親の介護など、さまざまなライフイベントがあります。そのたびに住まいに求める条件も変化します。
こうしたライフサイクルと不動産の特性を踏まえると、マンションは一生住み続ける前提ではなく、新築または築浅で購入したマンションを約10年間保有し、売却時に築10年前後となるタイミングで買い替えていくことが合理的だと私は考えています。
なぜ「10年」での買い替えが合理的なのか
マンションを「10年」で買い替えるのが合理的であると考える理由には、制度や市場ニーズ、生活利便性など多方面から複数の理由が挙げられますが、今回はそのうち4点に焦点を当てて解説します。
理由①:売却により「含み益」が活用できる
マンションを資産として考えるうえで重要なのが「含み益」です。含み益とは、購入時よりも物件価値が上昇したことで生まれる利益のことです。ただし、その利益は売却しなければ実際の資金として活用できません。
資産価値が維持されやすいマンションを購入していれば、売却時の利益を次の住まいの頭金として活用できます。価値の高い物件を選び、価値が大きく下落する前に売却する。このサイクルを繰り返すことで、資産を積み上げながら、より資産価値の高い物件へ住み替えていくことも可能となります。
理由②:住宅関係の税制優遇を受けられる期間は10年前後
マンションを購入すると、住宅ローン控除や固定資産税の軽減措置など、さまざまな優遇制度を利用できます。こうした制度の多くは適用期間が限定されており、その期間を考慮すると「10年」が一つの目安になります。
【住宅借入金等特別控除の適用期間は10〜13年】
住宅借入金等特別控除は、住宅ローンを利用して住宅を取得した場合に、一定の条件下において、年末のローン残高の0.7%相当額を所得税などから控除できる制度です。2026年時点では、最長13年間適用されます。
制度内容はこれまでも改正が行われてきました。過去には控除率1%・適用期間10年だった時期もあります。今後の制度変更は予測できませんが、持ち家取得を後押しする政策が続く限り、同様の優遇制度が維持される可能性は高いでしょう。少なくとも、一つのマンションに住み続けるよりも、買い替えることによって再び控除を受ける方が、結果として総控除額は大きくなります。
【10年固定金利は長期固定金利よりも低い】10年で住み替えることを前提にすれば、住宅ローンは10年固定金利も有力な選択肢になります。一般的に10年固定金利は長期固定金利より低く設定されているため、借入コストを抑えやすくなります。住宅ローンは借入額が大きいため、わずかな金利差でも総返済額には大きな差が生じます。
【固定資産税の新築マンションの減額期限は5~7年】新築マンションの固定資産税(家屋分)は、一般的に3〜5年間、認定長期優良住宅では5〜7年間、税額が2分の1に軽減されます。
例えば家屋の課税標準額が2,000万円の場合、標準税率1.4%で計算すると年間では約14万円、最大7年で約98万円の軽減となります。住み替えによって新築マンションを購入すれば、この優遇措置を再び活用することができます。
理由③:築10年以内は買い手がつきやすい
マンションを資産として考えるなら、購入時だけでなく売却時のことも考えておく必要があります。中古マンションを探す人にとって、立地に次いで重視されることが多いのが築年数です。築浅物件は設備が比較的新しく、建物の状態も良好なため人気が高く、売却時にも有利になりやすい傾向があります。特に築10年以内であれば、新築時の魅力をある程度維持した状態で市場に出せるため、購入希望者の選択肢にも入りやすくなります。
理由④:大規模修繕による負担を避けられる
マンションでは、一般的に12〜15年の周期で大規模修繕が行われます。修繕積立金は段階的に増額される傾向にありますが、最初の10年は比較的安く抑えられる傾向にあります。さらに、修繕時期が近づくと、場合によっては追加の一時金が発生したり、管理組合の話し合いが長期にわたって行われることもあります。工事期間中は足場の設置や作業によって、居住性も一時的に低下することになります。
10年を目安に買い替えることで、大規模修繕に伴って発生するこうした負担を回避することができます。
ライフステージに合わせて住まいの選択肢を広げられる
住み替えを前提にすれば、その時々のライフスタイルや家族構成に合った住まいを選びやすくなります。例えば、子育て期には共用施設が充実したマンションを選び、子どもの独立後は夫婦二人に適した住まいへ移るなど、暮らしの変化に合わせて住環境を最適化することができます。また、新築へ住み替えれば、最新設備や新しい住環境のメリットを享受できるのも魅力です。
さらに、将来的に「終の住処」を考える段階でも、資産性の高いマンションを購入していれば、よりコンパクトな住まいへ移って老後資金を確保したり、郊外へ移住して余剰資金を運用に回したり、売却益を高齢者施設への入居資金に充てたりするなど選択肢を広げることにもつながります。
マンションを「資産」として有効に活用する戦略の一つとして、検討してみてはいかがでしょうか。
- 本記事の内容は2026年8月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。
お話を聞いたのは●沖有人さん
おき・ゆうじん/スタイルアクト株式会社 代表取締役。不動産コンサルタント。1988年、慶應義塾大学経済学部卒業。コンサルティング会社、不動産マーケティング会社を経て、1998年にアトラクターズ・ラボ株式会社(現・スタイルアクト株式会社)を設立。保有する日本最大級の不動産ビッグデータを駆使し、マンション市場や資産価値の見極めを支援。分譲マンション価格情報サイト「住まいサーフィン」の入会会員数は44万人超。テレビ・新聞・YouTubeなど多数メディアにも登場している。主な著書に『新版 マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新聞出版)、『眠れなくなるほど面白い 図解 マンションの話』(日本文芸社)など。
https://www.sumai-surfin.com/