注文住宅とは

広さや間取りの自由度だけではない。「注文住宅」に住み替えるという選択。

「都会のマンションは手狭だけれど、買い替えようにも価格が高騰しすぎて手が出ない……」。そんな悩みに直面しているマンション居住者の間で、いま注目されているのが「注文住宅」です。画一的な間取りを離れ、愛着を持って長く安心して住み続けられる、世界にひとつの我が家へ。注文住宅がもたらす豊かさについて、住宅ジャーナリストの山下和之さんにお話を伺いました。

目次

70㎡を下回る、新築マンションのリアル

首都圏における新築マンションの平均価格と平均専有面積は、図表1のように推移しています。月ごとの変動はあるものの、平均価格はおおむね8,000万円から1億円台という高水準。それほど高額であるにもかかわらず、1戸当たりの平均専有面積は60㎡台にとどまっており、平均価格を下回る比較的求めやすい物件では、さらに手狭になるのが現状です。ファミリー世帯がゆったりと暮らすには、少々窮屈に感じられるかもしれません。

一方で、2020年のコロナ禍を契機に、私たちのライフスタイルは大きく変化しました。リモートワークやオンライン授業の普及により、家族全員が家で過ごす時間が長くなったことで、住まいのなかにそれぞれのスペースが求められるようになり、より広い住まいを求める傾向が強まっています。

最近ではオフィスへの出社を促す企業が増えたとはいえ、一度見直された「暮らしの質」が元に戻るわけではありません。住まいを単なる寝食や仕事の場ではなく、フィットネスや趣味などにいそしむための舞台と捉え、広い住まいへの住み替えを考える人が増加しています。

一定の予算内で、心にゆとりをもたらす広さを求めるとき、マンションではなく「戸建て」という選択肢が浮かび上がってくるのは自然な流れと言えるでしょう。

平均120㎡超がもたらす、家族の心地よい距離感

マンションでは1億円近くを投じても専有面積が70㎡を切ることが珍しくありませんが、東日本不動産流通機構のデータによると、首都圏における新築分譲戸建て住宅の2025年度の平均成約価格は4,586万円。マンションに比べて求めやすい価格帯に落ち着いています。広さに目を向けても、土地面積の平均は116.19㎡、建物面積(床面積)は98.41㎡と、十分なゆとりが確保されています。

ただし、これを東京23区内に限ると事情は少し異なります。平均成約価格は9,246万円へと跳ね上がり、土地面積は78.16㎡に縮小、建物面積は97.53㎡となります。限られた敷地を目いっぱいに活用した3階建ての住まいは、急勾配な階段や段差が多くなりがちで、小さな庭を愛でるような心の余白は生まれにくいかもしれません。

そこで、豊かな暮らしの器として注目されているのが「注文住宅」です。ハウスメーカーの業界団体である住宅生産団体連合会(住団連)の調査(図表2)によると、2024年に注文住宅を建築した人の平均床面積は122.5㎡と、120㎡を超えています。これは分譲マンションと比べれば2〜3部屋、一般的な分譲戸建てと比べても1〜2部屋多く確保できる計算になります。

これだけの広さがあれば、家族が同じ時間、同じ家の中で過ごしていても圧迫感を覚えることはありません。お互いに心地よい距離感を保ちながら、ゆったりとした時間を過ごせるのではないでしょうか。

予算と向き合い、賢く仕立てる住まい

「注文住宅」と聞くと、こだわりを詰め込む分、予算が膨らみやすいイメージがあるかもしれません。特に昨今の建築費の高騰を耳にすると、ハードルが高く感じられるのも無理のないことです。

たしかに図表2が示すように、2022年以降の建築費単価の上昇カーブは急角度を描いています。それでも、2024年の1㎡当たりの建築費単価は38.8万円。平均的な122.5㎡の住まいを建てる場合、建築費の目安は4,753万円(122.5㎡×38.8万円)となります。もし、あらかじめ土地を用意できている人や、親の土地などに建てられる人であれば、5,000万円以下でゆとりある住まいを手に入れることができます。

ちなみに、同調査における「建築費と土地代の合計費用」の平均は7,006万円。土地の取得からスタートする場合であっても、近年の高騰する分譲マンションと比較すれば、結果としてコストを抑えながら広い住空間を確保できるという選択肢になり得るのです。

見えない部分のクオリティが、日々の安心を支える

注文住宅を選ぶ大きなメリットは、広さや間取りの自由度だけではありません。目に見えない「住宅性能」における確かな安心感も、見逃せないポイントです。

住団連のデータによると、適切なメンテナンスを行うことで100〜200年ほど持続するとされる「長期優良住宅」や、優れた環境性能を持つ「低炭素住宅」の認定を受けた住まいが、注文住宅全体の9割を超えています。永く安心して暮らせるだけでなく、地球にもやさしい。こうした環境性能の高い住宅は、日々の光熱費の削減や住む人の健康を守ることにもつながる、家計にも身体にもやさしい住まいです。さらに、これらの認定住宅は住宅ローン減税制度において一般の住宅よりも控除額が多くなるなど、税制面の優遇措置を受けられることも、暮らしのゆとりを後押ししてくれます。

また、国が推奨する「住宅性能表示制度」を導入している注文住宅は8割を超えています。建築の専門家が設計と施工の各段階で厳しく性能をチェックするため、引き渡しまでの安心感が違います。その結果、万が一の大地震への備えである「耐震性能」においては、3段階の評価のうち最高等級である「等級3」を97.4%が取得。大きな揺れに見舞われた際にも被害を軽微に抑え、そのまま住み続けられる可能性が極めて高くなります。そのほか「劣化対策」や「維持管理対策」でもその多くが最高等級を満たしており、歳月を重ねても価値が損なわれにくい構造となっています。

分譲のマンションや分譲の戸建てよりも、一回りも二回りも広い空間を、自分たちのライフスタイルに合わせて仕立てる。そして、高い基本性能に守られながら、愛着のある我が家で長く、安心して暮らす。注文住宅は、これからの時代における、ひとつの贅沢で賢い選択肢なのかもしれません。

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