理想の住まいの選び方

理想の物件を探しやすいのは? 東京23区のマンションストック戸数ランキング

マンションストック戸数ランキングは、各自治体にどれだけマンションがあるのかを表しています。物件ストックが多ければ、その分中古市場にも物件が出てきやすい傾向にあります。また、新築・中古問わずマンションが集中している区は、人口増加や都市開発が進んでいる可能性が高く、資産価値を維持しやすくなるかもしれません。最近の事情について、住宅ジャーナリスト・山下和之さんに解説していただきました。

東京都では10世帯中、3世帯が分譲マンションに住んでいる

国土交通省によると、2023年度末時点のわが国の分譲マンションストックは704.3万戸で、国民の1割超が分譲マンションに住んでいることになるそうです。大都市に住んでいるともっと多いような気がしますが、マンションストックの数はエリアによって大きく異なっています。

不動産データバンクの東京カンテイによると、都道府県別に見てマンションストックが最も多いのは、図表1にあるように東京都の約203万戸です。世帯数は約717万世帯なので分譲マンション住まいの割合を示す「マンション化率」は28.29%になります。およそ10世帯中3世帯が分譲マンションに住んでいる計算です。

ちなみに、マンションストックが一番少ないのは青森県の5858戸で1万戸を切っています。世帯数は約59万世帯なのでマンション化率は1.00%にとどまります。なんとマンション住まいの世帯は100世帯に1世帯という少数派ですから、なんだか心細くなりそうです。

築浅のマンションを探すなら江東区がうってつけ

市区町村別に見て分譲マンションストックが多いベスト10と、その市区町村別のマンション化率は図表2にある通りです。

ストック数のトップは東京都江東区の約13.2万戸で、世帯数は27.0万世帯なのでマンション化率は48.67%。江東区は近年では超高層マンションのメッカのようになっていますが、ひと昔前までは下町情緒あふれる戸建て住宅や中低層マンション中心のエリアでした。それが湾岸ブームに乗ってタワーマンションが続々と建設され、アッという間にタワマンのメッカになりました。

そのため、江東区では築10年以内の築浅マンションの割合が高く21.5%を占めています。築10年以内が20%を超えているのは東京都品川区、東京都中央区など数えるほどですから、築浅のマンション、なかでもタワマンを探すには、江東区はうってつけのエリアといっていいでしょう。

世田谷区は築古マンションが多い

東京都江東区に次いで分譲マンションストックが多いのは、東京都世田谷区の約11.4万戸で、世帯数は約48.1万世帯ですからマンション化率は23.75%です。1位の江東区は築10年以内の築浅物件の割合が高いのに対して、世田谷区では早くから分譲マンションの開発が進められてきたこともあって築10年以内の割合は13.3%にとどまり、反対に築40年超の築古マンションの割合が28.5%と3割近くに達しています。

世田谷区は比較的閑静な住宅地が多く、建築規制が厳しいエリアが多いため低層マンションや中層マンションが中心で、超高層マンションが多い江東区とは好対照となっています。物件探しを行うときにはそうしたエリアの特性をしっかりと把握しておけば効率的にできるのではないでしょうか。

ちなみに市区町村別で、江東区、世田谷区に続くのは東京都大田区、東京都港区、東京都新宿区で、11位までを東京23区が占めました。12位に初めて東京23区以外の千葉県船橋市が入ってきます。

人気エリアの新築は徒歩時間が長くなりつつある

ところで、最近の傾向としては新築マンションの徒歩時間が長くなりつつある点を挙げることができます。マンションと戸建て住宅では、最寄り駅からの徒歩時間に明確な違いがあり、マンションでは徒歩5分が最も多く、徒歩5分以内が新築の半数ほどを占めてきました。それに対して戸建て住宅は10分以上が普通で、15分、20分の物件も少なくありません。

しかし、最近では駅近立地でのマンション開発用地の確保が難しくなっています。マンション適地が出ると、ほとんど競争入札になり、事業としては利益率の高い商業施設やホテルに負けて、土地を取得しにくくなっているのです。とくにインバウンドの回復でホテル需要が急増し、高値で落札してくるので、マンションデベロッパーはなかなか勝てず、一段と適地を取得しにくくなっています。

そのため、2024年から最寄り駅からの徒歩時間がジワジワと長くなりつつあります。徒歩5分以内から、6分、7分の物件が増え、人気エリアでは10分程度かかる物件も多くなっています。

※写真はイメージです。

駅近が多い中古マンションにスポットライトが

その点中古マンションは、10年前、20年前に駅前に建設された物件の持ち主が、家族構成やライフスタイルの変化により、住み替えのため売りに出すケースが増えています。

中古マンションの最大の魅力は価格の安さ、新築に比べての割安感にありますが、今後は、徒歩時間の短さなど、価格以外の魅力も注目されるようになるのではないでしょうか。

特に分譲マンションストックの多いエリアの江東区、世田谷区などでは駅近の新築マンションは極端に物件数が減少する可能性が高いので、駅近が多い中古マンションへの注目度が一段と高まってくるのではないでしょうか。

  • 本記事の内容は2025年5月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

お話を聞いたのは●山下和之さん(住宅ジャーナリスト)

やました・かずゆき/1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入成功させる完全ガイド』(講談社ムック)などの著書がある。
http://yoiie1.sblo.jp/