理想の住まいの選び方

首都圏で中古マンションを買うなら神奈川県、埼玉県、千葉県?

東京都、中でも東京23区のマンションは価格高騰で手が届きにくくなっており、周辺3県での購入も現実的な選択肢になっています。そこで、住宅ジャーナリストの山下和之さんに、神奈川県、埼玉県、千葉県のマンション市場の特徴を整理してもらいました。ぜひ、理想の物件に出会うための参考にしてください。

新築マンションは埼玉県より千葉県が高い

まず、新築マンションの都県別の平均価格を見ると、図表1の通りです。

不動産経済研究所の調査によると、2024年の新築マンションの平均価格は、神奈川県が6432万円で、埼玉県が5542万円、千葉県が5689万円です。神奈川県と埼玉県、千葉県との間には1000万円近い差があります。

埼玉県と千葉県を見ると、従来は埼玉県の方が高いというイメージがあったかと思いますが、2024年には千葉県の方が若干ですが、高くなっています。

新築マンションの供給戸数面でも神奈川県が一番多く、次いで千葉県、埼玉県の順です。神奈川県は物件数が豊富で、希望の物件を探しやすいという面はありますが、価格が高いので平均的な会社員では手を出しにくいかもしれません。

その点、千葉県は神奈川県に次いで物件数が豊富ですが、埼玉県より価格が高くなってしまったのが少し気になるところです。

中古マンションは千葉県より埼玉県が高い

中古マンションの成約価格や成約件数は、東日本不動産流通機構のデータによると図表2の通り。成約価格は神奈川県が一番高くて3897万円で、他の2県より1000万円近く高く、新築マンションと同じ傾向にあります。

2県については埼玉県が2977万円、千葉県が2911万円です。新築は埼玉県より千葉県のほうが高いのですが、中古では埼玉県のほうが若干高くなっています。

中古マンションの2024年1年間の成約件数をみると、神奈川県が8514件と、埼玉県、千葉県の2倍近い水準です。価格は1000万円ほど高いのですが、横浜市や川崎市といった人気の高いエリアがあるので、成約件数も多くなっているようです。

埼玉県、千葉県の中古マンションは値下がり始めている

首都圏のマンション価格の高騰が続いていますが、物件形態やエリアによって動きは異なっています。

新築マンションについては、不動産経済研究所のデータでは、2024年には神奈川県が前年比6.0%、埼玉県が13.8%、千葉県が18.9%上昇しました。新築マンションは3県とも上昇が続いていて、特に比較的リーズナブルな価格帯の物件が多い埼玉県、千葉県の上昇率が高くなっています。

しかし、中古マンションは事情がやや異なります。

マンション情報の「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、中古マンション価格について、1年前、3年前、5年前、10年前との騰落率(上昇率、下落率)を調査しています。

それによると、1年前との騰落率は図表3にあるように東京都は23.0%も上がっていますが、神奈川県は0.1%の上昇とほぼ横ばいで、埼玉県と千葉県はマイナスになっています。この傾向がしばらくは続きそうなので、価格動向については都県別にシッカリと見極めて買い時を判断する必要がありそうです。中古マンションの売り時、買い時が近づいているのかもしれません。

コストパフォーマンスが一番高いのは千葉県!?

マンションの専有面積を見ると、2024年に成約した中古マンションでは図表4のようになっています。神奈川県は66.87㎡で、埼玉県が68.00㎡、千葉県が72.14㎡です。千葉県だけ70㎡台と広めのマンションが多いことが分かります。中古マンション価格は千葉県が3県のなかで一番安いのですが、専有面積が広いので、コストパフォーマンスを考えると千葉県が一番恵まれているということができそうです。

ただ、気になるのが中古マンションの築年数。東日本不動産流通機構のデータでは、2024年に成約した物件の平均築年数は神奈川県が25.02年、埼玉県が25.45年に対して、千葉県は27.47年と長めになっています。それが価格の安さにつながっている面もあるのでしょう。築年数の長さによる劣化が進んでいないかなど、物件の見極めが重要になってきます。

コスパ、タイパ、スペパの何を重視するのか

通勤時間について、県庁所在地から東京駅までの時間を見ると、横浜駅からはJR東海道本線などで約25分、浦和駅からはJR上野東京ラインで約26分、千葉駅がJR京葉線・総武線快速で40分ほどとなっていて、タイムパフォーマンス(タイパ)は神奈川県、埼玉県が有利で、千葉県はやや劣ります。

それに対して、見てきたようにコストパフォーマンス(コスパ)とスペースパフォーマンス(スペパ)は千葉県が優位に立っています。自分たちは何を重視したいのかを検討しながら、こうしたデータをもとにエリアを選択すればいいのではないでしょうか。

  • 本記事の内容は2025年3月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

お話を聞いたのは●山下和之さん(住宅ジャーナリスト)

やました・かずゆき/1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入成功させる完全ガイド』(講談社ムック)などの著書がある。
http://yoiie1.sblo.jp/