理想の住まいの選び方

今買う必要がある人のために。2025年の新築&中古マンションの狙い目

マンションは新築も中古も価格が高騰。一方で、世界で経済や情勢の不安が生じている。住宅ローン金利が上がるのでは、という心配もある。先が見通しにくい情勢のなか、それでも「マイホームを買いたい」という人たちはいる。自分や家族のためにマイホームを買おうとする購入層=いわゆる実需層だ。ようやく頭金が貯まった。子どもが小学校に入るまでにマイホームを定めたい……今買わなければならない理由がある実需層のために、2025年に狙うべきマンションとは。住宅評論家の櫻井幸雄さんが解説する。

2025年は「実需向き高コスパ」が主役に

今、新築分譲マンションには新しい波が起きている。それは、「コスパ重視」の動きだ。

マンションはなるべく安く買いたい。しかし、質は高く。そして、毎月支払う修繕積立金や管理費を抑えられ、冷暖房で跳ね上がる光熱費を抑える工夫も欲しい。あらゆる費用を抑えて快適に暮らせるマンションをつくる動きが全国で増えているのだ。

一例を挙げると、全国でZEH(ゼッチ)マンションが急速に増えている。ZEHとは「net Zero Energy House」の略称で、省エネの工夫を凝らし、毎月の光熱費を抑えてくれるマンションである。

今後、新築マンションにおいて「ZEH」が当たり前になることが予想される。となれば、将来、中古でマンションを売るときも、「ZEH」であるどうかが問われることになりそうだ。住んでいる間、光熱費が削減され、中古で売りやすくなる要素となるわけだ。そのため、今マンションを買うとき、「ZEH」であるかどうかは重要なチェックポイントとなる。

写真はイメージです。

郊外の駅から5分以内の新築マンションを狙う

今、東京の山手線内側でマンションを買おうとすると、3LDKで2億円以上の予算が必要な状況になってしまった。だから、「もうマンションは買えない」と騒がれたりするが、都心マンションが高嶺の花であることは今に始まったことではない。

バブルが起きる前の昭和時代から、都心マンションは多くの人にとって高値の花だった。

普通の人にとって、マンション購入の最適地は郊外。山手線ターミナル駅まで30分から45分くらいの乗車時間となる場所で、なるべく駅に近い立地のマンションだ。

そのような郊外好立地のマンションは、マスコミが騒ぐほど高額化していない。「首都圏の新築マンション(70㎡)は平均8,000万円を超えた」という調査データも出ているが、8,000万円以上のマンションなど、とても買えないという人は多いだろう。

実際、堅実なサラリーマン家庭が狙うのは、70㎡程度の3LDKが6,000万円台まで、2LDKで5,000万円台までで購入できる新築マンションである。その条件を満たす郊外マンションはまだ残っている。2025年において、郊外の駅から歩いて5分以内で同条件を満たす新築マンションは積極的に狙ってよいだろう。

築30年以上の中古マンションにはリスクも

6,000万円までの予算で購入できるマンションとなると、東京23区内の中古物件も狙える。江戸川区や台東区、足立区など下町の風情が残る場所であれば、もっと安い価格の中古マンションも見つかる。

それらも検討したくなるが、中古マンションの場合、いくつかのリスクがある。

たとえば、昭和時代に建てられた鉄筋コンクリート造のマンションは築50年程度で建て替えるケースが多いので、築30年を超えるマンションは注意が必要だ。

古いマンションはいつまでもつか分からない、という不安があるため、金融機関が長期の住宅ローンを組んでくれないという現実的な問題もある。35年返済は不可で、20年返済とか15年返済になってしまいがち。それも購入リスクとなる。

もちろん、省エネ性能や防犯・災害対応の工夫も劣るため、内装をきれいにしただけのリノベーション物件に目を奪われないようにすべきだ。中古マンションであれば、築10年までの物件が狙い目。しかし、築10年までだとたいして安くない……それが、中古マンションの実情である。

住宅ローンの金利が上がったら、どうなる?

最後に住宅ローンの金利が上がったら、どうなるか、という話をしたい。

一般的に「金利が上がれば、マンションの売れ行きは落ちる」と予測される。では、これまで金利を上げた国で住宅の売れ行きは落ちたのだろうか。

参考になるのは、アメリカの不動産市況だ。アメリカではインフレ抑制のため、2020年から高金利となり、近年の金利は6%から8%の高水準だ。それで、住宅の売れ行きが落ちたのか。

実情は、落ちていない。というか、高金利になって以降、住宅の販売戸数が大幅に減り、購入しにくい状況が続いている。

アメリカでは、新築より中古住宅の売買が中心となるのだが、中古を売り出す人が大幅に減った。「高金利では買う人が少なく、値下げが求められる。だから、今は売るのをやめた」と考えられたわけだ。

インフレで家賃が上がるので、多くの人がマイホームを買いたがる。しかし、売り物が少ない。だから、値上がりした。同様の動きが生じれば、日本でも「金利の上昇で、住宅価格が上がった」という現象が起きる。今、そのような状況を想像する人は少ない。しかし、アメリカではそのような状況が生じていることを知っておくべきである。

  • 本記事の内容は2025年2月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

お話を聞いたのは●櫻井幸雄さん(住宅評論家)

さくらい・ゆきお/住宅評論家。人生相談家。1954年生まれ。2000年から住宅評論家としての活動をスタート。年間200物件以上の取材を行う現場主義で、首都圏だけでなく、近畿圏、中部圏、福岡、札幌など全国主要都市部の住宅事情に精通する。住宅評論の第一人者として、新聞、テレビ、雑誌など幅広いメディアで活躍している。Yahoo!ニュース「個人」オーサー。
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