快適に過ごしやすく希少価値の高い「センターイン」
玄関から居室に向けた動線が左右に振り分けられるセンターイン。かつては公団住宅などに似たような間取りが多く見られましたが、総戸数が少なくなるつくりのため、建設コストがかかります。マンション価格が高騰する近年、後述する「田の字」タイプなどに比べて、量産しづらい稀少な物件です。
メリット①:PP分離が可能
住戸内で個人的な空間(Private)と、みんなで共有する場(Public)が分かれているのが最大の魅力です。来客時も在宅の家族を気にせずリビングに通しやすい。これは家族間でも有効で、例えばリビングでの話し声や音楽などが、リビングと反対側のバルコニーに面した洋室には聞こえにくいのも特徴です。
メリット②:騒音が気になりにくい
隣接住戸や共用廊下に接する部屋がほとんどないため、近隣の騒音に悩まされにくく、過ごしやすいです。
デメリット:物件を見つけにくい
間取りのデメリットはほとんどありませんが、希少性が高く、見つけにくいのが難点です。資産価値は保ちやすいのですが、高額になる傾向にあり、希望のエリア、価格内で見つけようとすると物件探しに時間がかかるでしょう。
家族の一体感を感じやすい「ワイドスパン」
ワイドスパンは、住戸の間口が約7~8m以上ある間取りで、タワーマンションによく見られます。複数の居室がバルコニーに面している場合が多く、快適な暮らしができます。
メリット①:同居家族の一体感を得られる
他の2タイプにないメリットは家族の一体感です。リビングを中心に、家族が顔を合わせる機会の多い生活を築きやすいでしょう。
メリット②:デッドスペースが少ない
センターインよりもさらに廊下面積を減らせるため、デッドスペースが少なく、占有スペースのほとんどを活用できます。
メリット③:バルコニーが広く有用性が高い
バルコニーにテーブルやチェアを置いて、アウトドアリビングのように活用できます。立地によってはすばらしい眺望も期待できるため、資産価値を保ちやすい面もあります。
デメリット①:家族間のプライバシーを守りにくい
メリットはデメリットにもなり得るもので、例えば「家族の一体感」は個々のプライバシーが守られにくいとも捉えられます。
デメリット②:共用廊下側の部屋が窓なしになる可能性がある
タワマンなどでは共有廊下側に窓を作れないことがあります。角住戸でない場合、窓が設置できず、間接採光の形を取ることになります。寝室であればいいのですが、仕事部屋や勉強部屋として使いたい場合には注意が必要です。
物件数が多い「田の字」は2種類
廊下と水回りで全体を4つに区切る「田の字」。このタイプは2種類あります。バルコニーに対して、リビングダイニング(LD)の短辺が接している「縦長LD」と、長辺が接している「横長LD」です。
【共通】メリット:物件数が多く見つけやすい
水回りを中心に集めて施工効率を上げているため、建設コストを抑えやすく、現在の日本のマンションで最も多い間取りです。希望に合う物件を探しやすいでしょう。
【共通】デメリット:共用廊下側の窓
目の前を人が通るため、カーテンなどで目隠しをせざるを得ず、暗い部屋になりがちです。
【縦長LD】メリット:LD横の部屋の独立性が高い
バルコニーに面した居室がもうけられていることが多く、日光の入る部屋で仕事をしたい人などに向きます。
【縦長LD】デメリット:ダイニングまで光が入りにくい
窓からキッチンやダイニングまでの距離があるので、時間帯によっては暗くなります。
【横長LD】メリット:LDの開放感がある
LDがバルコニーに面することで、明るく風通しがよく開放感のあるスペースになります。
【横長LD】デメリット:窓のない部屋が1つできる
LDに隣接して引き戸などで仕切られた部屋がもうけられることが多いです。独立性が低く、活用しづらいスペースになる可能性があります。
「角住戸」は間取りのデメリットをカバーできる!
挙げてきたデメリットを一部カバーしてくれるのが角住戸です。同じマンションの中では価格が少し高めですが、資産価値を保ちやすいでしょう。
メリット①:窓が多く開放感がある
採光や風通しといった面で優れています。
メリット②:近隣の騒音が気になりにくい
玄関前を行き来する人が少なく、隣り合う住戸からの生活音が気になりにくいでしょう。
デメリット:壁が少ない
壁の面積が少ないため、背の高い家具が配置しにくかったり、中住戸と比べて外の気温の影響を受けやすい可能性があります。
- 本記事の内容は2024年11月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

お話を聞いたのは●後藤 一仁さん
ごとう・かずひと/不動産コンサルタント、株式会社フェスタコーポレーション代表取締役社長。1965年神奈川県生まれ。大手不動産会社のハウジングアドバイザー、東証一部上場企業連結不動産会社の取締役を経て、2002年に株式会社フェスタコーポレーションを立ち上げ、代表取締役に就任。「不動産を通じて、世の中の一人でも多くの人を幸せにすること」をミッションに掲げ、専門家として、テレビ、雑誌、書籍、ウェブなどあらゆるメディアで活躍中。主な著書に『マンションを買うなら60㎡にしなさい』(ダイヤモンド社)、『東京で家を買うなら』(自由国民社)。
https://mbp-japan.com/tokyo/goto/