三菱地所グループ各社の取り組み

「認知症サポーター」がつなぐ“誰も取り残さない”マンション管理の未来

三菱地所コミュニティ株式会社は、全社員を対象に「認知症サポーター養成講座」の受講を推進し、全社員の受講を完了しました。2007年度からの累計受講者数は約1万2,000人となっています。マンション管理の現場を支える管理員はもちろん、これまで直接居住者と顔を合わせる機会が少なかった部門のスタッフも含めての達成です。ひとつの管理会社が、なぜここまで徹底してこの課題に向き合い、社員一人ひとりに知識を根づかせようとしてきたのか。その歩みを三菱地所コミュニティに聞きました。

目次

「認知症サポーター」とは? 管理会社が「認知症」と向き合う理由

三菱地所コミュニティ株式会社
コミュニティ人事部管理業務品質管理室研修グループ
マネジメント・アドバイザー
近藤雄二
「居住者の方が一番頼れる存在が管理員です。成功事例を含めて具体例をさらに共有していきます」

超高齢社会において、認知症はもはや特別な誰かの問題ではなく、暮らしのすぐそばにあるテーマになっています。今日は元気に挨拶を交わしていた住民が、明日にはエントランスで部屋番号を思い出せずに立ち尽くしているかもしれません。そうした場面に日々向き合うのが、マンション管理という仕事の現場です。

「認知症サポーター」とは、特別な資格や役割を持つ人を指す言葉ではありません。認知症を正しく理解し、日常の中でさりげなく支える「応援者」になろう、というのがそもそもの理念です。2005年に国の施策として始まり、全国キャラバン・メイト連絡協議会のもとで講座が実施されています。

三菱地所コミュニティがこの講座を管理員向けに導入したのは2007年のこと。超高齢社会が進む中、住まいを支える管理会社もまた、高齢の居住者への理解を深めるべきだという判断からでした。

20年近い積み重ねと、「全員で受講する」ことへのこだわり

三菱地所コミュニティ株式会社
サステナビリティ推進部長
島村雄介
「外部講師に依存するのではなく、社内講師(キャラバン・メイト)を増員することで講座の内製化を図り、業務スケジュールに応じた柔軟な研修実施を可能にしました」

そして一昨年、同社は現場で働く管理員だけでなく、本社・支店等で勤務する社員まで広げる決断をしました。

理由は明快です。住民からの問い合わせ、家族からの相談、管理組合の理事長とのやり取り ── 住まいを支えているのは管理員だけではありません。フロント担当者や内勤スタッフも、認知症への理解の有無によって対応の質が大きく変わる場面に日常的に直面しています。

「一部の社員だけが知っている」のではなく「関わる社員全員が共通の理解を持つ」ことを目指し、2年をかけて全社へ展開。2026年3月末にはほぼ全員が受講を終え、累計受講者数は1万2,000人を超えました。

この地道な積み重ねは、思わぬ副次効果も生んでいます。社員自身の家族が認知症になった際にも、上司や同僚の理解が得やすくなり、介護離職の回避や、仕事と介護を両立しやすい社内風土づくりにもつながっているといいます。

日本全国で推進されている「認知症サポーター養成講座」の運営や、その講師役となる「キャラバン・メイト」の育成を行う全国キャラバン・メイト連絡協議会から贈られた表彰状。

異変に気づき、適切な支援へつなぐために

三菱地所コミュニティ株式会社
コミュニティ人事部管理業務品質管理室
管理業務品質管理グループ長兼研修グループ長
北島郁夫
「管理員だけでなく全社員が相手に寄り添って対応する『接遇』の基本に立ち返るきっかけにもなっています」

講習では「廊下での徘徊」「専有部内の漏水対応」という、現場で実際に起こりうる2つの場面を動画教材で学びます。同じ状況であっても、物件ごとの勤務形態によって取るべき対応は変わってきます。

感情移入のしすぎが課題になることもあります。ある女性管理員は研修の場で、「私がこの方のお葬式を出してあげなければ」と思うほど、特定の居住者に寄り添いすぎていた自身の経験を語りました。

同社ではこうした声を受け、「一人で抱え込まないこと」を繰り返し伝えています。管理員の仕事は、公平公正を保ちながら適切な距離感で線を引くことも大切な役割だからです。

高齢化の進行は、住まい方そのものにも変化をもたらしています。管理会社としてどこまで踏み込むべきかという線引きの難しさは、むしろ増しています。

認知症サポーター養成講座の様子。近藤氏は社内講師(キャラバン・メイト)として、認知症への理解の促進に寄与してきた。写真提供/三菱地所コミュニティ株式会社

「安心して暮らせるマンション」を未来へ

全社員受講という達成は、あくまで通過点と同社は考えています。入社時研修への組み込みを継続し、サポーター比率100%を維持していく方針です。同社の管理物件には築年数の古い物件も多く、なかには築50年を超える物件もあります。住民の高齢化は今後さらに進んでいくことが避けられません。

認知症への対応は、もはや個人や家庭だけの課題ではなく、地域社会全体で担うべきテーマになりつつあります。

オレンジリングという認知症サポーターの証を手にした社員は、いまや累計1万2,000人。日々のわずかな変化に気づく「目」と、ためらわず声をかける「勇気」。その両方を持ち続けることが、居住者本人だけでなく、離れて暮らす家族にとっても「あのマンションなら安心」と思える住まいをつくっていきます。そうした一人ひとりの意識の積み重ねが、誰もが最後まで自分らしく住み続けられる社会への、確かな一歩なのかもしれません。

  • 本記事の内容は2026年8月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

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