ニュージーランドワインに魅せられた、或るバイヤーの話

嬉しい日には、普段よりも素敵なワインで乾杯しませんか? ストーリーのあるワインは、特別な一日を演出します。今回は、ニュージーランドワイン専門のインポーター「サザンクロス」の代表取締役/CEO・檀原正弘さんのエピソードをご紹介します。

目次

ワインの仕事を選んだ経緯は?

ニュージーランドワイン専門のインポーター「サザンクロス」の檀原正弘さん。

大学卒業に際し、周りの友人は大学院に進む人が多く、自分はどうしようかと迷っていました。そんな時に、オーストラリアにワーキングホリデーで行っていた知り合いから「とても良かった」という話を聞き、思い切って行ってみることにしました。

渡航費用を稼ぐため、都内にあるオーストラリアワイン専門のワインバーで10カ月ほどアルバイトしたのですが、その時に飲んだオーストラリアワインがめちゃめちゃおいしくて、それからワインをよく飲むようになりました。

オーストラリアには1年間滞在し、ワーホリで各地を回りながらワイナリーにも行きました。そこには隣国であるニュージーランドのワインもたくさんあり、口にする機会がありました。日本への帰国時には「とにかくワイン関係で、自分で独立して仕事ができれば」という感じで、この時点ではオーストラリアワインへの思いの方が9割以上でした。

ニュージーランドワインにフォーカスしていくキッカケは?

帰国後は、飲食店や小売店、インポーターで3年間働きました。いろいろと飲むうちに、味の点ではニュージーランドワインが一番好きになり、とりわけ、ニュージーランドワインのソーヴィニヨン・ブランのあの抜群のおいしさ、一度飲んだら忘れられないほどの個性ある味わいにハマっていきました。

独立する時はオーストラリアとニュージーランドを並行して考えてましたが、ニュージーランドの方でとても良い出会いが続き、「とにかく一度行ってみよう」と南島のマールボロを訪れました。そうしたら「なんて心地いいんだろう、もうここに住みたい!」と、国の良さにすっかり魅了されてしまったんです。

当時、オーストラリアワインの輸入元はすでにいくつもありました。一方でニュージーランドワイン専門の輸入元はまだなかった上、納得のいく生産者と出会えたこともあり、「これはチャンスだ。ニュージーランドワインでスタートを切ろう」と思いました。

会社設立の1年くらい前から少しずつ準備を進め、2010年12月にニュージーランドワイン専門インポーター「サザンクロス」を立ち上げました。当初は社員は自分ひとりで、取扱生産者は3社、10アイテムほどでした。今は自分と妻を含めて社員数は4名、生産者数は13、アイテム数は80ほどに広がっています。

ニュージーランドワインの特徴は?

主な生産地は南島のマールボロで、国内生産量の7割を占めています。ブドウ品種では全体の7割がソーヴィニヨン・ブランで、輸出量に関してはなんと9割がソーヴィニヨン・ブランです。ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランが持つ個性が世界中に認められ、一気に知名度が上がったので、これこそがニュージーランドワインの特徴であり、一番のストロングポイントといえるかと思います。

ちなみに、ニュージーランドで最初のソーヴィニヨン・ブランのワインが造られたのは、僕の生まれ年の1979年です。そこから徐々に現代のスタイルへと進化し、世界に認知されるようになりました。

国ならではの特徴はありますか?

ニュージーランドは北島が日本の北海道、南島が本州くらいの大きさです。四季があり、夏はカラッと乾燥して暑いですが日陰は心地よく、冬は適度な湿気があるのでキーンとした寒さではなく、しっとりとした寒さです。秋までは雨が少ないのでブドウ栽培に適しており、人間にとっても過ごしやすい気候です。

暖かい北島には、少し温暖な地域を好むブドウを作れるエリアが広めにあります。産地でいうとホークス・ベイやギズボーンなどで、ソーヴィニヨン・ブラン以外に、シャルドネ、ピノ・ノワール、メルロー、シラーなど、少しボリュームのあるワインがやや多い印象があります。

南島の主産地であるマールボロは、フラットな土地にソーヴィニヨン・ブランの畑が広がっています。樹勢の強さや管理のしやすさからも、フラットな地形の方がソーヴィニヨンに適しているといわれています。

一方、さらに南に位置するオタゴは、ここだけ大陸性気候で、ピノ・ノワールの生産が8割を占めます。風景も他の生産地とまったく異なり、湖を中心にした山間で、長野県でいえば白馬のような、とても美しい風景の産地で、その湖周辺の斜面にピノ・ノワールの畑が広がっています。

夏にぴったり! おすすめのワイン3選

(左)インヴィーヴォ X サラ・ジェシカ・パーカー ソーヴィニヨンブラン 2025
価格:2,860円

サザンクロス創業のきっかけになり、最初に契約させてもらったワイナリーが「インヴィーヴォ」です。そこがハリウッド女優のサラ・ジェシカ・パーカーとコラボして造った、マールボロのソーヴィニョン・ブランです。サラが別荘の近所のスーパーで買ったニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランを気に入り、ワイナリーとの共通の知人がいたことからコラボが実現しました。

普通はステンレスタンクだけでキリッと仕上げるところを、一部に古い樽を少し使い、スキンコンタクト(醗酵前に果皮を漬け込むこと)やオリと接触させる時間を長めに取り、通常よりもパンチがあるスタイルに仕上がっています。

複数のヴィンヤード(ワイン畑)それぞれの特徴を持つワインを造り、最後にブレンドします。サラもワインメーカーと一緒にブレンドに取り組み、ラベルのデザインも彼女自身が手掛けています。2025年で7年目(7ヴィンテージ目)を迎えます。

ニュージーランドでは、ソーヴィニヨンのワインには「グリーンマッスル」という緑色のムール貝の白ワイン蒸しをよく合わせます。ワインにハーブ感があるので、魚介系に少しハーブを添えたもの、たとえばスモークサーモンにディルを添えてオイルをかけるなど、少し緑のものをシーフードに乗せるとよく合います。

ワインに果実味の力強さがあり、香りも強く上がるので、外でBBQしながら気楽に飲むのもオススメです。赤エビやイカなどの魚介類を焼きながら合わせるのもいいですね。「ワインを飲む時間を楽しんでほしい」いうスタンスのワイナリーです。集まりに持参すると話題にしやすいですが、今年はワインスペクテイターのバリュー部門でトップ 10 に入り、クオリティに関しても世界トップレベルです。

(中)グリーンソングス オールドスクール シャルドネ 2024
価格:4,180円

日本人の栽培醸造家である小山浩平さんが、北島のグラッドストーンエリアで造るワインです。ニュージーランドの中でブルゴーニュに近いワインが造れるといわれるマーティンボローの隣に位置するグラッドストーンでも、高品質なピノ・ノワールとシャルドネが育ちます。

ネルソン近郊で「グリーンソングス」をスタートした浩平さんは、現在は鹿児島県の西酒造が運営するワイナリー「URLA(アーラー)」の現地総責任者も務めています。「アーラー」の畑のブドウを自由に使って仕込んだ、いわば“吟味蔵”的な位置づけのワインがこのグリーンソングスです。「アーラー」が王道的なスタイルであるのに対し、「グリーンソングス」ではトレンドや新しい手法を積極的に試しています。

先ほど「シャルドネが良くなってきている」とお話しましたが、その中でも特に気に入っているのがこのワインです。樹齢が30年を超え、ブドウの質が変わってきたのをリアルに実感させてくれた一本で、この先もっと良くなっていきそうです。

昔ながらの、ちょっとしっかり樽の効いたクリーミーさを楽しめる味わいです。そのため、鶏肉にレモンとバターのフレーバーを効かせた「レモンバターソテー」が浩平さんイチオシのペアリングです。ワイン自体にクリーミーさがあるので、魚から白身の肉、クリームソース系のお料理まで、幅広い料理と合わせられると思います。

(右)ノヴム ピノノワール ニュージーランド 2023
価格:4,950円(税込)

仏ブルゴーニュの「コント・ラフォン」で研修中に知り合ったという、ブルゴーニュ大好きなご夫婦がマールボロで運営しているワイナリーです。ニュージーランドのピノ・ノワールは、「ニュージーランドらしいキャッチーな良さを出すもの」と「ブルゴーニュのようなエレガントな雰囲気があるもの」と2タイプに分かれますが、「ノヴム」は後者の中でトップクラス。「ピノはまだまだ進化できる!」と強く思わせてくれる造り手です。

彼らは広いヴィンヤードを持ち、元々マールボロの栽培家としても有名な2代目です。名だたるワイナリーに優れたブドウを供給しており、ワイン造りの腕も一流です。産地は「サザンバレー」という、マールボロの海沿いに起伏のある粘土質土壌のサブリージョン(小地区)。畑全体の最良の区画の中から木を選んで仕込み、残りのブドウ(それでもめちゃくちゃ高品質です)を他の一流ワイナリーに納めています。

そうした贅沢なブドウ選びで造られたこのワインなので、「ブルゴーニュ好きの方に勧めやすい」とソムリエさんからもよく言われます。ブルゴーニュに似た、少し抑制の効いた果実感があり、なめらかな果肉感が落ち着きを伴って静かにじんわり広がります。そして、心地よい厚みを持ったまま余韻まで長く続きます。

現地ではラムチョップやラムラック(骨付き羊肉)などに合わせてもらうのが一番のオススメです。ニュージーランドのグラスフェッドビーフ(牧草牛)の赤身肉を、シンプルに塩コショウ仕立てるのもいいですね。我が家でも、ラムチョップを塩コショウで焼いて合わせるのが一番のお気に入りです。

ニュージーランドワインで今後注目したいことは?

ニュージーランドは、地球温暖化の影響をポジティブに受ける数少ない国といわれています。これまで寒すぎてワインを造れなかったエリアでも、栽培ができるようになりました。

これまではピノ・ノワールの畑の一部にシラーやカベルネ・フランを植えるなど、品種のバリエーションが広がりつつあり、これからの伸びしろが大きい国です。ブドウの樹齢も上がり、その将来性に期待して世界中から造り手が集まってきています。

最大のワイン生産地マールボロからも、まだまだ新しい生産者が出てくるはずです。これからはフラットなヴィンヤードではなく、起伏のある「サザンバレー」のような土地の方がブドウにも個性が強く出てくるため、そうしたエリアの小規模生産者にも注目しています。

今回オススメした「ノヴム」をはじめ、今は行くたびにピノ・ノワールとシャルドネの品質向上が目覚ましいと感じます。個人的には、この2品種のクオリティがもっと世界に認められ、さらにたくさんの人に飲んでもらえたら嬉しいですね。

【取材後記】
「最初は本当にニュージーランドに移住するつもりで、本気でそうしようと思っていたんです。けれど、自分の役割はニュージーランドの素晴らしいワインを日本に持ってきて、たくさんの人に知ってもらう仕事だと気づいて。だから、せめて日本国内でニュージーランドの雰囲気に似た土地を探して引っ越しました」と笑う檀原さん。

ワインの魅力だけでなく、ニュージーランドという国自体への愛がたっぷりと伝わってくるお話をありがとうございました! いつか、檀原さんオススメの場所を訪れてみたくなりました。

お話を聞いたのは●檀原正弘さん

だんばら・まさひろ/株式会社サザンクロス 代表取締役/CEO。長野県長野市出身。新潟大学理学部卒業。2010年12月ニュージーランドワイン専門のインポーター「サザンクロス」設立。サザンクロスのワインは同社オンラインショップでも購入可。

Southern Cross Wine Club(サザンクロスワインクラブ)
https://www.scwines.com/

聞き手●綿引まゆみ(ワインジャーナリスト) 写真●花井智子

  • 本記事の内容は2026年7月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

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