ドイツワインの多様性にハマった、或るバイヤーの話

嬉しい日には、普段よりも素敵なワインで乾杯しませんか? ストーリーのあるワインは、特別な一日を演出します。今回は、ドイツワインを輸入販売するヴァインベルクの宮城純さんのエピソードをご紹介します。

目次

ドイツワインを輸入するきっかけは?

ヴァインベルク代表の宮城純さん。東京都出身。昭和音楽大学作曲学科卒業。在学中にヨーロッパ訪問。卒業後、作曲をしながらベルギービールレストランやビストロなどの飲食店でアルバイトを経験。複数回の渡欧でドイツワインの産地をまわりながら醸造所訪問をしたりしていることがきっかけとなり、ドイツワインを輸入販売する「ヴァインベルク」を2013年に設立。

学生時代にバックパックでヨーロッパ8カ国を回り、その後も海外に出かけるうちに、ドイツのワインとベルギーのビールに惹かれるようになりました。ドイツでワイン生産者に会うことでさらに好きになり、「ドイツワインを日本に広めたい!」という気持ちが膨らんできました。そこで2013年にヴァインベルクを立ち上げ、ドイツワインの輸入販売を始めました。

日本では、ドイツワインは甘い、というイメージが昔からありました。それは2000年代に入ってからもあり、今も日本に入っているドイツワインは甘口が中心です。辛口は増えてきましたが、まだ一部という状況です。

ドイツではさまざまなタイプやスタイルのワインが造られています。ドイツワインの多様性をぜひ知ってほしいという思いで輸入販売しています。

輸入するワインはどのように選んでいますか?

スタート当時は3生産者でしたが、今では11生産者、約160アイテムを輸入しています。試飲会で選んだり、紹介してもらったりが多いですが、ガイドブックから選ぶこともあります。必ず飲み、飲んだ時にグッと来るもの、頭からではなくスーッと自然に入ってくるもの、やっぱりいいなと思ったものを選んでいます。

輸入する前には醸造所に行き、必ず生産者の話を聞きます。造り方や生産者の思いにシンパシーを感じるのが大事で、相手もだんだんと僕のことを気に入ってくれるのがわかります。やっていくうちに、彼らの思いを日本の消費者に伝えることが自分の仕事、と思うようになりました。

ドイツワインの魅力は?

たとえば、「Trockenトロッケン」は辛口の意味ですが、辛口といっても幅が広く、酸味も含めての残糖があり、「辛口」とひとことで言えないのがドイツワインの特徴で、魅力でもあります。トロッケンはドイツ国内で市場が大きく、フルーティーな果実味、低いアルコール、カジュアルで飲みやすい点が受けています。

ブドウ品種も幅広く、ドイツを代表するリースリング、ヴァイスブルグンダー(ピノ・ブラン)、グラウブルグンダー(ピノ・グリ)、国際品種のソーヴィニヨン・ブランやシャルドネなど、果実味のあるタイプのワインは多種多様あり、色々な人にあてはまるワインがあり、好みに応えられます。中高価格帯ワインでは樽を使用したものなどがあるのも魅力です。

赤ワインに関しては、冷涼なドイツも温暖化の影響を受け、果実味豊かでしっかりした味わいのものが造られるようになりました。ドイツの赤ワインを代表するシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)も、高い品質のワインがどんどん出てきています。

ドイツワインのトレンド状況は?

ドイツでのブドウ栽培比率は白6割・黒4割で、黒ブドウの中ではロゼワインの比率が伸びています。白ワインは元から多いですが、世界的なヘルシー志向、低アルコール志向を受け、ライトでヘルシーなドイツワインが国内外で脚光を浴びています。トロッケンのアルコール度数は11~13%くらいです。アメリカをはじめ、ヨーロッパ各国、特に北欧からの需要が高いです。トロッケンは日本でも人気です。

ドイツ国内では、トロッケンのほか、ライトでカジュアルに楽しめる少し甘みのあるファインヘルプやカビネットがここ2~3年くらい人気です。若い世代がカビネットを「カビ♡」と呼び、SNSなどで話題になっています。

ドイツワインの用語はわかりにくいと言われますが?

トロッケン、ファインヘルプ、カビネットなど、独自の用語があり、わかりにくいかもしれません。だからこそ、輸入元が発信する日本語での情報やコメントが大事だと思っています。辛口でもタイトなものからやわらかなものまでありますから、ていねいに説明することでイメージが広がり、消費者に伝わると思っています。

秋の夜長に飲みたい、おすすめの3本を教えてください

(左)ヘレンベルク リースリング ファインヘルプ 2023 ファルケンシュタイン(5,280円)
(中)ムッシェルカルク ジルヴァーナー 2023 ビッケルシュトゥンプ(4,620円)
(右)マイショス ピノ・ノワール 2020 マーク・ヨーステン(5,720円)
※すべて税込価格

ヘレンベルク リースリング ファインヘルプ 2023 ファルケンシュタイン

モーゼル・ザール・ルーバー地方ザール地区の生産者。自根のリースリング100%で造られたファインヘルプ(中甘口)。冷涼なザールならではの酸と果実味が融合したワインで、ワイン自体を楽しむもよし。リラックスしたい時におすすめです。料理となら、オリーブオイルをかけたイタリア風のサラダ、カルパッチョなどに合うと思います。

ドイツワインガイドで五つ星を獲得、生産本数も少ないため、今では入手困難となった「ファルケンシュタイン」(Hofgut Falkenstain)のヨハネス・ヴェーヴァーさん。ヴァインベルク設立当時から輸入している3ワイナリーのひとつ。宮城さんのおかげで日本で飲めます。

ムッシェルカルク ジルヴァーナー 2023 ビッケルシュトゥンプ

フランケン地方の代表品種シルヴァーナー100%。リースリングよりも酸味が強くない品種です。ふくよかさがあり、しっかりした味わいがある白ワインです。和食に合わせやすく、天ぷら、白身魚の焼き魚や刺身、うまみのある料理におすすめ。日本酒のように、しみこむように合わせられる白ワインです。


当主のマティアスと試飲をしていた時の様子。フランケンの中では典型的な貝殻石灰(ムッシェルカルク)、雑色砂岩と異なる土壌の畑を所有していて、ジルヴァーナーはキャラクターの異なるワインとなっています。(宮城さん談)

マイショス ピノ・ノワール 2020 マーク・ヨーステン

赤ワインの生産比率が高いアール地方のピノ・ノワール100%。繊細だけれど果実味がしっかりあり、粘板岩(シーファー)土壌ならではのうまみが感じられる赤ワインです。ポークソテー、唐揚げ、肉じゃがなどに合います。アール地方は2021年に大洪水の被害に遭いました。この生産者も大きなダメージを受けましたが、それを乗り越えて頑張っています。

当主のマーク。ミッテルラインでは白ぶどうも栽培しています。アールではピノ・マドレーヌ(フリューブルグンダー)もおすすめです。今年は来日し、日本食と彼のワインの相性の良さを体感しました。(宮城さん談)

特に注目しているブドウ品種は?

黒ブドウのレンベルガー(ブラウフレンキッシュ)です。ヴュルテンベルク地方で多く栽培され、メルロやシラーのニュアンスがあり、果実味がふくよかで、食事にも合わせやすく、軽くカジュアルなワインから樽を使ったしっかりした味わいの赤ワインまで造られます。おすすめ3本の中に入れられなかったですが、もっと知ってほしい品種です。

『Weinbergヴァインベルク』

「食事と合わせて輝くドイツワインが多い。ひとくちだけではなく、飲みすすめてわかるワインが多いので、食べて、飲んで、楽しんでもらいたい。勉強会ではなく、初めてでも、ひとりでも気軽に参加してください」と、宮城さんはドイツワインとさまざまな食事を合わせる会(生産者を迎えての会もあり)を首都圏で不定期で開催している。詳細はSNSへ。※ワインはオンライン通販で購入可能

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聞き手●綿引まゆみ(ワインジャーナリスト) 写真●花井智子

  • 本記事の内容は2025年9月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

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