創建約400年の歴史をもつ街のシンボル、富岡八幡宮

地下鉄から地上へ出ると、巨大な鳥居が目に飛びこんできた。創建は江戸時代初期の寛永4(1627)年の富岡八幡宮である。
応神天皇のほか、8柱の神様(神功皇后、仁徳天皇、天照大神、武内宿禰、日本武尊、天児屋命、竈大神、常磐社神)が祀られている格式の高い神社で、江戸三大祭のひとつ「深川八幡祭り」が毎年8月に開催される。
広い境内には17の末社が祀られており、江戸勧進相撲発祥の神社であることから「横綱力士碑」の石碑が建立されている。
また、江戸時代の測量家、伊能忠敬が深川界隈に住んでいて、測量の旅に出る際には富岡八幡宮に必ず参拝に訪れていたことから、旅姿で堂々と歩を進める銅像があることでも知られている。


さまざまな国からセレクトした民藝品に出逢える『watari』
次に向かったのは、世界のさまざまな布や新旧の手仕事を加えた品々を販売する『watari』。店主の小林紀子さんが自ら買い付けてきたものばかりだ。
店内には、一見、どこの国のものか、いつの時代のものなのかわからない民藝品が陳列する。この無国籍な感覚がおもしろい。小林さんはアパレル販売会社で勤務後、12年前に自身の店を開いた。
「流行も好きだけれど、さまざまな国の文化や風土に根ざした品々を通じて、もっと普遍的な面白さを紹介できる場を自分で作りたいと思い、店を開くことにしました。名もなき人々の手による各国の民藝品には、誰がつくったものかわからないけれど、生活の中で生まれた美しさが宿っています」
「悲しい」という気持ちをヤシの木の繊維を使って模様で織り込んだジンバブエのバスケット、ラップランドで出会ったトナカイの皮と角で造られたペンダント。フィンランド、台湾、タイ、インド……と多国籍な作品たちはそれぞれにストーリーを持っている。
「どのアイテムにも想像できないストーリーがあること自体が面白いと思いますし、それを面白がってくださる方がここに来てくれたら、私もうれしく思います」と、小林さんは語ってくれた。



蒸留酒と小料理の相性を味わう最前線『かまびす』へ

散歩の〆は、ジンや焼酎といった蒸留酒と小料理が愉しめる『かまびす』へ。東京、虎ノ門ヒルズビジネスタワー内にある『虎ノ門蒸留所』蒸留長の一場鉄平さんが営む店である。
女将のもみさんの手から繰り出される料理には、蒸留酒を食中酒として愉しむための独自の工夫が凝らしてある。発酵調味料やスパイスを巧みに使い、蒸留酒と合わせるフックにしているのだ。




女将のもみさんは、この街の印象をこう語る。
「昔から住んでいる方と、新しくこの街に来た方とがうまく共存している感じがします。飲食店同士もつながりが強く、『かまびす』は開店から2年半が経ったところですが、先輩のお店がお客様に紹介してくださったり、イベントに声をかけてくださったりとやさしいですね。これも、下町のよさだと思います」
一見、尖がったように見えるスポットも、新旧が両立してしっくりとなじんでしまう懐の深さよ。そんな大らかさは、「住みやすさ」にもつながっているに違いない。
今回紹介したスポット
『富岡八幡宮』
東京都江東区富岡 1-20-3
TEL:03-3642-1315
営業時間:24時間参拝可能(神札・御朱印授与、社務全般:9時~17時、ご祈祷受付時間:9時~16時30分、土曜・日曜・祝日9時~16時30分)
http://www.tomiokahachimangu.or.jp/
『watari』
東京都江東区牡丹3-7-4
TEL:03-5809-9586
営業時間:12時~19時
休:火曜
『かまびす』
東京都江東区深川1-8-12
TEL:070-8957-5794
営業時間:17時~21時30分(L.O.)
休:月曜、日曜
取材・文●沼 由美子 撮影●オカダ タカオ(2024年10月掲載)
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