フルーツの糖分は菓子よりもずっと少ない
フルーツの食べすぎはよくないと思っていないだろうか? そもそも「食べすぎ」の基準は明確でない。人で実験することがほぼ不可能だからだ。そこで中野さんは「自分で人体実験をしよう」と思い立ち、フルーツを中心にした食生活を開始。15年間、健康診断結果に問題はなく、今のところは不調もない。しばしば「甘くて糖質が多いから不安だ」といった声が聞かれるが、フルーツの大半は水分。同じ量で比較したとき一般的なお菓子よりも糖分はずっと少ない(あくまで自己責任の人体実験なので、真似はしないでください)。
「国内外の研究で、フルーツは心筋梗塞、脳卒中、2型糖尿病、肥満、高血圧などの生活習慣病予防に有効であることが明らかになっています(※1)。しかし実際には、日本人の1日のフルーツ摂取量は世界平均の半分以下、先進国の中で断トツ最下位です」
国が推進する健康プロジェクト「健康日本21(第三次)」は2023年、フルーツ類の摂取目標量(ジャムを除く)を1日200gに定めた(※2)。可食部の200gは「小さめの温州みかんなら4個、イチゴなら1パック弱。普通サイズのバナナだと2本、キウイなら2個強、りんごは半分強を目安にするとよい」と中野さんは言う。
※1 厚生労働省 健康日本21(第三次)の推進のための説明資料
※2 期間は令和17年(2035)まで
食事前に摂ると血糖値上昇も緩やかに
200gと聞くとハードルが高いかもしれないが、一度に摂らなくてもよい。1日の総量として考えた上で、栄養を効率よく摂取するにはタイミングが重要だ。
「私が推奨しているのは、フルーツを食事の20~30分前に食べる『前フル』や、食事の最初に食べる『先フル』。というのも、適量のフルーツをご飯の前に摂ることで血糖値の上昇が緩やかになるからです(※3)。たとえば料理中にフルーツをつまむだけでも立派な『前フル』です。フルーツは空腹時では消化がいい一方、他の食事と混ざると腐敗・発酵がしやすいもの。そのため、食後に食べる『後フル』はあまりオススメしません。食後のフルーツはできれば2時間半ほど空けるのがオススメです」
起床後や風呂上がり、スポーツ時などの喉の渇きを癒すのにも、スイカや梨などの水分の多いフルーツが最適だという。
「フルーツには水溶性の食物繊維が含まれるので、果汁に粘り気があります。また、水やお茶は喉を素通りしてお腹に入りますが、フルーツは噛まないといけないので、数回に分けて喉を通ります。その際、粘度のある果汁が喉を覆ってくれるので、少量でも十分に喉を潤すことができます」
※3 The Journal of Nutrition Vol.143(4)430–436,2013
美肌、便秘改善、シェイプアップにも
フルーツの啓発を続けてきて、多くの体験談を聞いてきた中野さんが特に実感する効果は、「美肌」「便秘改善」「シェイプアップ」の3つ。
「フルーツの摂取量が増えると、女性の場合、肌がスベスベになった、色白になった、シワが減った、乾燥肌が改善したなど、お肌の健康を感じる方が多いです。また、私もそうでしたが、お通じが良くなる方も多くいます。便秘改善も関係あると思いますが、前フルや先フル習慣ができると、特に食べ過ぎが原因なら、お腹まわりがスッキリする方が多いです」
また中野さんは「捨てられがちな部分にこそ大切な栄養素が含まれている」と指摘する。
「捨てられやすいフルーツの皮や、果実と皮の間、芯などには、ポリフェノールなど、果肉には少ない栄養素が多く含まれます。工夫次第でおいしく食べられて、フードロスの削減になります。たとえば、スイカやメロンの外皮はきんぴらやぬか漬けにするとおいしいですよ。スイカの外皮と白い部分の間は繊維質ですが、スープの具材にすればえぐみが消えて、コリコリとした食感が楽しめるんです。メロンのワタにはストレスを軽減するGABAが多いので、種だけ包丁で除いたら、ワタごと召し上がってください」
災害の多い日本では、非常時の備蓄食材としても注目を集めている。他の食材と比べ、加熱せずに食べられることが大きな理由だ。できれば自宅や職場に腐りにくく、追熟できるようなフルーツをいくつか置いておくといいだろう。缶詰やドライフルーツは保存食として便利だが、その際には糖分に注意したい。コンビニなどで買えるスムージーやジュースは手軽だが、含まれている成分もチェックしてほしい。
「フルーツは嗜好品で高いものと思われがちですが、ビタミンや食物繊維やカロテノイドなど、現代日本人が不足しがちな栄養を多く含んでいます。加えて、色や香りなど五感に訴え、生活を彩るもの。無理をせず自分のライフスタイルに合わせて取り入れてみてください」

お話を聞いたのは●中野瑞樹さん
なかの・みずき/体を張るフルーツ研究家、一般社団法人毎日フルーツ200g推進協会代表。元東京大学教員。元アメリカ国立海洋大気局客員研究員。学生時代は沙漠緑化の研究に従事。2003年にフルーツのもつ魅力(健康と環境問題の改善)に目覚め、消費啓発活動を始める。「甘いから食べ過ぎに注意!」と言われるフルーツの体への影響を調べるため、2009年9月から実験的に、水もお茶も摂らない「フルーツ中心にほぼ果実だけの食生活」を続ける。著書に『中野瑞樹のフルーツおいしい手帳』(河出書房新社)。
https://ameblo.jp/fruit-mizuki/
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