贈り物に込めた想いをはっきりと書く
贈り物をするシチュエーションは、さまざまだ。喜ばしい出来事があって、それに対するお祝いの気持ちを示すもの、これまでの厚意への感謝を示すため、はたまたお詫びのしるしなど、その目的は多岐にわたる。
「難しいな」と感じるのは、舅(しゅうと)や姑への贈り物だ。お中元やお歳暮等の季節の挨拶、父の日・母の日、誕生日と、なにかと贈り物のやり取りをする間柄でありながら、相手のことをそこまで知らないことが多く、何を渡せばいいのか悩ましい。そうなると贈り物を喜んでくれるかどうかは、時の運。だが、できるだけ喜んでもらうように手を尽くせないものか。
こんな姿を目にしたことがある。旅先から息子夫婦がその土地ならではの高価な食材を贈った時のこと。受け取った姑が「こんな無駄遣いして」と呟いた。息子夫婦にしてみれば、以前、この食材を「一度食べてみたい」と話していたのを思い出したから贈ったのだという。
せっかくの気持ちをどう伝えればよかったのだろう。手紙文化振興協会代表理事のむらかみかずこさんに尋ねると、「贈り物には、なぜこの品を贈るのか、その理由を書いて添えるといいと思います。お祝い事での贈り物ならわかりやすいのですが、旅行先からお土産を贈るような場合は、『いつもお世話になっているお礼』とか、『(贈るものを)好きだと言っていたのを思い出し、それを旅先で見かけたので』とか、贈る理由をはっきりと書きましょう」と指南する。
確かに理由をしっかり書けば、姑も自分のことを思って贈っているのだということがわかって機嫌を良くした可能性がある。お店から品物を直接送ってもらう場合はメッセージを入れづらいが、ポストカードを送るなどして真意を伝えれば良かったのだろう。

相手の好みを知っていることをさりげなくアピール
ただし、その際の注意点として、むらかみさんは「よく日本の慣習で、『つまらないものですが』と言って渡すことがありますが、手紙の場合はへりくだりすぎのように感じられるので、私はあまり書かないようにしています。『ちょっとした気持ちなので、受け取ってください』くらいの言葉が適当でしょう」とのこと。
なるほど、せっかく贈る理由を伝えているのに「つまらないもの」と書くのは、相手を思う気持ちと整合性を欠く印象をもたれかねない。
重ねてほかに気を遣うべき点を尋ねると、「贈る側は自分をよく見せたい、という気持ちが出てしまいがち。ですが、相手に『自分のことを思ってくれたんだ』と感じてもらいたいなら、相手が音楽好きなら音符の柄のアイテムを選ぶなど、相手の好みを知っているとさりげなくアピールするのも“手”ですよ」
せっかく贈り物をするなら、大いに喜んでもらいたい。メッセージを一言添えるのは、それを後押しする有効な手段になる。

教えてくれたのは●むらかみ かずこさん
(社)手紙文化振興協会代表理事。東京女子大学卒。企業経営者の仕事に込める想いを言葉にしてまとめる小冊子の制作を手がけた後、2013年に(社)手紙文化振興協会を設立。「手紙の書き方アドバイザー®認定講座」を行い手紙の書き方講師の育成に尽力するとともに、自宅で学べる通信講座「手紙の書き方講座」「仕事で差がつく!メール・文章の書き方講座」を開発・販売。企業研修・セミナー、講演、メディアを通して、心が通じる手紙の書き方や仕事で成果につなげる文章術を広く社会に発信している。
文●柳澤 美帆 撮影●小林 久井(2024年10月掲載)
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