あまりのかわいらしさに全身に電気が走った

以前、ミニ盆栽の講座を受けたことがありました。そのときに講師の方が持ってきていた、ミニ盆栽よりもさらに小さい盆栽にとても惹かれて、後日ご自宅のお庭にお邪魔したんです。小さくてかわいらしい、だけど一鉢一鉢がしっかりと世界観をもって生きている。そんな姿に衝撃を受けたのを覚えています。この“小さな宇宙”を自分でもつくってみたいという意欲がわきました。
その後、近所にある盆栽大野さんへ行ったんですが、そこで大雪ヒナオトギリという、小さな黄色い花をつけた草に出合いました。「これ、かわいいよー」とポンっと手に乗せてもらった瞬間、あまりのかわいらしさに全身に電気が走ったような衝撃を受けました。以降、講師の方のお庭や盆栽大野さん、上野公園にある上野グリーンクラブに足繁く通いました。小さな鉢で植物を育てるようになってから約5年になりますが、今では自宅に300近くの鉢が並んでいます。
季節のめぐりに合わせて、小さな感動を運んでくれる

道端に咲いているような小さな草花はもちろんかわいいですが、それが鉢と合わさるとまた別の世界が広がるように思います。道端にあるときからは想像もつかない、思いがけない表情になる気がして。なので「鉢合わせ」は大好きな工程。この植物にはどの鉢を合わせようかと、いろいろ試行して、「あら!」という表情を引き出せたときに、とてもわくわくします。
私は以前から写真を撮ることも好きなのですが、ファインダーに切り取られた世界を見てハッとする瞬間が、鉢合わせと少し似ている気がしますね。
植物は日々表情を変えますから、観察が欠かせません。ここ数年は、毎日の小さな感動を見つけることが楽しみになりました。新芽が出たり、蕾がついたり、花が咲いたり、葉が紅葉したり……季節のめぐりに合わせて、小さな感動をたくさん運んでくれます。
毎朝30分間の水やりを日課にしていますが、とても充足感があるんです。水をやりながら、ひとつひとつの鉢と向き合い、その日一番すてきな「表情」をしている鉢を決める。「今日はこの子だ」って。そうして決めた鉢を、いろいろなアングルから眺めて、ベストな光の当たり方、一番かわいく写るアングルを見つけて写真に収めます。
気づいたら「かわいいねえ」と声をかけていることもあります。この朝の30分は、私にとってかけがえのない、癒やしの時間になっています。広くはないベランダで、毎日なにかが起こっていて、それを見つける楽しみ。小さな植物たちが教えてくれた充実感ですね。
これから始める人へのアドバイス

鉢が小さいので、何よりも水やりが大切です。基本的には毎日、水やりをしています。水切れが心配な場合は、二重鉢(大きめの鉢に砂を敷き、その上に豆盆栽の鉢を少し埋めるように置く)にする方法もあります。夏は遮光ネットをかけたり、冬はビニールハウスの中に入れるなど、状況に合わせて工夫をしています。
また、水やりがあるため、長期の旅行に出かけづらくなりました。強風の日もひと苦労です。小さな鉢は自作のトレイに並べているので、風の強い日はトレイごと部屋の中へ運び込みます。大きめの鉢はベランダの端へ移動させますが、これがなかなかの重労働です。
管理が難しい植物もあります。たとえば涼しい気候を好む高山性の種類などは、暑さに弱いので日本の環境が合わないことも。そのあたりは購入する際にお店の方などに聞くといいと思います。
盆栽店などで鉢植えになったものを購入しても1,000円程度からあります。鉢も数百円からあり、オーブン陶土で手作りもできます。まずは盆栽店や盆栽に関するイベントに出かけてみてはいかがでしょうか。そこでキュンとくる出合いがあったなら、ぜひお迎えしてみてください。
初心者が育てやすいおすすめ2選
日高ミセバヤ
多肉植物で、日当たりのいいところで乾燥ぎみに育てるため水やりが比較的ラクです。四季折々で見せる姿が全く違うので、変化を楽しむのにも向いています。秋頃に鮮やかなピンクの小花を咲かせます。

ツクシカラマツ
丈夫で育てやすいと思います。春ごろにひょろりとした茎が伸びて、その先に粒のような蕾ができ、梅雨の時期に薄紅色の花火のような花が咲きます。個人的に蕾の状態が特にかわいいと思う種類です。

ayumittさんが愛でる、小さな植物たちの写真エッセイ集を3名様にプレゼント!

『ベランダで豆盆栽鉢で楽しむ ゆびのさきにかわいいみどり』
著者:ayumitt(種田あゆみ)
発行元:オレンジページ
価格:2,420円(税込)
指先でつまめるほどの鉢におさまった愛らしい植物たちをベランダで育て、SNSで公開してきたayumittさん初の写真エッセイ集。温かいまなざしでとらえられたたくさんの写真とともに、育てる過程の心の声や愛でる楽しさをふんだんに伝える1冊です。
- 写真提供:ayumitt(種田あゆみ)さん
- 本記事の内容は2025年6月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。
お話を聞いたのは●ayumitt(種田あゆみ)さん
埼玉県在住。パートタイマーの主婦として日々を過ごしながら、2020年ごろよりマンション2階のベランダで、小さな鉢で植物を育て始める。もともと写真が趣味だったこともあり、愛らしい小さな植物たちが見せる一瞬の表情に心を奪われ、思わずシャッターを切るように。誰かに見せるためというより、自分自身が癒やされ、満たされたいという気持ちで、「ちいさなかわいいみどり」の写真をInstagramに投稿している。2025年4月にこれまで撮りためた写真をまとめた写真エッセイ集『ベランダで豆盆栽鉢で楽しむ ゆびのさきにかわいいみどり』(オレンジページ)を刊行。
https://www.instagram.com/ayumitt
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