最も重要なのは「停電対策」
高荷さんによると、備蓄に対する考え方はシンプルに2つある。①「機能」を補うか、②「そのもの」を補うか。災害でインフラが途絶えた場合、最も重要となるのは電気、すなわち「停電対策」だ。
「もしガスが通っていても給湯器は使えず、マンションはポンプが止まり、水が出なくなることがあります。原則として、ライフライン確保の入り口は停電。すべての対策につながると考えていいでしょう」
①電気の「機能」を準備する
IHクッキングヒーターや給湯器を使えなければ湯沸かしができず、電気炊飯器や電子レンジを使えなければ食事の支度が大変になる。これらを動かす電気そのものを準備する前に、まずは電気以外の道具で機能を補うことを考えよう。
特に「1台あるだけで非常時の生活水準が大きく上がる」と高荷さんが語る「カセットガスコンロ+ガスボンベ」は必須だろう。最大火力で使うと、ボンベ1本で約60分燃焼可能なため、1〜2人で1日1本を準備の目安にするといい。ただし、注意点がある。
「実はコンロは10年、ボンベは7年と期限があるんです。未使用で新品状態を維持していても、ガス漏れを防ぐゴムパッキン部分が徐々に劣化するので、期限前に買い替えを。ボンベは食料と同様、ローリングストックの考え方で“使ったら補充する”を心がけましょう」
②電気「そのもの」を準備する
乾電池やモバイルバッテリー、ポータブル電源などの電気を「貯める」ものや、発電機、ソーラーパネル、給電車(ハイブリッド車またはプラグインハイブリッド車)など、電気を「作る」ものを確保しておこう。高荷さんは「以下で紹介するものを、できる範囲内で組み合わせて用意してほしい」と語る。
・乾電池
災害時の「乾電池機器三種の神器」LEDライト、携帯ラジオ、スマホ充電器と一緒に準備しておこう。ポイントはなるべく単3で統一し、スペーサー(単1、単2の機器にも対応)も買っておくといい。
・モバイルバッテリー
防災専用であれば「乾電池」タイプ、日常的に使うなら「充電」タイプを選ぶ。
・ポータブル電源
USBだけでなく「ACコンセント」が使える大容量バッテリー。容量によって種類や価格はさまざまだが、スマホの充電から家電までおおむね対応できるのはコンセント出力1500W以上。ただし「蓄電池」のため、発電機やソーラーパネルと併せて使うのがおすすめ。
・ソーラーパネル
晴れていれば燃料不要で発電し、ポータブル電源などをチャージできる。マンションならベランダに設置するモバイルソーラーでも。影がかかると発電効率が大きく低下するため、設置場所を得られるかを確認。ポータブル電源と使うなら、同じメーカーのものが◎。
・発電機
ガソリンやガスなどの燃料でチャージする機器。ガソリンの備蓄が大変なため、カセットガスボンベをセットするだけの製品は、手軽に扱えて備蓄用におすすめ。ただし騒音が大きいため、実際に使用できるかどうか確認が必要。
断水時に役立つグッズとローリングストック
断水時に備える上で知っておきたいのが、日常生活で1日に使う水の量だ。4人家族の場合、飲料用で12L、炊事や洗面、風呂、トイレなどで835L、計847Lも使っている。この量を用意するのは現実的ではない。そこで電気と同じく、2つの考え方で準備しよう。
①水の「機能」を準備する
飲料水以外は別のグッズを使って工夫。トイレは非常用の備蓄トイレ、風呂はウェットタオルやドライシャンプーで代用、炊事は皿が汚れないようラップを巻いたり、紙皿を使えば水を使わずにすむ。
「優先して準備すべきはトイレです。断水すると当然水は流せませんし、地震などがあった場合、マンションでは断水しなくても配水管損傷の点検のため、しばらく水を使えないことがあります。食料と同じく、最低3日、できれば7日分のトイレも用意してください」
②水「そのもの」を準備する
飲料水はふだんから飲んでいるものが常に自宅にある状態にする「ローリングストック」が安心だ。ペットボトルのほか、ウォーターサーバー用ボトル、野菜ジュースやお茶、炭酸水など、自分にライフスタイルに合わせて準備しよう。
高荷さんイチ押し! ポータブル電源&飲料水
Anker Solix C1000 Portable Power Station with Anker Solix PS100 Portable Solar Panel

ACコンセントの定格出力が家庭のコンセントと同じ1500Wあるため、電子レンジも動かせる大容量かつコンパクトなポータブル電源。満充電まで約58分(※)という短さもうれしい。ソーラーパネルとセットで揃えたい。
※専用アプリで超急速充電モード設定時
「モバイルバッテリーに使用されるリチウムイオン電池は、100%充電で放置するとバッテリーの寿命を減らします。AnkerのSolixシリーズはリン酸鉄リチウムイオン電池を採用することでこの点を解消し、普段からコンセントに挿しっぱなし、100%満充電で保管してもよい製品です。防災を主目的に購入する場合にオススメの機種です」
価格:169,900円(税込)
https://www.ankerjapan.com/products/b17615z2
The Next Dekade 10年保存水

99.9%不純物を除いた長期保存可能な飲料水。硬度ゼロで、幼児やペットのいる家庭でも安心。直射日光は避けて保管すること。
「極限状態での実験によって開発されたペットボトルで、氷点下で凍っても、80度の熱にも変形せず耐えられます。中身は硬度ゼロなので、長期保存に適した安全・安心の保存水です。冬場の気温が氷点下になりそうな場所での備蓄や、自動車に積むペットボトル水としても優れています」
価格:2L×6本入り 4,800円(税別)
https://www.nextdekade.jp/14986307826419
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お話を聞いたのは●高荷智也さん
たかに・ともや/合同会社ソナエルワークス 代表。備え・防災アドバイザー。1982年、静岡県生まれ。「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに「自分と家族が死なないための防災対策」を体系的に解説するフリーの防災専門家。大地震や感染症など自然災害への備えから、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝える活動に定評がある。講演・執筆・メディア出演も多く、防災YouTuberとしても活動している。著書に『今日から始める家庭の防災計画』『今日から始める本気の食料備蓄』(徳間書店)他多数。
https://sonaeru.jp/