住み替えのポイント

定年前に考えよう!シニア世代のコンパクトマンションへの住み替え

老後に夫婦2人で暮らしていくことを考えると、利便性の良いコンパクトなマンションへの住み替えが有効な選択肢になる。シニア世代の住み替えに詳しいファイナンシャル・プランナーの有田美津子さんに、昨今の住み替え事情や住み替え計画のポイントを聞いた。

リタイア後にマンションに住み替えるメリット

近年、50代後半から60代前半の方から、マンションへの住み替えに関する相談を受けることが多くなってきました。人生100年時代においては、リタイア後の生活も20年以上続きます。子どもが独立して、定年退職が見えてくるタイミングで、これからの生活について考える人が増えていると考えられるでしょう。

もともと一戸建てに住んでいる場合は、立地の不便さや管理の負担を感じている方は、駅近のコンパクトなマンションへの住み替えを希望される方が多い傾向にあります。マンションに住んでいても、子どもが家を出たことで、夫婦2人で暮らしやすい広さのマンションに新しく住み替えを考えるという場合もめずらしくありません。最近では、都心に比べてリーズナブルかつ、便利でゆったりと暮らすことのできる地方都市のマンションへの住み替えも増えてきています。

ライフスタイルの変化や老後の生活を考えて住み替えを検討する人が多いマンションですが、シニア世代がマンションに住み替えるメリットについて、改めて整理してみましょう。

【シニア世代がマンションに住み替えるメリット】

  • 家の中に段差が少ないので、高齢になっても安心して暮らせる。一軒家に比べて、車椅子でも生活しやすい。
  • 庭木の手入れをする必要がない。
  • 外壁の修繕など、建物自体の管理は任せることができる。
  • コンパクトなマンションであれば、掃除する範囲が少なく済む。
  • オートロックなどがついていれば、防犯面も安心。
  • 車がなくても、徒歩や公共交通機関で外出することができる。

アクセスの良い地域にあるコンパクトなマンションに住み替えることで、高齢になっても安心かつ安全に暮らせることが魅力といえるでしょう。

シニア世代は必見!マンション住み替えの注意点

しかし、一方でシニア世代が住み替えを検討する際には、以下のような点に注意が必要です。

【注意点① 住宅ローンを組めない場合がある】

定年退職後は働いて得られる収入が限られるため、住宅ローンを借りるのは難しくなります。リタイア後に自営業として働く人もいますが、起業したばかりだと住宅ローンを借りることはできません。

【注意点② 修繕積立金が上昇することもある】

分譲マンションを購入すると、毎月払うことになる修繕積立金。この金額は一定ではなく、数年おきに値上がりする可能性があります。中古マンションの場合は、大規模修繕時に追加でまとまった金額がかかることも。修繕積立金の上昇も見据えて、ゆとりを持った資金計画を立てておく必要があるでしょう。

【注意点③ もう一度住み替える可能性を考えておく】

シニア世代でマンションに住み替えた後、高齢になってから老人ホームなどに住み替えることも考えられます。その際に、「売る」「貸す」ことのできる資産価値のあるマンションであれば、老人ホームの入居金や入居後の費用にあてることができます。

「今の住まいの売却金と、貯金で一括購入できるから大丈夫」と考える方もいますが、安定した収入がなくなる中で、手元で使えるお金が少ないと生活に余裕がなくなってしまうかもしれません。高齢になると入院や介護など、思わぬ出費も考えられるので、その先の生活も見据えた資金計画が必要です。

住み替え計画は、現役で働いているうちにスタート

住み替え後により良い生活を送るためにも、まずは夫婦で将来を見据えたライフプランをしっかり練りましょう。この先どういうふうに暮らしていきたいのかを考え、その暮らしのために必要な金額を計算してみる。資産状況を整理して照らし合わせることで、自分たちの住み替えの条件が見えてくるはずです。

現役で働いているときに条件が明確になっていれば、住み替えに必要な資金を振り分けておいたり、住宅ローンを見据えて雇用契約の延長を考えたりと、余裕を持って準備を進めることができます。より希望に近い住み替えを実現するためにも、シニア世代でマンションの住み替えを検討している方は、収入も体力も安定している50代のうちから、具体的に考え始めておけるとよいでしょう。


(2023年11月21日掲載)

お話を聞いたのは●有田 美津子さん

ありた・みつこ/ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、相続診断士。銀行での住宅ローン相談や住宅販売、損保会社での実務経験と、実生活での経験を活かし、子育て世代の住宅購入や、シニア世代の住み替え相談を行う。執筆・監修に『トクする住宅ローンはこう借りる』(自由国民社)がある。
https://sumikae.fparita.com/