ヴェネチア共和国の門外不出の秘宝
ヴェネチアンガラスの伝統的技法で作られるレースガラスは、ガラスの中にレース模様を織り込んだような繊細で優雅なデザインが魅力だ。
13世紀末、ヴェネチア共和国ではその技術の流出を防ぐために、ヴェネチア沖のムラーノ島にガラス職人とその家族を閉じ込め、門外不出の秘宝として手厚い保護政策を加えたという。それほどまでに貴族を虜にした乳白色のレースガラスの美しさは、現代でも数多くの人に愛されている。
「今回のレースガラスは、人気作家の田井将博さんが持っている多くのテクニックを、新たな形で発揮していただきたいとお願いしたものです。この技法はレース棒を作るために時間がかかり、エネルギーを多く要しますから、点数がそれほど多くできません。それでも私たちとしては、お客さまに作家の新しい魅力的な作品をお見せしたいと、個展に合わせて作ってもらいました。なかでも、ひさご形の掛け花(上の写真の左から2番目)の完成度には素晴らしいものがあります。田井さんも改めてレースガラスに対する自信を深めたと確信していると思います」と、嬉し気に話すのは、『銀座日々』の根本美恵子さん。
そうした期待に応えるかのように出展されたレースガラスの評判は上々で、ゆっくり冷酒を楽しみたい片口や盃のほか、ワイングラス、小さな花器など手の届く器が揃っている。


コレクターの心をくすぐるガラスの魔力
「意外に思うかもしれませんが、ガラスに魅せられる男性は多くて、有名なエミール・ガレやルネ・ラリックのコレクターは男性がほとんど。このレースガラスも実は女性よりも男性のファンがとても多いんです」
確かにレースガラスには言いようのない魅力がある。ひとつとして同じ模様がない希少性もコレクターとしてはたまらない魅力だろう。実際、ぼんやりと模様を眺めているだけで日常茶飯事から解き放たれ、いつのまにか心が鎮まるような気がする。何世紀もの間、人々が心を奪われたレースガラスには不思議な魔力が宿っているかのようだ。
レースガラスだけでなく、泡ガラス、江戸切子など、実用性も兼ね備えたガラスの器はコレクション・アイテムとしてもうってつけ。片口、盃、豆皿、ワイングラス、コーヒカップなど用途別にねらいを定めて集めるのも面白い。それらは、きっとライフスタイルを彩る必須アイテムとなってくれることだろう。

お話を聞いたのは●根本 美恵子さん
ねもと・みえこ/東京出身。ギャラリー勤務を経て、2004年エポカザショップ銀座『日々』のスタートともにコーディネーターを勤める。2017年同店閉店後、2018年に今岡美樹さんと場所を新たに『銀座日々』として再スタートした。

『銀座日々』
東京都中央区銀座6-6-1 銀座凮月堂ビル3階
TEL:03-3571-0520
営業時間:11時~18時(作品展最終日は〜17時)
休:木曜
https://ginza-nichinichi.co.jp/
取材・文●瀬川 慧 撮影●宮濱祐美子(2024年8月掲載)
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