理想の住まいの選び方

身軽で、心地いい。はじめてのマイホームに「コンパクトマンション」を選ぶということ

不動産価格の高騰が続くなか、最初のマイホームとして「コンパクトマンション」を選ぶ人が増えている。かつての「独身者向け」というイメージは一新され、資産価値の落ちにくさや利便性を重視する賢い選択として定着している。住宅評論家の櫻井幸雄さんが、職住近接を叶えつつ、将来の売却や賃貸も視野に入れた、令和の住宅戦略の最前線に迫る。

目次

アクセスがいい場所で、心地よく暮らす

コンパクトマンションの最も大きな利点は、いうまでもなく価格が抑えられるということ。部屋数が少ない分、新築分譲マンション価格がファミリータイプより安くなる。つまり、コンパクトマンションは多くの人にとって、買いやすいマンション住戸となる。

が、単純に「安い」だけが取り柄ではない。

コンパクトマンションは、都心や郊外駅近など「便利な場所」に出現しやすい。便利な場所は新築分譲マンションの価格が高くなる。東京23区内で3LDKを買おうとすると、今は1億円を大きく超えるし、JR山手線の内側を中心にした都心部であれば、さらに高額だ。しかし、コンパクトマンションならば検討できる価格水準になるし、ワンルームなら無理せずに購入できそう……コンパクトマンションでマイホームの選択肢が広がるわけだ。

つまり、「便利な立地で人気の高いマンションが購入しやすくなる」――それが、現代におけるコンパクトマンションならではの利点だ。

「早く家に帰れる」という贅沢

今、多くの人が住みたいと考えるのは、「便利な場所」だ。

首都圏でいえば、JR山手線の内側を中心にした都心部、大阪ならば、地下鉄御堂筋線の沿線、名古屋であれば名駅周辺から栄にかけてだろう。中心部から離れても、駅から徒歩5分以内の場所であれば、「住みたい」と憧れる人が多くなる。

今は、住まいの立地選びにおいて、以前より「便利さ」が重視されるようになっている。理由は、単身世帯が増えたこと、そして夫婦共働きが当たり前になったことだと考えられる。

単身者は家でしたいこと、やるべきことが多いので、なるべく早く家に帰りたい。夫婦共働きも同様である。子どもが生まれても共働きを続ける世帯が増え、その場合はなおさら早く帰宅したい。

つまり、通勤に費やす時間をなるべく短くし、その分、自分時間や家事、育児を充実させようと考える人が増えたわけだ。マイホーム選びで「タイパ」がより重視されるようになった、といってもよい。

賃貸住宅で都心の狭小物件の人気が高まっているのも、その表れだろう。通勤、通学に余計な時間・体力を削られるくらいなら、極限まで狭くても職場や学校に近い住まいが好ましい……そう考える人が目立ってきた。

2020年にコロナ禍が生じたとき、リモートワークやリモート授業が一時的に増えた。それらが定着すれば、郊外の駅から離れた場所で広い住まいを選ぶのも悪くなかった。しかし、実際には通勤・通学で電車に乗る日常が戻ってしまった。そうなると、都心や郊外駅近など、便利な場所で暮らしたいと考える人が増える。だから、コロナ禍以降、都心マンションの価格が高騰したとも考えられる。

小さくても妥協しない。進化する住まいの工夫

便利な場所のコンパクトマンションが人気を高めるのに合わせ、そのつくりも進化している。

各住戸が限られた面積であるため、居住者全員で使える広めのワークスペースを設けたり、天気がよい日は屋上でパソコン作業ができるようにした(コンセントやWi-Fiを設置)事例もある。

1人暮らし、夫婦共働きが多いことから、宅配ロッカーを多くしたり、セキュリティ態勢をより高度化するマンションもある。不審者の侵入は徹底的に排除する一方で、留守中に室内清掃や観葉植物のメンテナンスを行うスタッフは入りやすくする。これから増えてゆくだろう新世代のサービスに対応する工夫も採用され始めているのだ。

間取りにも先進の工夫がある。

ワンルームといっても従来より広くし、ベッドのほかに2人掛けのダイニングテーブルと小さめのソファを置けるようにした間取りも実際に生まれている。料理を楽しむため、システムキッチンはほぼフルサイズとし、靴や服の収納スペースはたっぷりと設置。バスタブは小さめだが、横からもお湯が噴霧されるボディシャワーを設けたコンパクトマンションもある。1人暮らしだと、シャワーだけで済ませる人が多いことから採用された設備だ。

※写真はイメージです。

将来の暮らしも支えてくれる

以上のように工夫を凝らし、都心部や郊外駅近など「便利な場所」に設けられるコンパクトマンションならば、「住んでみたい」と憧れる人が絶えないだろう。それは、利用価値が高いために、資産性も維持されることを意味する。

わかりやすくいえば、将来、中古で売却したいときも、賃貸に出して家賃収入を得ようとするときも有利に展開することが期待できるわけだ。その結果、将来、仕事をリタイアしたら賃貸に出し、その家賃収入を老後の生活資金にすることもしやすい。

実家を譲り受ければ、余裕のあるリタイア生活が実現するし、家賃と物価が安い郊外、もしくは地方都市で広めの家を借りて暮らす展開も考えられる。便利な場所のコンパクトマンションならば、決して「お荷物」にはならず、生活を支えてくれる礎になるわけだ。

都心部ではインフレに伴い、賃貸の家賃上昇が問題化している。その家賃を払い続けるよりも、コンパクトマンション購入に踏み切り、いずれは家賃を受け取る側になる……それは、悪くない選択と考えられるのである。

  • 本記事の内容は2026年6月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

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