壁を取り払い、可変性を高めた間取り
近年の住宅価格の高騰によって、住宅選びの考え方は「より遠く」「より古く」「より狭く」へとシフトしています。都心の職場から離れた郊外や、中古住宅を選ぶということです。
「より狭く」に関しては、例えば夫婦と子どもの3人家族で住むにあたり、当初は70平米の3LDKの購入を考えていたとします。しかし、現実として価格が高すぎて手が届かないため、55平米の2LDKを工夫して使いこなすという選択をするケースが増えています。
このときに出てくるのが「0LDK」という選択肢です。多くの住宅ではリビングやダイニング、キッチン、寝室などが壁で仕切られ、それぞれの部屋に役割が固定されていますが、その壁を取り払って可変性の高い住宅にする手法です。広めのワンルームのようなイメージですね。
家具やパーテーションで緩やかに空間を区切り、必要に応じて区切り方を変えられるため、「スぺパ(スペースパフォーマンス/空間効率)」を最大化する方法といえます。
壁を取り払って廊下がなくなると、居住スペースとして活用できる空間が広くなるメリットもあります。回遊性を高めるという意味でも、壁がないほうが暮らしやすい側面もあるはずです。実際に購入した住宅の壁を取り払い、家族の暮らしにマッチする形で「0LDK」にリノベーションする方も増えています。
間取りを変えられる新築マンションも
最近は、あらかじめ可変性を意識した造りの新築マンションも登場しています。
パーテーションを移動させて空間を仕切ることができたり、作り付けの棚の下にキャスターが付いていて自由に動かせたりするなど、住む人の好みや状況に応じて間取りを変えられるようになっています。
例えば、友人が泊まりに来た際には、普段は広いリビングとして使っている空間をパーテーションで仕切り、寝室と客間に分けるといった使い方ができるのです。
すべての壁を取り払う「0LDK」には、抵抗を感じる人もいるかもしれません。しかし、まず、可変性の高い住宅で「0LDK」的な発想を取り入れてみることで、部屋の機能を限定する固定観念がなくなり、住まいに対する考え方が変わるでしょう。
ちゃぶ台で食事していた部屋に布団を敷いて寝る――といった、かつての日本の住宅のような柔軟な発想が、今の住宅には求められているのだといえます。
0LDKが向いている世帯、向いてない世帯
「0LDK」や可変性の高い住宅は、空間効率や回遊性が上がる一方で、プライバシーが完全なかたちでは守られにくい環境でもあります。
単身者や夫婦2人の世帯であれば、部屋の役割を細かく分ける必要がないと感じる人もいるでしょう。そのため、「0LDK」にして、生活動線に合わせたざっくりとしたゾーニング(区分け)でも問題ないといえます。
一方、子どもがいる家庭では慎重な検討が必要です。「0LDK」では良くも悪くも互いに干渉し合うことになるため、親と子が歩み寄れるかどうかが重要な判断基準になります。
パーテーションなどで仕切れるとはいえ、電話の声が漏れたり、着替えが見えたりすることもあるでしょう。特に子どもが「プライベートを見られたくない」と感じる年頃であれば、無理に壁のない家にするのはおすすめできません。
逆に、家族仲が良く、互いの視線は気にならない家庭で「0LDK」を取り入れたところ、コミュニケーションの機会が増え、家族の絆がより深まったというケースもあります。
大切なのは、一緒に住む家族の意見をきちんと反映することです。「スぺパ」を重視して「0LDK」にすれば、必ず楽しく暮らせるというわけではありません。それぞれの価値観を尊重し合い、家族全員にとって住みやすい間取りや仕様を考えてみましょう。
- 本記事の内容は2026年3月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。
お話を聞いたのは●中山登志朗さん
なかやま・としあき/LIFULL HOME’S総研 副所長兼チーフアナリスト。出版社を経て、1998年よりシンクタンクにて不動産・住宅セクターの分析を担当。2014年にHOME’S総研(現・LIFULL HOME’S総研)副所長に就任。不動産市況分析の専門家として、メディアへ出演、寄稿を行うほか、年間多くの不動産市況セミナーで講演する。
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