データが示す「平屋人気」にあるもの
「平屋」の注目度が高まっている。国土交通省の調査では新築一戸建てのなかで平屋の比率がじわじわ上昇。マスコミの記事でも「平屋」が取り上げられることが増えている。
平屋ならば、階段の上り下りが不要になり、バリアフリーの生活が実現しやすい。その利点から、夫婦2人暮らしになった高齢者のなかには生活しやすく、建設費が抑えられるコンパクトな平屋に関心を示す人もいる。しかし、よいことばかりなのだろうか。憧れだけでは手を出せない「平屋」の実情と、それでも「平屋」が向くと考えられる状況を解説したい。
たしかに国土交通省が発表している「建築着工統計調査」によると、一戸建て住宅で平屋の比率が高まっている。2012年に新設の居住専用住宅は44万8,235戸で、そのうち平屋は3万604戸だった。10パーセントに満たなかったわけだ。そこから徐々に平屋の比率が高まり、2019年に居住専用住宅が46万戸近く建てられたうち平屋は4万8,000戸強。平屋の比率が10パーセント台に乗った。そして、2022年には13パーセントを超えるなど増加を続けている。
このデータから「平屋の人気が高まっている」とされるのだが、「平屋」が新築されているエリアには偏りがある。リクルートが2023年8月に「SUUMOジャーナル」の調査として発表した「都道府県別平屋率ランキング調査」によると、全国で平屋比率が高かったのは宮崎県や鹿児島県、沖縄県など地方の県だった。逆に、最も平屋が少ないのは東京都で、次に少ないのが神奈川県、そして大阪府、京都府、埼玉県と続く。
つまり、土地の値段が高い大都市部では平屋が少なく、土地価格が抑えられている地方において、平屋が多く建設されていることが分かった。これは当然だろう。平屋を建設するには広い土地が必要で、土地代が高い大都市周辺では平屋をつくりにくいからだ。
2LDKで暮らす場合、土地はどれくらい必要か
たとえば、床面積70㎡程度の平屋を建てるとしよう。マンションなら3LDKが収まる面積だが、ゆったりつくられる一戸建ての場合、3LDKはむずかしく、2LDKの間取りが現実的だ。寝室が2つの2LDKでもシニア2人暮らしや親子3人暮らしなら十分といえる。ところが、その家を建設するための土地面積は想像される以上に広い。
大都市圏で一戸建て中心の住宅地は建ぺい率50%、容積率100%というところが多い。建ぺい率とは、その土地に対し、建物を建設できる広さを定めたもの。建ぺい率50%なら、土地面積の半分を使って家を建設できることになる。
すると、建ぺい率50%の土地に床面積70㎡の平屋を建てようとすると、必要な土地面積は140㎡以上となる。現在、建売住宅の平均的な土地面積は85㎡から100㎡で、その土地に総2階建ての建物を建設することで延べ床面積80㎡から100㎡の住まいが実現する。それよりも狭い「床面積70㎡程度のコンパクトな平屋」を建てようとすると、一般的な建売住宅より1.5倍近く広い土地が必要になるわけだ。これでは、「平屋」建築に二の足を踏む人が多くなるのは当然だろう。コスパを考えたら、平屋より2階建てのほうが合理的となる。
「平屋暮らしをなるべく抑えた予算で手に入れたい」と考えたら、土地が安く手に入る場所を探すしかない。首都圏においては都心から離れた郊外部で、さらに奥に入った場所……たとえば、千葉県の房総半島や静岡県の伊豆半島で、駅から歩いて20分以上といった立地だ。
別荘地として適したリゾートエリアとなるのだが、そのような場所は、建ぺい率と容積率の設定がさらに低く、建ぺい率30%で容積率50%とか、建ぺい率40%で容積率60%というケースが珍しくない。その場合、床面積70㎡程度の平屋を建てようとしても、200㎡以上の土地が必要になる。床面積100㎡を超える平屋を建てたいなら、探す土地は300㎡以上……なので、土地代が大きく抑えられたリゾート地や地方都市でなければ平屋は建設しにくい。それが現実というわけだ。
都会を離れて愉しむ、寛ぎのセカンドライフ
結局、首都圏において、都心への通勤や子どもの通学を考えれば、平屋の暮らしをあきらめざるを得ない。一方で、リゾート地や地方都市にセカンドハウスを得て、週末などにスローライフを楽しみたいというときは、「平屋」は好ましい住居形態となる。
まず、土地選びでそんなに苦労しなくて済む。300㎡以上の土地が多く、1000㎡、2000㎡といった特大の土地を探すこともできるし、土地代は抑えられている。人口減少が進んでいる場所ならば、驚くほど安いこともある。
広い土地が手に入れば、平屋と思い切り広く、天井の高いリビングを実現することも可能。注文住宅で思い描いていた夢を形にすることができる。というか、都会の喧騒から離れた場所でセカンドライフを楽しみたいと考えるときのニーズに平屋がぴったりマッチするわけだ。
ほどよい距離感を保つ、「2世帯近居」という選択
平屋がニーズにマッチするケースがもうひとつある。それは、「広い敷地の家で、庭にもう1棟家を建てたい」と考えるときだ。
たとえば、親世帯が広い敷地の一戸建てに住み、敷地内にもう1棟家を新築して子世帯が暮らし始める……「2世帯同居」ではなく、「2世帯近居」を実現するケースだ。それなら2世帯でストレスをためることが少ない上に、近くにいる便利さも享受できる。2世帯にとって理想的とされる「スープの冷めない距離」で暮らすことができる。
そのような2世帯近居を行うために家を新築する場合、コンパクトな平屋はいろいろな意味で好都合だ。まず、2階建てを新築するより建設費が安い。そして、ワンフロアで生活できるので、シニア夫婦にとって生活しやすい家になる。とはいえ、新築された平屋は親世帯のためのもの、というわけではない。ピカピカの新築なので、まずは子世帯が暮らす、というケースがあるだろう。
子世帯が3人家族なら、コンパクトな平屋で不自由はない。いずれ、もう1人子どもが生まれたり、子どもが大きくなったりしたら住む家をチェンジする。親世帯がコンパクトな平屋に移り、子世帯が2階建ての広い母屋に移る。そのような暮らし方をすると、平屋が有効に活用できる。平屋には、そんな活用法もあるわけだ。
- 本記事の内容は2026年11月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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