一戸建ての人気が高まる背景
首都圏で高額の建売住宅が注目を集め出したのは2022年頃から。東京23区内でも外周部に位置する世田谷区や杉並区、大田区といった住宅エリアで、2億円を超えるような高額建売住宅が発売され、想像以上の人気で短期完売したのがきっかけだ。
その背景には都心マンションの価格上昇があった。
JR山手線の内側に位置する都心部ではマンション価格が上昇し、ファミリー向け3LDKを購入しようと考えると、1億円では足りず、1億5,000万円とか2億円の予算が必要となる。その金額でも、60㎡程度の少々窮屈な間取りになってしまう。もちろん、マンションならば便利な場所に立地し、機能性も高いという長所がある。しかし、住まいにゆとりを求める人たちには不満が生じる状況となった。
そこで一戸建てに関心を示す人が増えたのだが、23区内で土地を新たに入手し、注文住宅を建てるとなると、マンションより高い予算が必要になる。そこで、土地と建物をセットにした建売住宅、そのなかでも建物にお金をかけた高額建売住宅がまず注目されるようになったわけだ。
建売住宅ならば、土地が手に入る。だから、将来、自分もしくは子どもが建て替えを行うときは、今度こそ注文住宅を建設できる。住宅すごろくの「上がり」として注文住宅を見据えることができる点も、高額建売住宅が人気を高める背景にあると考えられる。
そもそも注文住宅とは?
注文住宅は、建売住宅の対極に位置するものだ。
建売住宅は土地とセットで販売され、買い手が決まる前に設計図面ができている。建設を始めてから、もしくは建物ができあがってから土地とともに販売される。
購入者が決まる前に建設されるため、購入者の希望を採用することは難しい。そして、土地とセットで販売されるため、建物にかけるお金は制限される。限られた予算内で必要にして十分な素材や設備の建物をつくることになり、多くの人に受け入れられる無難なデザインや間取りで、コストパフォーマンスのよい商品を目指すことになる。
そのため、建売住宅の建物は、よくいえば平均的、ズバリいえば個性を感じないものになりがちだ。
それに対し、注文住宅はすでに土地を持っている人や土地を取得予定の人が建設を依頼し、「建てる人の意向ありき」で設計される。施主の思い通りの建物をつくる。それが注文住宅の本筋で、「わが家をつくる」喜びや楽しさを満喫させることとなる。
といっても、建築の知識がない人にとって、家の設計は難しい部分が多い。こうしたい、ああしたいという希望はあっても、現実に住みやすい家としてまとめることはできないだろう。実際、希望を強く押し通した結果、不都合の多い家になってしまったという声は多い。
そこで注文住宅では、施主の希望を聞きながら、建築士が住みやすさを考慮して図面を完成させてくれる。この「話し合ってまとめてゆく」過程や、キッチン、浴室などの設備選びが注文住宅づくりの醍醐味といってよいだろう。
注文住宅の「注文」は楽しい
注文住宅は、つくること自体が楽しい。それが大きな魅力となる。
だからこそ、「住宅展示場」という場所が昭和の時代からずっと全国各地に存在し続けている、と私は考えている。
かつては、東京都心の渋谷駅近くや横浜駅近くにもスケールの大きな住宅展示場があった。それどころか、表参道に近い渋谷区神宮前にはつい最近まで住宅展示場があった。さすがに、今はビルやマンションに変わってしまったが、それだけ、注文住宅の楽しさを求める人が多い証拠といえるだろう。
ちなみに、現在の注文住宅はフルオーダー形式のほか、基本となる設計が決まっており、そこにアレンジを加えるセミオーダー形式もある。さらに、もっと上を目指す人のために、ハイエンドのオーダーにも対応してくれる。どれがよいかは、内容を聞いて選ぶことができるようになっている。
いずれのオーダーでも建物の質は高い。それも注文住宅の特性となる。
災害に強く、建物が長持ちする
注文住宅は建物の質も高い。注文住宅を手がけるハウスメーカーや工務店は、それぞれ独自の工夫で耐久性や耐震性を高めている。災害に強く、長持ちする建物を競ってつくりあげているのだ。
雨風にさらされ、夏は強い日差しを浴びる家は、屋根や外壁が傷みやすい。そのメンテナンスを定期的に行うのは、一戸建てに住む人にとって大きな負担となる。そこで、現在の注文住宅は屋根と外壁の素材を研究し、メンテナンスフリーを目指している。その分、高価な建材を使用することになるのだが、「高くても丈夫で長持ちする」点も建売住宅との大きな相違点となる。
注文住宅ならば、長く住み続けることができるわけだ。
その上で、全館空調システムなど、ワンランク上の設備を網羅し、間取り変更の自由度を高めている。長持ちする分、住み続ける間に家族構成が変わり、暮らし方に変化が生じることもあるだろう。その際、部屋数を減らす、増やす、浴室の場所を変えるなどの変更がしやすくなっているのだ。
建売住宅と注文住宅の相違点は、想像される以上に多い。
「資産価値」の基準では測れない魅力
近年、分譲マンションは「資産価値の高さ」を重視して購入を検討する人が増えている。将来高く売れることを判断基準にしているわけだ。この「資産価値」を物差しにすると、注文住宅は理屈に合わない買い物となってしまう。建物の評価によって将来、大きく値上がりすることは考えにくいからだ。
しかし、注文住宅の購入者は気にしない。それは、資産価値の上昇を期待して購入を決めるわけではないからだ。
では、注文住宅の購入者は何を期待しているのか。それは住み心地のよさや家族のくつろぎ……つまり、居住満足度の高さだ。
「注文住宅は、つくることを楽しむことができる」し、「住み始めてからのうれしさも一入(ひとしお)」だ。断熱性や遮音性の高さで快適さが生まれるし、生活動線が自分たちに合っていることや、子どもたちが巣立ったらこうしたいというような夢も広がる。建ててよかったと思えて、満足感が長く続く……それこそが、注文住宅の真価といえるだろう。
- 本記事の内容は2026年10月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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