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身に着けて楽しみながら資産を増やす! 憧れの「腕時計投資」の始め方

比較的少ない資金で始めることができ、しかもリスクが少ない投資……それが腕時計投資だ。憧れの高級腕時計を身につけて楽しんだ後に、買った値段より高く売って利益を得ることもできる。腕時計投資家の斉藤由貴生さんに、初心者が失敗しないポイントを聞いた。

20~30年後でも価値が残りやすい!

「ロレックスなど数十万円もする高級腕時計は、『人生の節目に自分に贈る特別なプレゼント』とか『お金持ちが持つもの』と思っている人が多いと思います。しかし、高級腕時計の価格は変動しているため、『買った時よりも高い値段で売る』ことができるのです」

こう語るのは、日本初の腕時計投資家である斉藤由貴生さん。そもそも、なぜ腕時計に投資に値する価値があるのだろうか。

「第一に、『資産価値が下がりにくい』という点が挙げられます。投資の対象となる高級腕時計は、そのほとんどが機械式腕時計です。職人の高い技術によってつくられるため、生産本数は限られています。そのため、20年、30年の時間を経ても価値が残りやすいのです。30万円で買った時計は、使用した後でも価格がゼロになることはなく、たとえ下がったとしても半額の15万円程度に抑えられます。第二は、値上がり率が高いこと。もちろん、価格は需要と供給の関係で決まりますから、どんな腕時計でも値上がりするわけではありませんが、人気のモデルは大きな値上がりが期待できます。実際に私が2018年に90万円で購入したモデル『オーデマピゲ ロイヤルオーク 4100ST』は、2021年には260万円まで値上がりしています」

初心者が最初に買うべき1本は?

腕時計投資を失敗しないポイントは何か。斉藤さんは「まずは中古品を買うべき」と断言する。

「腕時計の価格には、正規代理店における『定価』、並行輸入ショップにおける『並行新品価格』、そして『中古価格』の3つの価格が存在します。中古品を購入することに抵抗がある人もいると思いますが、並行新品価格と中古価格では価格差があります。投資の基本は『安く買って高く売る』こと。新品を買って相場が上がったときに高く売り抜けるという方法もありますが、中古を購入した方が利益率が大きくなるだけでなく、相場が下がったときのリスクヘッジにもなるのです」

購入する商品の情報はどこでチェックすればいいのか。斉藤さんによれば、情報源は3つあるという。

 

「インターネット、腕時計専門誌の売り出し情報、ショップの店頭価格です。さらにネットは『ヤフオク』『楽天市場』『並行輸入ショップの自社サイト』の3つに分類できます。気になる商品を見つけたら、ネットの相場情報などを参考に過去の値動きを確認します。腕時計の知識がない人が最初の1本を選ぶなら、“王道”といわれるロレックスを購入して、まずは『時計を楽しむ』ところから始めるのがいいでしょう。ロレックスは着け心地や実用性という面でも弱点がなく、資産価値も下がりにくいからです。時計の楽しさを味わいながら相場の動きをチェックしていると、トレンドの変化が肌で感じられ、腕時計投資の魅力がよりリアルに体感できると思います」

いざ買うとなったら、どこで買うべきか。

「私自身はネットでの売買が基本ですが、特に初心者の方は店頭での購入をおすすめします。中古品に触れたことがない場合、『実物を見ずに買う』ということは抵抗感が大きいかもしれません。店舗では、重さや着け心地など、ネットの画面からは伝わってこない情報が得られます。初めての中古品は店頭で購入した方が納得感を得られるはずです」

高級腕時計の王道「ロレックス」。身に着けて楽しみながら相場の動きをチェックしよう。

売るタイミングの見極めは?

 斉藤さんが腕時計投資の魅力に気づいたのは、中学3年生の頃。「パテックフィリップ アクアノート」を62万円で購入し、5年後に128万円で売ることに成功したことが始まりだった。以来、およそ20年間で50本ほどの時計を購入し、700万円以上の利益を上げてきたという。50本という数は、中学生時代から腕時計投資を行ってきた人にしては、少ないようにも感じるが……。

「時計コレクションをしていても、『売る時計』と『売らない時計』という区別があって、現在も10年以上所有している時計がいくつかあります。やはり愛着のある時計は、毎日身につけたり眺めたりして楽しみたい。売るタイミングの見極めは、もちろん相場の動きもありますが、『買ったときに比べてワクワク感を感じられなくなったとき』と言えるかもしれません(笑)」

憧れの腕時計を身に着けて生活できる充足感を得られる。それが、時計好きの人にとってなによりの魅力だ。

お話を聞いたのは●斉藤由貴生さん

さいとう・ゆきお/1986年、東京都生まれ。日本初の腕時計投資家として、『腕時計投資新聞』で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を請け負い収入にする。それを元手に中学3年生で高級腕時計を購入。「買った値段より高く売れる」という手法を生み出し、資産を増やしていく。高校卒業後の6年間は社会人として企業に就職。その後、筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)がある。