理想の住まいの選び方

20代の持家率が20年で2倍! なぜ、若い世代のマイホーム志向が高まっているのか?

マイホームを所有している割合を示す持家率。全世代平均では二人以上の世帯の平均は23年で86.5%に達しています。年齢が高くなるほどに持家率が上がるのですが、注目しておきたいのが、20代の若い世代の持家率の上昇。実は、20年間で2倍に増えているといいます。住宅ジャーナリストの山下和之さんがその理由を解説します。

20代でも3人に1人は持家に住んでいる!

総務省統計局の「家計調査」によると、わが国の二人以上の世帯の持家率は図表1にあるように2023年は86.5%です。2003年には77.1%でしたから、20年間で9.4ポイント高まっています。

それに対して、29歳以下の若い世代をみると、20年前には18.4%だったのが、2023年には34.7%に増えています。20年間で16.3ポイント高くなって、2倍近くに増えているのです。20歳代でも3人に1人は持家に住んでいる計算です。

若い世代の持家指向がジワジワと高まっているのではないでしょうか。実際、著者が首都圏の新築マンションのモデルルームなどを取材すると、「最近は20代、30代の若い人たちが増えています」という声をしばしば聞くようになりました。

とはいえ、マンション、戸建住宅ともに価格の高騰が続いていますから、まだ年収がさほどではない若い世代にとっては、マイホームの購入はハードルが高いように思うのですが、そんななかでも、頑張って買っている人が多いようです。

若い世代の年収、貯蓄が増えている!

その背景には、20代の若い世代の年収、貯蓄が増えていることが挙げられます。

やはり「家計調査」をみると、図表2にあるように、29歳以下の若い人たちの年収は2003年には平均454万円だったものが、2023年には611万円に増えています。20年間の上昇率は34.6%です。人出不足、人材難のなかでも、産業界にとっては特に若い世代の確保が喫緊の課題となっており、優秀な人材を採用するために、初任給などの引き上げが目立っています。他の世代の年収がさほど増えないなか、20代の若い世代の収入は増えているのです。

しかも、若い世代には共働きが多いので、夫婦二人で年収1,000万円を超えるケースが少なくありません。年収1,500万円、2,000万円といったパワーカップルほどではないにしても、年収1,000万円で住宅ローンを利用すれば、高くなったマンションや建売住宅などを手に入れることができるでしょう。

マイホームの購入には頭金が必要ですが、そのための貯蓄も増えています。いま一度図表2をご覧いただくと、29歳以下の貯蓄は2003年には314万円だったものが、2023年には442万円に増えているのです。


3,000万円の借入額の毎月返済額は8万円台

そこで、年収別に、住宅ローンをどれくらい利用できるのか試算してみましょう。

年収500万円で、金利1.0%、35年元利均等・ボーナス返済なしの条件で、銀行の審査基準の上限である返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)35%まで借りるとすれば、借入可能額は5,160万円ほどですが、共働きで1,000万円の年収なら、借入可能額は1億円を超えます。家計の安全を考えて、返済負担率を25%に抑えても、年収500万円の借入可能額は3,690万円で、年収1,000万円なら7,380万円です。

これなら、価格が上がっているなかでも、十分にマイホームを手に入れることができるのではないでしょうか。

実際に住宅ローンを組んだ場合、どれくらいの毎月返済額になるのかを示したのが、図表3です。

変動金利型のローンを0.5%の金利で利用できる場合、借入額3,000万円の毎月返済額は8万円を切ります。5,000万円でも13万円弱です。変動金利型では不安という人で、固定金利期間選択型の10年固定を利用するとして、金利1.0%でみると、3,000万円の借入額だと毎月返済額は8万円台半ばですし、5,000万円で14万円強です。


マイホームで将来に備える資産形成

現在賃貸マンションに住んでいるなら、場所によってはこれぐらいの家賃を負担している人が少なくないはずです。

賃貸住宅の家賃は払いっぱなしで何も残りませんが、それを住宅ローンに代えてマイホームを取得すれば、住宅という資産が手に入ります。しかも、住宅価格はどんどん上がっているので、買えるうちに買っておかないと、いよいよ買えなくなってしまいます。逆に買っておけば、住宅価格が上がって、資産が増えるという計算もできます。

人生100年時代といわれ、老後に備えて2,000万円以上の蓄えが必要といわれていますが、それだけの貯蓄を蓄えるのは簡単ではありません。しかし、住宅を手に入れておけば、ローン完済後は貴重な資産になります。

若い世代のなかには、そうした将来の資産として住宅を考える人が増えているといわれています。新NISAなど、若い世代にとっても資産運用が身近なものになりつつあります。マイホームの取得も将来的な資産形成の一環というとらえ方です。

住宅は第一義的には「居住」のためですが、同時に「資産」を購入することにもつながります。そう考える若い人が増えていけば、20代の持家率はさらに高くなっていくのかもしれません。


  • 本記事の内容は2024年12月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

お話を聞いたのは●山下和之さん(住宅ジャーナリスト)

やました・かずゆき/1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入成功させる完全ガイド』(講談社ムック)などの著書がある。
http://yoiie1.sblo.jp/