手間がかかる、だから伝わる
誰にでも1年に1度必ず訪れるのが誕生日。年齢が上がってくると“嬉しい日”という感じではないかもしれないが、その日くらいはお祝い気分でいたいもの。
ムードを盛り上げてくれるのが、周囲からのお祝いの言葉だ。友人に「誕生日に、必ずお祝いのハガキを送ってくれる友達がいて、毎年楽しみにしているんだ」と言う人がいた。SNSを通じて他の人からもお祝いのメッセージをもらったりするけれど、そのハガキを手にすると嬉しいし、誕生日の前から受け取るのを待ちわびている自分がいるのだそうだ。SNSでもハガキでも贈られる言葉は同じなのに、どうしてそんなにハガキを受け取るのが嬉しいのか。手に取るという行為やハガキの質量がそんな気にさせるのだろうか。
手紙文化振興協会代表理事のむらかみかずこさんは「自分のことを思い出して、わざわざハガキを書いてくれたという、その“わざわざ”感が伝わって、より大きな嬉しさにつながるのだと思います」と話す。
言葉を贈るだけでなく、ハガキを選んだり買い求める行為や、そこに自筆で文字を書いて時間を費やしてくれたことに対して、人は敏感に反応するらしい。
華やかなアイテムに想いを託す

「お祝い事にはグリーティングカードを使うと、さらに相手を想う気持ちが伝わると思います。最近は市場が活性化していて素敵なカードがたくさんあるので、カード自体がプレゼントのように思える手の込んだものもいっぱい。グリーティングカードにお祝いの気持ちを託して贈るのも素敵ですね」
たとえば、しばらく疎遠になっていた知り合いのお祝い事を耳にした時、プレゼントを贈るのは相手に少し重たく思われそうだけど、カードを贈るだけならとてもスマートにお祝いの気持ちを伝えられそうだ。そんな相手の幸せを祝福する気持ちがダイレクトに伝わるグリーティングカードはとても気の利いたアイテムに思える。見た目も華やかなグリーティングカードそのものでギフトになるのだ。
ただ、高価なグリーティングカードは、書き間違えるのが怖くて直筆のメッセージを書くことをためらってしまいそう。「そんな場合は、メッセージを書いた紙を挟んでもいいと思いますよ。相手との関係次第ではありますが、字を書き間違えてもシールを貼って誤魔化したりもできますし、そんなに怖がらずに書いてみましょう」とむらかみさん。
とにかくお祝いの気持ちを届けることが大事。自分も相手のお祝い事に乗っかって、ハガキやグリーティングカード選びを楽しみ、心からのお祝いメッセージを大切な人にも贈りたいものだ。

教えてくれたのは●むらかみ かずこさん
(社)手紙文化振興協会代表理事。東京女子大学卒。企業経営者の仕事に込める想いを言葉にしてまとめる小冊子の制作を手がけた後、2013年に(社)手紙文化振興協会を設立。「手紙の書き方アドバイザー®認定講座」を行い手紙の書き方講師の育成に尽力するとともに、自宅で学べる通信講座「手紙の書き方講座」「仕事で差がつく!メール・文章の書き方講座」を開発・販売。企業研修・セミナー、講演、メディアを通して、心が通じる手紙の書き方や仕事で成果につなげる文章術を広く社会に発信している。
文●柳澤 美帆 撮影●小林 久井(2024年10月掲載)
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