理想の住まいの選び方

「上がり」は自分で決める! 令和版「住宅すごろく」を考える

独身の間は賃貸住宅に住みながらお金を貯め、結婚・出産を経て比較的安価な公営住宅や中古マンションに移り住み、所得が増えたところで都心近くの新築住宅を購入。子どもが独立するタイミングで、郊外に庭付き一戸建てを購入して上がり。1973年に建築学者の上田篤氏が考案した「現代住宅双六(すごろく)」の内容だ。理想的な住み替えのステップだが、難度が高いと感じる人も多いだろう。「現代住宅双六」の受け取り方が変化している背景と、令和における住み替えの可能性について、LIFULL HOME’S総研 副所長の中山登志朗さんに聞いた。

目次

「現代住宅双六」が全員に当てはまらない時代に

上田氏が「現代住宅双六」を考案した1970年代は、地価が高騰する資産インフレが起こっていました。そのため、安く買った中古住宅でも高く売ることができ、その売却益を頭金にして新築を購入するといったステップアップを実現できたのです。

しかし、90年代にバブルが弾けてからの約30年間は、地価が下落する資産デフレが続きました。住宅を購入しても売却時に元本割れしてしまうため、住み替えが困難な状況に陥ったのです。

資産デフレ下では、住宅の「資産価値」に着目する必要が出てきます。立地や広さ、階数などによって価値が左右され、売却価格に大きな差が生まれるためです。都心近郊などの資産価値の高い住宅を価格が低いうちに購入し、着実にローンを返済した上で、利益が出るタイミングで売却して新築へ移る。そんな住み替えを実現できるのは、ごく限られたケースとなっていきました。

また、ライフスタイルや家族構成、働き方の多様化も進みました。“夫が働き、妻が家庭を守る”ことを前提とした「現代住宅双六」は、もはや全員に当てはまるモデルではなくなったといえます。これらの要因から、資産デフレが続いた約30年の間に、自身のライフスタイルに合わせた自分なりの「住宅すごろく」を考えていく時代へと変わっていったのです。

“資産インフレ”の2020年代は住み替えやすい!?

2020年代に入ってからは再び資産インフレが起きているので、住み替えのあり方は大きく変わっていくことが予想されます。

住宅価格は物価に連動して上昇する特徴があるため、住宅購入を「インフレヘッジ(インフレ下での貨幣価値の下落による損失を回避する行動)」と捉え、戦略的に購入する方が増えています。

とはいえ、2024年から2025年にかけて急激に上昇した価格が、今後も際限なく上がり続けるとは限りません。数億円の物件を購入できる層は限られているため、今後は一般的な給与所得者が支払える水準に落ち着くか、限定的な供給に留まる新築住宅から既存(中古)住宅へとニーズが移行していく可能性があります。

近年は生活利便性と交通利便性を兼ね備えた資産価値の高いタワーマンションが人気ですが、資産インフレの局面で売却すれば利益が出て、手元に現金が残ります。これを次の住み替えの原資にできるため、タワーマンションを売却して住み替える流れも生まれています。既に住宅を保有している人にとっては、今は住み替えを行いやすい状況といえるでしょう。

「郊外化」が進む令和のリアルな住宅事情

だからといって、今まさに高騰しているタワーマンションをこれから購入するのは現実的ではない、と感じる人も多いはずです。

一般的な給与所得者の住宅購入や住み替えは、都心の中古住宅やコンパクトマンション、あるいは郊外の物件へと移っており、実需は「郊外化」していくと考えられます。

現在でも、東京都心まで1時間程度でアクセスできる郊外であれば、十分に手が届く価格で住宅が販売されています。実際に、大手町や品川、新宿などに乗り換えなしで通える郊外に住む、という考え方は定着し始めています。

※写真はイメージです。

資産価値の先にある、家族の幸福

資産価値の話もしましたが、最も大切なのは「自分や家族にとっての幸せがどこにあるか」です。家族が安心して楽しく暮らせる場所は、ひょっとすると都心のタワーマンションではなく、郊外の戸建てかもしれませんよね。

住宅購入を検討する際は、結婚や出産、子どもの進路、自身の働き方、そして老後の暮らしを具体的に想像してみてください。それが、自分なりの「住宅すごろく」を描く一歩となります。

住宅は購入したら終わりではありません。住み替えはもちろん、不測の事態にどう備えるかも含めて考えることが重要です。一度きりの人生、社会の変化に流されすぎず、自分が送りたい生き方や楽しめる暮らしを軸に、住まいを考えてみてはいかがでしょうか。

  • 本記事の内容は2026年3月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

お話を聞いたのは●中山登志朗さん

なかやま・としあき/LIFULL HOME’S総研 副所長兼チーフアナリスト。出版社を経て、1998年よりシンクタンクにて不動産・住宅セクターの分析を担当。2014年にHOME’S総研(現・LIFULL HOME’S総研)副所長に就任。不動産市況分析の専門家として、メディアへ出演、寄稿を行うほか、年間多くの不動産市況セミナーで講演する。
https://www.homes.co.jp/souken/

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