利上げを見据えて、住宅ローンのシミュレーションをしよう
日銀が金融政策の正常化に本腰を入れ始めたことを受け、民間の金融機関も金利を上げ始めています。直近半年ほどの動きを追ってみましょう。
●民間金融機関の固定金利
上昇傾向にあり、金融機関によっては年0.5%ほど上げるところも出てきています。ただし、「フラット35」の金利を超えるところは少ないと考えられます。●フラット35(住宅金融支援機構の固定金利)
上昇は抑えられていて、これまでの金利からほとんど変わっていません。
●変動金利
上昇を抑える傾向にあります。金融機関によっては、既存の契約者の金利を多少上げる一方、新規の契約者に対しては従来の金利のままというところもあります。日銀が追加利上げに踏み切った際には、日銀と同等の水準で上げる可能性があります。
現状、フラット35と変動金利はあまり上がっていませんが、今後上がる可能性はあります。利上げを見据えて、住宅ローンのシミュレーションを行うことをおすすめします。
日銀は「段階的に政策金利を年1%程度まで引き上げる必要がある」という考えを示しています。現在の政策金利が年0.25%なので、0.75%の上がりしろがあるといえます。変動金利においては、借りた後に金利が大きく上がる可能性があることを想定しておきましょう。
今後金利が上がった場合、固定金利と変動金利の金利差が縮まることもあり得ます。金利が上がるリスクのある変動金利よりも固定金利のほうが安心、と感じる人も増えるのではないでしょうか。

「固定金利」と「変動金利」はライフプランで選ぼう
金利が上がっていく想定でシミュレーションを行うと、固定金利も変動金利もあまり変わらないという結果が出ることがあります。だからといって、適当に選んでもいいというわけではありません。家の買い方やライフプランによって、適した金利は異なります。
●固定金利
借り入れた時点の金利が全返済期間を通じて変わらない固定金利は、購入したマイホームに長く住もうと考えている人と相性がいいといえます。長い期間をかけて返済していくことを考えると、金融情勢の影響を受けない固定金利のほうが、安心感があるからです。
固定金利は契約した時点で月々の返済額が確定し、将来の計画を立てやすくなるので、子育て中または今後子どもを持つ予定がある家庭にもマッチするでしょう。フラット35であれば、「子育てプラス」を活用することで金利を最大年1%引き下げられます。
上記の家の買い方やライフプランに当てはまらないとしても、変動金利が上昇した際に対応できないと感じるようであれば、固定金利を視野に入れましょう。
●変動金利
金融情勢の変化に伴って金利が見直される変動金利は、近い将来に住み替えを考えている人に適した金利といえます。変動金利には「5年間は返済額が変わらない」「返済額を引き上げる際の上限を直前の額の125%までとする」といったルールが設定されていることが多いため、5~10年後に売却するのであれば、金利上昇の影響を受けにくいからです。
また、すでに子どもが独立している家庭や子どもを持つ予定がない家庭で、経済的に余裕がある場合は、金利が変動しても対応できると考えられます。
マイホームに長く住む想定の方や子どもがいる方でも、金利の上昇に耐えられる収入や備えがある場合は、変動金利も選択肢に入るでしょう。
固定と変動を組み合わせた「金利ミックス」は要注意!
住宅ローンの一部を固定金利、一部を変動金利にすることで、リスク分散を狙う商品もありますが、あまりおすすめできません。固定と変動を併せ持つことでリスクヘッジになるように感じますが、裏を返すと、それぞれのメリットも相殺し合う形になってしまうからです。
住宅ローンを検討する際は、まず固定金利と変動金利のメリット・デメリットを明確にしましょう。そのうえで、デメリットに対して貯金をしたり収入を増やしたりといった備えを行う方向で考えていくことが大切です。
- 本記事の内容は2025年1月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

お話を聞いたのは●千日太郎さん(公認会計士)
せんにち・たろう/公認会計士、オフィス千日合同会社代表社員。大学卒業後、大阪の監査法人へ入社。資格や名前を伏せて始めた「千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える」が評判を呼び、住宅ローン、不動産分野で人気の高いコラムニストとなる。YouTubeでは、公認会計士としての金融商品の分析力と独自のノウハウをもとに、日々寄せられる読者からの相談に的確なアドバイスを行う。著書に『住宅破産』(MdN新書)、『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』(日本実業出版社)など。
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