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夫婦で実現!アーリーリタイアを成功させる5つの極意

働き方が多様化する中で、定年を待たずして会社を辞め、自由に生きる「アーリーリタイア」が注目されている。しかし、アーリーリタイアをした後、残りの人生に豊かに暮らすのは簡単ではない。資金の準備はもちろん、空いた時間をどう使い、誰と共有するかも人生の充実度を左右する。リタイア後に理想的な生活を送るには、どんな準備をすればいいのか。現在、作家・講演家として活躍し、夫婦で1億円を貯めてアーリーリタイアを成功させた寺澤伸洋さんに、その極意を聞いた。

自分の好きなことだけを仕事にして、自由に生きていく

アーリーリタイアと同じように使われ、近年話題になっている言葉として「FIRE」がある。これは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとったもので、経済的自立を果たしたうえでの早期退職を目指す概念であり、主にリタイア後の資金準備という文脈で用いられることが多い。

日本では、FIREというと「お金を貯めて会社を辞め、あとは遊んで暮らす」というイメージが流通しているが、それは本質をとらえたものではないと寺澤さんはいう。

「私が考えるFIREは、朝から晩まで会社に拘束される人生から抜け出し、いつ何をして、お金を稼いでもいい自由人になるというものです。会社に所属しないとお金が得られないという固定概念からの脱却こそがFIREの本質であり、これはリタイアというより、リスタートやリボーンととらえるべきものであると思います」

寺澤さんも、以前はサラリーマンとして週6日働くこともあり、リモートワークとなっても1日中パソコンの前に座って外に出られないような忙しい生活を送っていた。

「お金を貯め、FIREを実現して一番よかったのは、“したくないことをしなくていい”ということです。私は本を書くのが好きで、それを現在の仕事にしていますが、たとえ一冊も売れなかったとしても生活できる余裕があるので、自分の書きたい本を、自分のペースで書いています。会社のために仕事をして売上や目標に追われるようなことが一切なくなり、ストレスが大きく減りました」

家計簿をつけ、無駄な支出を削減しつつ、無理なく貯金

FIREを実現するための資金を貯めるにあたり、寺澤さん夫婦は以下の3つを常に意識して生活していたという。

1)家計簿による、収入と支出の管理/把握

「貯金や投資などの計画を立てる上で必須なのが、収入と支出の管理です。現在いくらの収入があり、そのお金を何にどう使っているのか。これをできる限り細かく把握するのが、スタートラインといえます。そうしてお金の管理ができて初めて、月々に無理なく貯められる金額の目安や、10年後、20年後に貯まるお金の額がわかり、実現可能な資金計画が立てられるようになります。まずは家計簿をつけ、実態の把握に努めましょう」

2)無駄な支出をあぶりだし、なるべく早く削減する

「家計の管理で大切なのは、収入よりも支出です。特に食費や交際費などは、無自覚にかなりのお金を使ってしまいがちな項目であり、果たして適正な額かどうか十分に検討する必要があります。なお、支出の管理というと、あらゆる支出を節約するという印象がある人もいるでしょうが、私は自分の好きなことや趣味に対しては、むしろ節約せずお金をかけていくべきと考えています。その時々で人生を楽しみつつ、無理なく貯金できるという状態を作るのが、長期的にお金を貯めるうえでのポイントです」

3)夫婦で家計簿を見直す

「家計簿をつけ、それで満足してしまう人がいますが、つけるだけでは意味がありません。常にその内容を確認し、支出を最適な額に調整し続けていくのが大切です。家計簿のチェックは、できれば夫婦で行いたいところ。月に一度でもいいので、互いの収入と支出について客観的な立場から感想を述べあい、改善点を話し合うようにすると、より効果的に無駄な支出のカットができるようになるはずです」

リタイア後、互いに何をして生きるかを夫婦で話し合う

目標にしていた資金を貯め、FIREを実現したとしても、それだけでアーリーリタイアが成功するとは限らない。

「FIREをすると、どうしても一人でいる時間が多くなります。そのため、日中は世間と隔離されているような感覚を持ってしまうこともあると思います。そうした一人の時間を持て余し、孤独感やさみしさを強く感じるようだと、アーリーリタイアが辛いものになってしまいかねません」

そんな状況に陥らないためのキーワードは、「目標」と「仲間」の2つであると寺澤さんは考える。

4)リタイア後、何をしたいかを明確にしておく

「人生100年時代と言われる今、リタイア後の人生は何十年にも及びます。充実した時間を過ごすためにも、リタイア後に何をやりたいか、どんなことをして生きていくかをできる限り、明確に決めておくのが大切です。自分だけではなく、夫婦でどんな風に生きていきたいのかを話し合い、互いの方向性を共有しておくと、より実効性の高いライフプランが立てられます」

5)リタイア後、一緒に過ごせる仲間を作っておく

「いくら自由な時間があっても、それを共に楽しんでくれる仲間がいないと、やはり持て余しがちになります。しかし、気が向いたからと平日の昼間に声をかけ、すぐに集まれるような仲間は、会社の交友関係だけではなかなかできないものです。私は、リタイア後の仲間をつくるため、かなりの数のイベントや交流会に参加し、実際に生涯の友人と呼べる人と出会いました。趣味や特技などを入り口に、異業種の人々が集まるような場に積極的に顔を出してみてはどうでしょう」

「暇な時間が苦痛」「やることがないから、やっぱり会社で仕事をしたい」と後悔しないために、事前にリタイア後の生活をイメージしておくことが、アーリーリタイアを成功させるには大切だろう。

お話を聞いたのは●寺澤伸洋さん

大阪府生まれ。東京大学卒業後、日経企業で17年間勤務したのち、外資系企業に転職。4年間の在職中に、3冊の商業出版をして、1億1千万円を貯めてFIRE達成。現在は作家、講演家として活動中。著書に『子どもを2人育てながら1億円貯めた夫婦の40代FIREまでの道のり』、『つみたてNISA、iDeCo、ふるさと納税超入門 投資初心者の教科書』(どちらも、電子書籍)など。

Twitter:@ohtsuma(https://twitter.com/ohtsuma)