理想の住まいの選び方

夏から秋に住宅ローンの金利が上昇!? 「マンションの買いどき」を考えてみよう!

2024年3月、日本銀行が17年ぶりにマイナス金利政策を解除、短期金利を-0.1%から+0.1%に引き上げた。現在、住宅ローン利用者の7割以上を占めるといわれる変動金利型の住宅ローン金利が上がる可能性も指摘されている。購入を検討している人は、マンションの買い時について頭を悩ませているかもしれない。そこで、住宅ジャーナリストの山下和之さんが消費者意識の最新動向を解説する。

8割以上の人が「金利が上がる」と予想

分譲マンション購入・売却を検討する人対象のサイト「住まいサーフィン」を運営するスタイルアクトは、四半期に一度「マンション購入検討者の定例意識調査」を実施している。2024年4月分の調査は、3月の日本銀行のマイナス金利政策解除を受けて実施されており、今後、変動金利型の住宅ローン金利がどうなると思うかを聞いている。

その結果、図表1にあるように、程度の差はあれ、8割以上の人が金利は上がるだろうと答えている。

2023年までは長期金利に連動する固定金利型の金利が上昇したものの、短期金利に連動する変動金利型は超低金利に据え置かれたままだった。だが、マイナス金利政策解除によって短期金利が上がり、変動金利型の金利も上がることになると考える人が多いわけだ。

2024年5月現在、まだ上がってはいないものの、夏から秋にかけて間違いなく上がっていくだろうとみられている。

「買い時」と捉えて購入意欲を高める人が多い

にもかかわらずというか、だからというべきか、マンション購入検討者の間では、いまが「買い時」と考える人が少なくない。やはりスタイルアクトの調査によると、図表2にあるように、9.8%の人がいまは「買い時」と答え、「やや買い時」の22.9%を加えると、「買い時」と考える人は32.7%に達する。それに対して、「あまり買い時ではない」は17.6%、「買い時ではない」は6.9%で、「買い時ではない」の合計は24.5%で、「買い時」と考える人のほうが8.2ポイント多くなっているのだ。

購入意欲についても同様で、図表3にあるように、「購入意欲が増している」「購入意欲がやや増している」の合計が51.9%に対して、「購入意欲はやや減った」「購入意欲は減った」の合計は12.2%であり、購入意欲を高めている人のほうが圧倒的に多くなっている。

中古マンションは10年間で8割も上昇している

これは、マンション価格が高騰していて、今後も当分上がり続けそうだし、それにローン金利の上昇が加われば、いよいよ買えなくなってしまう。それまでに買っておくのが現実的な判断と考える人が多いためではないだろうか。

マンション価格は図表4にあるように、新築、中古ともに上昇の一途を辿っている。首都圏の新築マンションは2013年度には平均5008万円だったのが、2023年度は7566万円だから、10年間で51.1%上がっている。中古は2614万円だったのが、4700万円になり、10年間の上昇率は79.8%に達する。

これだけ上がれば、購買力がついていけず、そろそろ頭打ちになるのではないかという見方があるものの、土地の仕入れ値や建築費などの上昇により、新築マンションはさらに高くならざるを得ないとする見方が支配的だ。それにつられて中古マンションも一段のアップがあるのではないか、という見方が強い。

借入額増加、金利アップで負担増加の前に

全国宅地建物取引業協会連合会の不動産総合研究所は、四半期に一度、加盟するモニター企業(不動産会社)を対象に、不動産市況について調査している。マンション価格の3カ月後の予測については図表5のようになっている。

新築マンションについては、「大きく上昇している」「やや上昇している」の合計が47.1%と半数近くに達し、「やや下落している」が11.8%で、「大きく下落している」はゼロだった。中古マンションについては、「上昇している」の割合はやや小さくなるが、それでも3カ月も上がっているとみる不動産会社が多い。

価格が上がれば、住宅ローンの借入額を増やさざるを得ないが、その上で金利もアップすれは、返済負担額は一段と重くなる。たとえば、借入額5000万円、金利0.3%、35年元利均等・ボーナス返済なしの毎月返済額は12万5421円だが、借入額が6000万円に増えて、金利が0.5%に上がると毎月返済額は15万5751円に増えてしまう。24.2%もの負担増加だから、そうなる前に買っておくのがいいのではないか、と考える人が多くなるのも当然の流れだろう。

さて、皆さんはどう考えるだろうか。

(2024年6月掲載)
※本記事の内容は掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

お話を聞いたのは●山下和之さん(住宅ジャーナリスト)

やました・かずゆき/1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入成功させる完全ガイド』(講談社ムック)などの著書がある。
http://yoiie1.sblo.jp/