ローンの種類と特徴

マンションの価格高騰で注目!「親子リレーローン」の注意点

マンションの価格が高騰し、1人でローンを組むのは難しいと感じている人も多いのでは? そんなときの選択肢の一つに「親子リレーローン」がある。親子間で住宅ローンの返済を引き継いでいくものだ。一見メリットが大きそうだが、注意点はあるのか。住宅ローンに詳しい人気ブロガー、千日太郎さんに聞いた。

連帯債務で、親子で返済を引き継ぐしくみ

親子リレーローンとは、返済の前半部分を親、後半部分を子どもが担う住宅ローンのことで、親から子に返済をバトンタッチするという意味で、「リレー」という言葉が使われています。金融機関によっては、親子リレー返済と呼ばれることもあります。

基本的には、親子で同居する家を購入する際に利用できる住宅ローンで、借りる金額や返済年数などは、親と子それぞれに設定できます。半分ずつではなく、親が3分の1、子どもが3分の2を返済するということもできます。

メリットとしては、収入合算できるため借り入れ可能額が高くなることや、子の年齢を基準に返済期間を決めるため、親が高齢であっても余裕のある返済計画を立てられることがあります。また、親子それぞれに住宅ローン控除を受けられるというメリットも。住宅ローン控除の対象となる10年間は、親が返済する期間だとしても、子どもも控除を受けられます。

一方で、親子リレーローンは「連帯債務」なので、親子ともに借入額のすべての債務を負います。後述しますが、団信(団体信用生命保険)に加入していないほうが亡くなった場合のリスクがあり、残ったほうがローンを引き継ぎ、返済していくことになります。

親子リレーローンと似た住宅ローンに、ペアローンがあります。夫婦間、親子間でお互いが連帯保証人となって、それぞれが住宅ローンを契約し、同時に返済していくしくみです。ペアローンは連帯債務ではないので、仮に債務者のどちらかが亡くなったとしても、もう1人が返済を引き継ぐことはありません。

知っておきたい、親子リレーローンの注意点

相続トラブルが発生する可能性がある

親子リレーローンで購入する家は、親と子の共有名義となります。基本的に親の持ち分は、ローンを支払う子どもが相続することになるでしょう。

子どもに兄弟姉妹がいる場合、親の財産である家や土地の取り分について、もめるかもしれません。家はローンを支払っている子どもが相続する可能性が高いですが、ほかの兄弟姉妹から「家の代わりに、お金は相続させてもらう」といわれてしまうこともあるでしょう。兄弟姉妹がいる場合、親子リレーローンの利用は要注意です。

親が亡くなっても債務は残る

民間金融機関の親子リレーローンを使う際、基本的に親は団信に加入できません。そのため、親が返済中に亡くなった場合、親が支払う予定だった分は子どもが支払っていきます。ちなみに、子どもは団信に加入できるので、親の返済中に子どもが亡くなった場合は、団信によって借入残高がゼロになります。

例外として、「フラット35」で親子リレーローンを組む場合は、80歳未満であれば親も団信に加入できます。親が加入していれば、返済中に親が亡くなった場合、子どもの返済を待たずに借入残高がゼロになります。

  • 親が80歳の誕生日に亡くなった場合は、ゼロにはなりません。

子どもは別の住宅ローンを組みづらくなる

先述したように、親子リレーローンでは親も子も借入額のすべての債務を負うことになります。借入額のすべてとなると大きな金額になるため、返済中に新たな住宅ローンを組もうとしても、融資は難しいと判断される可能性が高いでしょう。将来、セカンドハウスなどを買おうと考えている場合、親子リレーローンの利用は慎重に検討しましょう。

最終的な選択肢の一つとして考える

家を買う際、自分の収入だけで住宅ローンを組めないとしても、すぐに親子リレーローンを使うのはおすすめできません。先述した注意点があるからです。

親子リレーローン以外にも、夫婦で返済していく夫婦ペアローンや親子ペアローンなど、さまざまな住宅ローンがあります。まずは1人で組める借入額から考え、どうしても希望の金額に手が届かなければ、夫婦で返済する方法から検討してみましょう。配偶者に収入がない、病気などで働けないという場合に、最終手段として親子リレーローンや親子ペアローンの利用を考えるというステップで進めていけるといいでしょう。

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お話を聞いたのは●千日太郎さん

せんにち・たろう/公認会計士ブロガー、オフィス千日合同会社代表社員
大学卒業後、大阪の監査法人へ入社。資格や名前を伏せて始めた「千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える」が評判を呼び、住宅ローン、不動産分野で人気の高いブロガーとなる。公認会計士としての金融商品の分析力と独自のノウハウをもとに、日々寄せられる読者からの相談に的確なアドバイスを行う。著書に『住宅破産』(MdN新書)、『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』(日本実業出版社)など。
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