ローンの種類と特徴

購入前にチェックしたい!「中古マンション」の住宅ローンの話

新築マンションの供給数が限られる中、選択肢が増える中古マンションへの関心が高まっている。中古でも新築同様に住宅ローンを組むことはできるが、物件によっては制限が設けられたり、審査が通りにくくなったりすることもある。そこで、中古マンションならではの注意点について、ファイナンシャルプランナーの平井美穂さんに聞いた。

住宅ローンを組みづらい中古物件の特徴は?

【特徴①】
担保評価額と売買価格があまりにも乖離している物件

不動産価格が高騰している今、中古でも相場よりかなり割高な値がつけられている物件があります。例えば、売主も買主も個人であるような個人間の取引では相場価格で取引されるのが一般的ですが、業者が買取後にリノベーションをして再販売しているような物件ではまれに利益を1,000万円程度上乗せしているものあります。このような物件だと金融機関からの満額融資を受けにくくなります。

というのも、金融機関は担保評価額を重視しているからです。なぜ、返済期間が35年もかかるほどの大きなお金を、ごくわずかな金利で融資してもらえるかというと、住宅を担保に入れているからです。その物件が担保として見合うかどうかは、とても重要な判断軸になります。

万一、返済が滞った時には、金融機関は担保物件を競売にかけ資金を回収します。ここで担保評価額が融資額よりも著しく低い場合は、お金を貸す金融機関にとってはリスクが高いと判断し、融資額の減額や不承認となってしまうのです。

ちなみに、担保評価額を出す際に専有部の状態は評価しない金融機関が多くなっています。あくまで立地や建物全体・専有面積が評価の対象になり、リフォームやリノベーションについては加味されないのが一般的です。

【特徴②】
流動性が著しく乏しい物件

遠隔地や離島、山奥などに建っている物件は買い手が少ないため、競売にかけても売れないと判断され、金融機関から融資してもらえないケースがあります。金融機関によっては、住宅ローンの申込要件に「遠隔地・離島の物件には融資しません」と書かれていることもあります。

長期固定金利住宅ローンの「フラット35」であれば、立地に関係なく融資してもらえる可能性が高いといえます。遠隔地の住宅購入を予定している人は、「フラット35」の利用を検討しましょう。

【特徴③】
旧耐震基準の物件

昭和56年に建築基準法が改正され、耐震基準が新しくなりました。そのため、現在は昭和56年以前の旧耐震基準で建てられた物件だと、金融機関からの融資が下りないことがあるので、築年数や建てられたタイミングもチェックしましょう。

ただ、金融機関によっては、旧耐震基準の物件でも住宅ローンを組む人物の評価が良ければ、融資してもらえることがあります。人物の評価とは、返済負担率(収入に対する返済額の割合)や自己資金割合、年齢、職歴、健康状態などを含めた評価のことです。

特に注意すべきは「価格の妥当性」

売買価格が相場価格と大幅に乖離していることに気づかず、結果的に住宅ローンを組めなかったということにならないよう、購入予定の物件の価格が妥当かどうか、確認することをおすすめします。

不動産情報サイトなどで購入予定のエリアの類似物件の売買価格を調べたうえで、ほかと比べて極めて価格が高い物件は避けたほうがいいでしょう。購入予定のマンションの過去の成約事例も調べると、価格の妥当性を判断しやすいでしょう。

物件の資産価値も重要ですが、住宅として購入し、生涯住むと決めているのであれば、そこまで気にしなくてもいいでしょう。ただ、どの金融機関でも住宅ローンを組めないような物件は、避けたほうが無難です。なぜかというと、売って資産にできる物件とまったく売れない物件だと、老後のキャッシュフローが変わってくるからです。子どもとの同居や介護施設への入居などを機に家を手放す判断をしたとき、売れる物件であれば、老後資金として活用できます。

価格だけでなく「物件」もしっかりチェック

これから住む場所ですから、物件そのものを見て確認することも大切です。実際に現地に赴き、他の部屋にも入居者がいるか、駐車場は稼働しているか、購入する予定の部屋はきれいに使われているかといった点をチェックしましょう。入居率や駐車場の稼働率が低いマンションは、将来的に財政難で建物の管理が維持できない可能性があります。

購入申込の中で受け取る書類も、しっかり確認。管理費に滞納がないか、近隣トラブルはないか、事故物件ではないか、見逃さないようにしましょう。可能であれば、過去の管理組合の議事録を取り寄せて、目を通すと安心です。マンションの購入と同時にリフォームを希望しているならば、管理規約で定められているリフォームの条件も事前に確認しておくことで、トラブルを避けることができます。

お話を伺ったのは●平井美穂さん

ひらい・みほ/ファイナンシャルプランナー。宅地建物取引士、証券外務員一種、スカラシップアドバイザーの資格も持つ。不動産会社や銀行に勤めた後、2012年に独立して平井FP事務所を開業。これまで5,500件超の住宅購入・ローン相談、家計診断、資産運用相談を受けるなど、顧客利益を重視した活動を行う。著書に『金利上昇でもあわてない住宅ローンの超常識』(河出書房新社)など。
https://fp-hirai.com/