理想の住まいの選び方

都内で4人家族が快適に過ごすには?「広さ」と「間取り」の最適解

2024年も依然として都内のマンション価格の高騰は続きそうだ。予算内で最良と納得する物件を選ぶために大切な視点とは何か。そこで、都内在住で小さい子どもが2人いる4人家庭を想定し、不動産コンサルタントの秋津智幸さんに物件選びのポイントを聞いた。

予算を軸に広さを確保!今は“投資”よりも“長く住める”を前提に

マンション価格を大きく左右するのは「立地」「面積」「築年数」だ。価格の高騰が続く中、予算内で購入するには何かを妥協する必要がありそうだ。「無理をしない予算内であること」を前提とした上で、秋津さんが4人家族で選ぶ際に譲りにくい条件としたのは「面積」だ。

「家族の人数が決まっている以上、ある程度の広さは確保したいものです。少し駅から遠い範囲まで広げ、中古まで視野に入れると選択肢は広がるでしょう。最近は魅力的なリノベーション物件も増えています。耐震構造の面から築年数には気をつけながら探してください」

マンション価格の高い時期に購入すると、将来価格が下がった際に損するのでは、と考えてしまうのは仕方がない。しかし、売ったり貸したりしなければ「損は顕在化しない」ものだ。

「たとえ市場価格が下がっても、家の住み心地が変わることはありません。家自体は残りますし、価値がゼロになることもありません。その点から見ると、今であれば“長く住むことを前提に”購入することがおすすめです。むしろ気を付けるべきは住宅ローン金利の上昇。のちに家計を苦しめないよう、特に予算はしっかりと余裕を持って計画を立ててください」

快適で自由度が高いのは、60㎡後半~70㎡

当然だが居住者の数によって快適と感じられるスペースは変わる。まずは適切な広さを把握しよう。一つの目安となるのが、国土交通省が発表している「住生活基本計画」の「誘導居住面積水準」。一般的に豊かな生活を過ごせることを前提にした広さの基準だ。2人以上で都内に暮らす場合は「20㎡×世帯人数+15㎡」(※1)が必要とされており、4人家族で計算すると95㎡だ。未就学児は平均して0.5人(※1)とカウントされるため、子ども2人が小さい間は75㎡と計算できる。とはいえ、結構な広さだと感じる人がほとんどではないだろうか。

「現在の市況では、都内でこの基準を満たす部屋を一般的な家庭の予算内で見つけるのはあまり現実的ではありません。しかし、同計画では健康で文化的な住生活を営むために欠かせない『最低居住面積水準』も出しています。これは『10㎡×世帯人数+10㎡』で計算します。つまり4人家族で50㎡、子どもが未就学児であれば40㎡となります。ただこれは最低限であり、快適とは言いがたいので、私がおすすめするのは中間をとったもの。つまり、60㎡後半~70㎡を目安にするといいでしょう。これだけの広さがあれば間取りを変えるなどリフォームの幅も増えます」

秋津さんによると、広すぎる部屋も考えものだという。ずっと住み続けるとしても子どもが独立して家を出てしまうと、部屋を持て余しかねない。一方で、もし売ったり貸したりしたいと考えた場合も、買い手や借り手がつきにくくなるリスクがあるからだ。

「一般的に面積が小さいほど、売買や賃貸の単価は高くなる傾向があります。手放す際は広いほど、単価でみた相対的な価格は下がると考えた方がいいでしょう」

※1)都市部以外は「25㎡×世帯人数+25㎡」と計算。
※2)3歳未満は0.25、3歳以上6歳未満は0.5、6歳以上10歳未満は0.75人として算定。

子どもの個室が必須なのは6年!広めの部屋を持つ3LDKがベスト

子どもが2人以上いる場合に迷いやすいのが間取りだ。思春期や受験時期など子どもの成長とともに“適切”が変わるからだ。そこで秋津さんは「子どもに一人部屋が必要な期間は中学・高校生の6年を目安に考えてほしい」という。

「勉強に集中しなければならないなど、子どもに個人の空間が必要となるのは一般的に中学生ごろから高校を卒業するまでです。この期間を家族4人で快適に過ごすにはどんな間取りが理想的かを考えましょう。お子さんの年齢差や性別と照らし合わせるとより具体的に見えてくるかもしれません。6歳以上離れていれば必要なタイミングがずれるので子ども部屋は1つでいい可能性もありますし、同性であれば同じ部屋で問題ないこともあります」

状況にもよるため一概にはいえないが、平均して活用しやすいのは3LDK。かつ「3つの居室のうち1つは8~10畳の大きめな部屋であること」がベストだ。例えば10畳の部屋は半分でも5畳と、ベッドが置ける広さが保たれ簡易的に2つの個室となりうる。

「部屋の分け方としては、間仕切りとして棚を置くだけでも十分。リフォームはお子さんが巣立って夫婦二人になったタイミングで考えてもいいでしょう。特に今、家はとても高い買い物です。“住み方の工夫”こそが重要で、過剰にお子さんの成長だけに左右されて判断を誤らないようにしてください」

実際に都内のファミリー物件で多いのがこの70㎡前後の3LDK。需要が高いことの表れでもあり、資産としての価値も落ちにくいそうだ。汎用性のある物件で、状況に応じてフレキシブルに住み方を工夫できれば、家族にとって快適で、かつ価値のある資産になりうるといえるだろう。

(2023年12月26日掲載)


お話を聞いたのは●秋津智幸さん

あきつ・ともゆき/不動産サポートオフィス代表コンサルタント。横浜国立大学卒業。不動産デベロッパー、不動産コンサルティング会社を経て独立。現在は、賃貸から売買、自宅から店舗や事務所などの相談を受け、コンサルティングも行う。不動産投資や自宅購入に関するセミナーの講師としても活動。主な著書に『貯蓄のチカラ 30歳からのおカネの教科書』(朝日新聞出版)、『〔2023~2024年版〕30年後に絶対後悔しない中古マンションの選び方』(河出書房新社)。
http://2103-support.jp/