理想の住まいの選び方

首都圏では8戸に1戸が超高層マンションの時代!将来的に資産価値を保つ条件とは

2000年代の初頭までは超高層マンションはまだまだ少なかったため、希少性が高く、人気も資産価値も高かった。しかし、いまやあちこちで見られるようになり、希少性が乏しくなりつつある。住宅ジャーナリストの山下和之さんが高い資産価値を維持できる超高層マンションの条件を解説する。

1,500棟を突破して戸数は40万戸に近づく

超高層マンション、タワーマンションには明確な定義があるわけではないが、一般的には地上階数が20階建て以上、高さ60m以上のマンションといわれている。

その超高層マンションがわが国に初めて登場したのは、1970年代で、その後も1980年代までは1年に1棟出てくるかどうかという時代が続いたが、1990年代に入って本格的に増加が始まり、図表1にあるように年間10棟前後供給されるようになった。

そして2000年代に入ると爆発的に増加、2003年から2009年までは70棟から100棟近い供給が行われた。その後は、年間50棟程度で推移しているが、それでも毎年安定的に供給が続いている。

不動産データバンクの東京カンテイの調査によると、2023年12月末時点の超高層マンションのストックは全国で1,515棟と1,500棟を突破し、総戸数は39万9,638戸と40万戸近いレベルに達している。

首都圏では8戸に1戸が超高層マンションの時代

かつては、都心部の交通利便性の高いエリアに限られていたが、しだいに都心では新規物件の立地が難しくなり、都心の周辺や郊外の主要なターミナル駅近くでの建設が目立つようになってきた。

さまざまな場所で超高層マンションの建設が珍しくなくなり、その結果、当初の人気の最大の要因だった希少性が乏しくなってきた。図表2は、首都圏の新築マンション全体と、そのうちの超高層マンションの戸数を年次別に棒グラフで示し、超高層マンションのマンション全体に占めるシェアを折れ線グラフで示している。

1990年代には超高層マンションのシェアは0%台から1%台、2%台の年が多く、たいへん希少性が高かった。100戸に1戸程度かそれ以下という年もあった。しかし、それが2000年代に入ると、一時的には超高層マンションのシェアは30%台、40%台まで上昇した。その後は低下しているものの、1990年から2022年までの合計を比較すると、超高層マンションのシェアは12.5%となっている。首都圏のマンション全体の8戸に1戸は超高層マンションという計算だ。

資産価値の向上を期待できる物件の条件

超高層マンションがまだまた珍しい時期であれば、超高層マンションというだけで売れて、資産価値の上昇を期待できたが、ここまで増えてくれば、超高層マンションというだけで希少性が評価され、資産価値の向上を期待できる時代ではないだろう。20階建て以下の一般の中高層マンションと差別化できるような、超高層マンションならではの条件を色濃く持っていないと資産価値の向上は期待できないのではないか。

超高層マンションには、超高層ならではの難点もある。中高層マンションに比べて維持管理や大規模修繕に高額な費用がかかり、管理費や修繕積立金の負担が大きくなる。そうしたデメリットを克服できるだけの魅力を備えた物件でなければならないのだ。

では、どんな条件を備えていればいいのか。主なポイントとしては次のような点を挙げることができるだろう。

第一に、エリアのなかでもひときわ階数が高く、エリアのランドマーク的な存在になり得ること。20階建てではなく、50階建て以上、都心部であればできれば60階建て以上が望ましい。都心部だと周辺に同じような超高層マンションが建設される可能性が高いので、それによって眺望が損なわれないような高さが必要だ。

郊外のターミナル駅であれば、30階建て、40階建てでもいいかもしれない。ただし、その場合、エリアの用途地域などの関係から、周辺に超高層マンションを建てられない物件であることが条件。そうであれば、エリアのランドマークとなり、中長期的に眺望の良さを維持できる。

第二に、交通アクセスに恵まれていること。超高層マンションは駅前などの再開発で建設されることが多く、最寄り駅とはペデストリアンデッキ(高架型の歩道)でつながっている物件が珍しくない。そうした物件なら、低層階に商業施設などが設置されているのがふつうで、雨の日でも濡れずに電車に乗ることができ、買い物ができる。そうした交通利便性、生活利便性の充実が資産価値の維持・向上につながる。

第三に、セキュリティが充実していること。最近の新築マンションはIT化が進んでいるので、機械よる管理の充実は当たり前で、それだけでは十分とはいえない。その点、大規模な超高層マンションだと、エントランスにコンシェルジュが配され、第三者の出入りを有人管理してくれる。マンションへの人の出入りを人の目でチェックしてくれるので安心感がある。帰宅すると、「○○さま、お帰りなさいませ」とコンシェルジュが迎えてくれるようなマンションならいっそう評価が高まる。

さらに、共用施設が充実していることも挙げられる。二層、三層吹き抜けの豪華なエントランスをはじめ、居住者が利用できる上層階のラウンジ、親族や友人などを招くことができるゲストルーム、フィットネス、在宅ワークに対応したワークスペースなどがあれば、評価が高いのではないだろうか。

超高層マンションの低層階を狙う手も

もちろん、こうしたすべての条件を満たせる物件は少ないだろうし、あっても、かなりの高額物件になってしまうかもしれない。高すぎてとても手が届かないというのであれば、超高層マンションの低層階を狙うという手もありだろう。

低層階であっても、最上階などに設置されたラウンジを利用できるのがふつうなので、眺望を楽しむことができるし、上層階に比べて価格は格段に安くなるはず。ここまで挙げてきたような条件に恵まれた物件であれば、低層階といえども資産価値の向上が期待できるのではないだろうか。


お話を聞いたのは●山下和之さん(住宅ジャーナリスト)

やました・かずゆき/1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入成功させる完全ガイド』(講談社ムック)などの著書がある。
http://yoiie1.sblo.jp/