金利

住宅の購入予算はどうやって決める? 新築&中古マンション、戸建てを無理なく手に入れるヒント

新築マンション・中古マンション・戸建て住宅を問わず、住宅購入で一番の悩みは何といっても購入予算。住宅購入にからむ「お金の話」を、不動産ジャーナリストの山下和之さんに伺いました。

自己資金はいくら必要?

多くの方にとって、住宅ローンを組もうと考えた時にまず問題となるのは「自己資金をいくら用意すべきか?」という点ではないでしょうか。もちろん先々の返済を考えれば自己資金が多いに越したことはありませんが、そうかといって自己資金を貯めている間に購入のタイミングを逃してしまうのも考えものです。

大手銀行の場合、自己資金が購入価格の20%以上ある場合に限り最優遇金利を利用できるというケースが多く見られます。また住宅金融支援機構が提供する「フラット35」(最長35年の全期間固定金利住宅ローン)の場合は、自己資金10%以上と10%未満で金利に差が出てきます。できるだけ有利な金利でローンを組むには、最低でも10%から20%、可能ならば30%程度の自己資金を用意したいものです。

国交省が行った住宅購入者の調査結果を見ると、購入した住宅の形態によって、購入価格に対する自己資金の割合に差が出る傾向が見られます。

例えば分譲戸建て(いわゆる建て売り住宅)の場合、購入価格4200万円に対して自己資金が約1,160万円(27.5%)。新築マンションの場合は購入価格5,300万円に対して自己資金約2,000万円(42%)で購入されています。これは新築マンションの価格が上昇傾向にあることから、ローンの負担を軽減するために自己資金を多めに用意しているためでしょう。(※1)

※1 出典:国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001610299.pdf

一方「フラット35」を利用した人たちの場合、3,600万円の建て売り住宅で自己資金が10%を下回っています。4,500万円の新築マンションでも10%台、3,000万円の中古マンションでは14%というデータがあります。このように建て売り住宅とマンション、新築マンションと中古マンションでは、必要と思われる自己資金にも差が出てきますので、ご自分の事情に合わせて検討してみてください。(※2)

※2 出典:住宅金融支援機構「2021年度フラット35利用者調査」
https://www.jhf.go.jp/files/400361622.pdf

高すぎる「返済負担率」は危険!

自己資金の額が決まったら、次にご自身が年間どれくらいの返済が可能かを考えてみましょう。年収に占める住宅ローン返済額の割合は「返済負担率」と呼ばれています。民間金融機関の場合、例えば「年収400万円以上であれば返済負担率35%まで認める(融資する)」というケースが多いようです。仮に年収が600万円であれば、年間返済額210万円までのローンが組めるというわけです。

しかし、年収数百万円のうち35%を住宅ローンに費やすという生活は、けっして楽なものではありません。現実的には返済負担率25%程度が安全な範囲とされています。

物件選びにはエネルギーを注ぎ徹底的に研究する方が多いのですが、住宅ローンに関しては業者や金融機関に任せきりで、金融機関や返済負担率について検討する方はあまり多くありません。物件選びは失敗しても買い替えやリフォームで挽回できますが、負担率が高い返済計画はローン破綻への入り口となります。ライフスタイルとの兼ね合いを検討し、事前に無理のない返済計画を立てるようにしたいものです。

最近は新築マンションの高騰から、中古物件の人気が高まっています。築浅マンションは耐震性など基本性能が高く、築年数が古い場合もリノベーション技術の進化によって新築並みに改善できるケースがあるため、中古住宅を購入しリフォームする方が増えているのです。しかし、中古物件の場合は融資の条件が厳しくなることもあるので注意が必要です。

近年は中古でも35年の長期ローンを組める金融機関が増えていますが、住宅の基本性能など諸条件によってはローンを断られたり、返済期間の短縮や融資額の減額を求められることも。物件により条件は様々なので、業者や金融機関に直接相談してみることが大切です。

利上げリスクを考えたローン設定を!

長いデフレからインフレ局面へと向かおうとしているいま、住宅ローンを取り巻く環境にも変化が訪れようとしています。先頃日銀が長期金利の上昇を一定程度容認する発表を行ったことを受け、大手銀行の固定金利型ローンも0.05%~0.10%の上昇を見せています。この上昇傾向は今後も続くと見られ、現在は最低金利で据え置かれている変動金利型のローンにもいずれ影響が出てくるものと考えられます。

固定金利を選ぶか変動金利を選ぶかは個人の価値観ですが、変動金利を選ぶなら月々の金利動向の見極めをしっかり行うべきでしょう。そういう細かなチェックがわずらわしいという方には、固定金利をおすすめします。固定と変動では金利に1%程度の差が出ますが、金銭的に余裕があるなら固定金利を選んだ方が精神的なゆとりが得られるでしょう。

もうひとつ検討したいのは、現在加入している生命保険の見直しです。ローンを組む際には本人の死亡などで返済が不可能になった場合に備え、団体信用生命保険に加入します。つまりローン残高分の保険に加入するのと同じことなので、場合によっては現在加入している生命保険を外し、浮いたお金を毎月の返済に回すという選択肢もあります。

また、両親や祖父母に協力を仰ぐことも積極的に検討すべきです。一定の条件を満たした住宅を購入する場合、直系尊属からの資金援助であれば贈与税が1,000万円まで非課税となります。このように「自分の周りにあるお金」についても全て考慮に入れた上で、自分に購入可能な物件、設定可能な住宅ローンの形態を慎重に選んでください。

お話を聞いたのは●山下和之さん(住宅ジャーナリスト)

やました・かずゆき/1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入成功させる完全ガイド』(講談社ムック)などの著書がある。
http://yoiie1.sblo.jp/