終活よりも先に備えたい。自分の意思を伝える“エンディングノート”
近年、行政などでも積極的に作成・配布しているというエンディングノート。“終活”という言葉が世の中に浸透するとともに、人生終幕前の準備として家族や身近な人たちに伝えたいことを記入するノートとして知られるようになっています。
人生の終い支度といったネガティブな印象もあるようですが、むしろ早い年齢で書いたほうが早く将来への備えができて良いとも聞きます。では、エンディングノートには何を書いておけばいいのでしょうか。
この記事では、イベント『これからの人生を、より自分らしく生きるためには? ~大学が作ったエンディングノート~セミナー』で講師をされた小林 二三夫(こばやし ふみお)氏のお話の一部をご紹介しています。「そろそろ…」と思っていた方も、40代・50代で「まだまだ…」の方も、ご自身とご家族の将来のためにエンディングノートとはどんなことを書くのか参考にしてはいかがでしょうか。
※イベント開催:2020年1月25日「三菱地所のレジデンスクラブラウンジ」にて。
エンディングノートは、自分の大切な情報を一冊にまとめて、いつでも伝えられるように備えること。
人生100年時代。超高齢化社会といわれている日本は、1978年に792人だった100歳以上の方が、2018年には6万9,785人(※)になっています。人生の終わりのための活動といわれている終活も、よりよい老後の設計のために定着しつつあるといえるでしょう。
「エンディングノートとは『もしも』に備えて、自分の大切な情報を一冊にまとめることです。本人以外、把握が難しいことを整理して、ご家族などに迷惑がかからないよう伝えたいことを書き込みます。自分自身をみつめることでより良い終活を導き、将来の不安を和らげることにもつながります」(小林氏)
実際にエンディングノートを書き始めようとすると、何をどう書けば良いのかわかりにくさもあるようです。この記事では、どんなことから整理すればよいのかを中心にまとめています。
※H30年厚生労働省プレスリリースより
『もしも』のとき。ご家族や周囲の人たちが困らないために、緊急時に必要な情報から整理しておくこと。
「整理する情報は例えば、金融機関やパソコンのパスワードなどは思い至りやすいことです。ほかに本籍地や転居歴、近しい友人の名前は知っていても連絡先が分からないなど、親子間でも知らないことがたくさんあるはずです。終末期の延命措置の判断などは、子どもや親族間で良かれと思う意見が分かれて、本人の意思と違ってしまうこともあり得ます」(小林氏)
『もしも』のときとは老齢で迎える死だけではなく、病気や事故、災害など不測の事態も含まれます。残された方々が困らぬよう、緊急時に必要な情報から整理しておくこと。特に、医療・介護、その時必要なお金のことなど、本人の意思が重要になることから書き始めてみるのがよいということです。
遺言書ではないからこそ、誰に何を伝えておきたいのか。想いが実現するように書いておくこと。
誤解してはいけないのが、エンディングノートは遺言書ではないということ。法的な効力がない分、自分に何かあった時に、誰に何が伝わると自分の想いが実現されるかを考えて、ルールに縛られず気負わずに書くこともポイントです。
「書いてある内容次第では、家族や親族間の諍いの原因となることもあります。財産に関することなどは、個人情報の観点からも別に保管するといった慎重な管理も必要です」(小林氏)というアドバイスも。身内との関係や相続させたくない相手がいるといった法定上の相続の分割を望まない場合などは、遺言者としての意思表示を示すための遺言書を別に作ることが望ましいようです。その際は、専門家の意見を求めていくことも大切になるでしょう。
一度書いて終わるのではなく、訂正や書き加えていくことでより役立つエンディングノートに。
遺言書は死後のことですが、エンディングノートは存命中の意思表示を含んでいます。だからこそ、一度書いて終わりではなく、家族構成や生活状況、身体や気持ちの変化などによって訂正したり、新たなノートに書き換えていくほうが役に立つものになるようです。
家族や周囲の人に問題が起きないように準備する、健康で元気なうちに自分の意思を書き留めておく、それは後悔しない生き方のための備えといえるかもしれません。

講師プロフィール:小林 二三夫(こばやし ふみお)
横浜商科大学商学部教授 博士、地域産業研究所所長
株式会社赤福取締役、株式会社イトーヨーカ堂海外部門責任者及び資金証券部門責任者
ファミリービジネス学会理事、日本国際情報学会理事日本テレビ「世界一受けたい授業」に出演し講義
相続、遺言執行専門の行政書士事務所を開業(横浜市緑区)