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贅沢もしっかり!「ゆるミニマリスト」のゆとりのある暮らし

ミニマリストと聞くと、極端にモノを減らす生活を想像するかもしれません。しかし、ブログや著書が人気のミニマリスト・阪口ゆうこさんは、何よりも人生の豊かさを最優先しています。彼女の考えるミニマリストとは? モノを所有する考えから、人との付き合い方までを聞いてみました。

目次

手放す気持ちがないものは手元に残してもいい

実はかつて、モノが散乱した部屋に住んでいました。当時、夫との関係もうまくいっておらず、あるときふと「私のいい加減さが不仲を助長させているのでは?」と思ったのです。本や書類が床から生えているような状況で、子どもの重要な学校書類を何度もなくすなど、自分が環境をコントロールできていないと感じました。「一度がんばってみよう」と思い立ったことが、片付けに目覚めたきっかけでした。

いろいろな本を読んだり、片付けに関する資格試験の勉強をする中で、共通していたのは「捨てる」こと、つまりモノを減らすことでした。それさえできれば、あとはどう並べてしまうかという収納の工夫だけ。それがとてもおもしろく、夢中になっていたころ、友人に「ゆうこってミニマリストだよね」と言われ、初めてその存在を意識しました。

ミニマリストとは明確な定義があるわけではなく、本人の考え方次第だと思います。たとえ家の中に段ボールがいくつも積み重なっていても、それが「本人にとって必要なものだけ」なのであれば、十分ミニマリストです。ある友人は若いころに収集したCDを段ボールに詰めて保管しています。プレイヤーはなく、もはや聴く手段もないけれど、それは彼女にとっての精神安定剤。こうしたモノの所有の仕方は素敵だと思いますし、私は全面的に肯定しますね。捨てる作業は心も削られるものです。そもそも手放すという発想がないものは、手元に残してもいいと考えています。

モノが減ったら時間とお金の使い方が変わった

片付けるようになって、気づかないうちに夫婦関係はよくなりました。むしろ、そんなことも気にならないほど、心にゆとりができたのかもしれません。ただやはりモノを減らすことのメリットは大きく、特に時間とお金の流れは大きく変わりました。

以前は出かけるにも準備に時間がかかっていたのですが、洋服などを減らしたことでスムーズになりました。また、食事のレパートリーを15に絞りました。メニューに悩んだときにも、その中から選ぶだけ。頻繁に作るので味の精度も上がります。

迷わず選択できるようになると時間が増えたような感覚になり、私の場合、その分でいかに“無駄なこと”をしようかと考えるようになるんです。無駄=不要ではなく、必然的に生活が豊かになるものなのではないかと私は思っています。ライブや映画、漫画などなくても生きていけますが、そういったものほど楽しいじゃないですか。時間やお金に余裕ができると、幅広く好きなことに手を出せるようになる。もはや無駄をするために、余分な無駄を減らしている状況です。

また、片付いてからは自宅時間が快適になり、外に出る機会が減ったので、自然と貯金できる生活スタイルに変わりました。これまでの部屋には閉塞感があったのか、外に楽しみを求めていたみたいです。カフェに行くのではなく、ちょっといいコーヒーマシンを買って、自宅でゆっくり楽しむのもいいなと。家での楽しみ方を覚えると、お金はあまり出て行かないのかもしれません。

おもしろいことに、環境がすっきりすると新しいことに挑戦しようと思えるんです。クリエイティブな作業にも挑戦できるし、自宅の環境も家族との距離感も最高の状況だと感じています。

人生を豊かにするための贅沢をしたい

実は、物欲のかたまりなんです。かっこいいものはほしいし、買ったらしっかり使いたい。だからこそ、一度捨てることを経験してからは、買い物や人との付き合い方も変わりました。もとからバサッと断捨離するのは苦手なので、まず買う前や知り合うときには、「手放すところまで」考えます。買った後に長く使えるか、深く仲良くなったら最後まで付き合いたいか。その点では直感が働くので、私の持ち物や友人はほぼすべて「一軍」です。

ミニマリストと呼ばれながらも、私はしっかり贅沢をします。たとえば「自宅」もそのひとつ。所有する安心感は当然、家族のライフスタイルによって変えられるし、モノが少なくなった分、収納棚を減らすなど自由度が高い。さらに猫を飼ったり、子どもの友人を呼んでバーベキューしたり、前の家では考えられなかったこともできるようになりました。

家は財産になり得ますし、武器にも防具にもなるもの。実は私、片付いていない状態の前の家がコンプレックスだったみたいで、写真が1枚も残っていないんです。必要なものや好きなものであれば、人生を豊かにするための贅沢はいいことなのではないでしょうか。私はこれまでやってきたことを肯定したいし、その方が楽しく生きられる。自分ファーストで豊かに贅沢をしたいと考えています。

  • 本記事の内容は2025年7月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

お話を聞いたのは●阪口ゆうこさん

さかぐち・ゆうこ/ミニマリスト、ブロガー。2014年にブログを開始。子育てや片付けなどの暮らしをテーマにした記事が人気となり、開始半年で60万PV/月を獲得。現在、ブログ運営のかたわら、雑誌やWEBメディアなどでも活躍中。著書に『家族がいちばん。だから、きちんと選べる。きちんと使える。ゆるミニマルのススメ』(日本文芸社)、『片付けは減らすが9割〜ゆるミニマリストが教える かんばらない整理術』(ぱる出版)、『いるもの、いらないもの、40代ミニマリストの過不足ない暮らし』(タンザナイト社)など。
https://ameblo.jp/sakaguchiyuko/