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世界の一流に学ぶ! 元気になるゴールデンウィークの過ごし方

休暇を取っているのに、なんだか平日の疲れが取れない…そんな経験はありませんか。元マイクロソフト役員で働き方改革に詳しい越川慎司さんが、日本人が苦手な「休日」の上手な取り方をアドバイスします。

欧米では「ワーク・ライフ・ハーモニー」が主流

日本人は欧米人と比べてよく働くイメージがあるかもしれませんが、労働時間だけを見ると決して長いわけではありません。どちらかといえば「休み」に対する認識の違いです。例えば、「休む」=「サボる」という考えがあったり、上司が休まないと休暇が取りにくかったり、精神的な壁が大きいように感じます。

一方、欧米では、仕事はプロセスではなく、成果に対して評価されるため、日本人のように残業ばかりしていると「こんなに時間をかけないと結果が出せない」と見なされかねません。短い時間で結果を残すことを重要視しているのです。

現在、日本ではよく「ワークライフバランス」の重要性が説かれますが、これは“仕事と生活のどちらか”の対立構造で考えられていますよね。しかし、欧米では双方を調和する「ワーク・ライフ・ハーモニー」が主流となっています。仕事は個々の成長を促し、同時に充実した生活が仕事のパフォーマンスにもいい影響を及ぼすものです。

かつて私が、マイクロソフトの米国本社にいたころ、休日も働く私を見かねた上司がハーレー(バイク)に乗せてくれたことがあります。その際に彼は「僕はこのバイクに乗るために仕事をしているんだ」と言ったんです。「休むために働く」——これはとても衝撃的でした。さらに「君は土日も働いているけど、野球のルールを知っているか? 仕事も同じで、限られた時間で成果を残すゲームなのに、君は4、5アウトまで働いているのはズルくて、ダサい」と言われたんです。そこからは、休日にまったく仕事をしなくなりました。

日本人は心と脳が疲れている

上手に休むためには「時間自律性」がとても大切だと考えています。

時間自律性とは「自分の意思で時間を使っている」と考えることです。誰かに強いられるのではなく、あくまでも主体は自分。いかに「時間を“自分で”選んでいると考えられるか」が大切で、例えば「今日はだらだらするぞ」という気持ちがあれば、それでもかまわないのです。というのも、時間自律性を意識して過ごすことが「自己効力感」につながるからです。この自己効力感は自信になり、平日の判断力を上げたり、人間関係を良くしたりするとされています。

日本人が疲れているのは、おそらく体ではなく、心と脳でしょう。この疲れは、休みの日に昼過ぎまで寝れば解消できるものではありません。むしろ刺激を受ける体験によって緩和できるのです。今後、AIがさらに発達すると、主に論理的思考や分析などを担っている「左脳」では勝負できません。その分、人間にしかない感覚的な「右脳」が重要になってきます。そのためには、人と会ったり、美術館や映画館などに足を運んだりすること。「左脳を休め、右脳に刺激を与える」を、イメージとして持っておくといいでしょう。

また、世界の一流といわれるビジネスパーソンに読書家が多いことは、よく知られています。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツは毎週1冊のペースで読書をしていますし、投資の神様、ウォーレン・バフェットは、1日5、6時間を読書に費やすという愛読家です。読書は彼らにとって自己効力感につながる趣味というだけでなく、創造力や発想力を鍛えてくれるツールでもあります。

趣味を広げる2つのポイント

しかし、「休日に何をしていいかわからない」と持て余している人もいるでしょう。実は、私もかつては趣味を持たない人間でしたが、休日に仕事をしないことで急に目に入ってくるものが増えました。

趣味や興味を広げるポイントは2つ。まずは他人に便乗してみることです。趣味は人から影響を受ける要素も強いもの。友人の好きなことを一緒に楽しむことで刺激が得られるでしょう。

もう1つは書店を訪れてみること。ビジネス書コーナーだけでなく、普段買わないジャンルの本を見て、惹かれるものを探してみましょう。私もたまたま見つけた本から、観葉植物を育てるようになり、クルマで日本一周をしようと企てているところです。キャリアの8割は偶然の出会いが左右すると言われています。

長期休暇を上手に休むコツ

ゴールデンウィークなどある程度まとまった期間の休みで意識してほしいのは、先ほどお話しした「時間自律性」と、友人の趣味に便乗したり、書店を訪れてみたりする「小さな実験」です。逆にしていけないのは、自己否定。せっかくの休みなのに、一日中ゲームをして終わった……となるのではなく、「自分がやろうと決めたことだ」と捉えましょう。

1週間前までにはある程度、何をするかの枠を設定してみてください。旅行など大きな予定がなければ、私のおすすめは、近所の公園でぼーっとしたり、地元の喫茶店でゆっくり過ごすことです。ちなみに今年のゴールデンウィークは、私はゆっくりしようと思います。仕事のメールが控えめになる期間なので、原稿を書くなど、まとまった時間がないとできないことをしたいですね。

日々忙しく過ごしていると幸せを感じる瞬間も少なくなりがちですが、人の幸せは「大きな幸せ」が舞い降りるのではなく、日々の「小さな幸せ」に気づくこと。そのためにも主体性を持って上手に休んでください。

  • 本記事の内容は2025年4月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

お話を聞いたのは●越川慎司さん

こしかわ・しんじ/株式会社クロスリバー 代表取締役社長、行動経済学専門家。国内外の通信会社を経て、2005年にマイクロソフト米国本社へ入社。業務執行役員としてExcelやPowerPointなどの事業責任者を務める。2017に週休3日・複業を実践する株式会社クロスリバーを設立。約800社の働き方改革を支援する。京都大学大学院で教鞭を執る一方で、2024年より京都芸術大学の学生として学び続けている。『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)、『トップ5%社員の読書術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、著書多数。https://cross-river.co.jp/