理想の住まいの選び方

2024年も価格高騰が続く!?新築マンションはいつ買うべきか?

新築マンションの価格高騰が続くなか、購入するタイミングは深刻な悩みになっている。もう少し待った方がよいのか、すぐに買うべきなのか?ベテランの住宅評論家・櫻井幸雄さんが2024年の新築マンション市況を分析し、狙い目のマンションを提言する。

高くても買いにくくなった新築マンション

2023年は、新築マンションを買いたい、と考えている人にとって悩ましい年となった。東京23区内では、新築マンション価格が上昇を続け、しかも抽選に当たらないと購入できないという人気物件が目立った。高くても買いにくくなったわけだ。

その状況は2024年も続くのだろうか。

もちろん、今より安くなれば、ぜひとも買いたいという人は多いだろう。が、果たして安くなる可能性はあるのだろうか。安くならず、高い水準のまま、もしくはさらに新築マンションの価格が上昇し続けた場合、それでも購入すべきなのか。

世界各地で紛争が起き、経済の先行きに不透明感が増している状況下、2024年の新築マンション市況を予測し、狙うべきマンションとは何かを考えてみた。

そろそろ値下がり……があるのか?

首都圏で新築マンション価格の上昇が顕著になったのは、2015年くらいから。以後、価格上昇が続き、コロナ禍が起きた2020年以降も値上がりした。2023年も結局「値下がり」は見られなかったので、2015年から10年近く価格上昇局面が続いたことになる。

そこまで価格上昇が続くと、そろそろ値下がりが生じるのではないか、という見方が生じる。過去のマンション市況を振り返ると、10年も価格上昇局面が続いたことはなかったからだ。

平成バブルの時期は1986年から1991年までとされているので、5年程度。2001年から始まった都心マンションブームも2007年あたりで勢いが弱まり、2008年のリーマンショックで完全に終息したので、6、7年といったところ……そのことを知っている人が、「そろそろ値下がりが始まる」とか「暴落間近」と言い始めた。

しかし、値下がりも暴落も起きず、10年が経過しようとしている。では、2024年に値下がりが起きるのだろうか。

私の考えを申し上げると、暴落は起きるはずなく、値下がりも期待薄だ。理由は、「値下がり」や「暴落」を引き起こす「在庫の積み上がり」が生じていないからだ。

過去の値下がりは、在庫増から生じた

日本では過去、何度か新築マンションの値下がりが生じた。前述した平成バブルの後、リーマンショックの2008年以降……いずれも、新築マンションの売れ残りが増えて、資金繰りに困った不動産会社が販売価格を下げたことで起きた現象だ。

つまり、新築マンションで売れ残りが積み上がると、値下がりや暴落が引き起こされた。ところが、今、新築マンションで在庫は増えていない。

不動産経済研究所が毎月発表している首都圏と近畿圏の「新築分譲マンション市場動向」(※1)で調べてみると、2023年5月から11月までの7カ月間、首都圏でも近畿圏でも新築マンションの在庫は積み上がっていない。

首都圏では、毎月4800戸前後で安定。近畿圏では、5月に3405戸あった在庫が11月に2765戸まで減っている。これでは、「在庫が増える一方なので、値下げして売りさばく」というような状況は生まれそうもない。

在庫が増えないのは、不動産会社が新規販売する物件をセーブしていることも大きいだろう。

魅力的な物件だけを少しずつ販売しているため、売れ行きが落ちず、価格水準も維持される……その状況は2024年も続くと予測される。

新築マンションを買おうとする人は、そのことを承知しておくことが肝要だろう。すなわち、値下がりを期待してウエイティングに入るのではなく、賢く物件を見定め「これなら買ってよい」と思える新築マンションに出会ったら、逃さないことである。

では、どんな新築マンションが狙い目となるのか。ここで、私がオススメしたいのは高品位なマンションである。

※1 https://www.fudousankeizai.co.jp/mansion

経済的にも住み心地も優位なマンションとは

高品位なマンションとは、つくりがよく、居住満足度を高めてくれる物件。言い方を変えると、建物にお金をかけたマンションとなる。建物にお金をかけたマンションならば、コスト面でも住み心地の面でもメリットが生じる。2つのうち、わかりやすいのは「住み心地のメリット」だろう。

たとえば、建物にお金をかけたマンションであれば、設備仕様が充実する。共用部では、宅配ロッカーが多くなったり、オートロックがハンズフリー方式(玄関キーをポケットやバッグに入れているだけで、エントランスのオートロックが解除される)が採用される。各住戸内では、ディスポーザー(生ゴミ粉砕処理機)や食器洗い乾燥機が標準設置となる。壁や窓の断熱性、遮音性が高まり、快適に暮らせる、といったメリットが生じるわけだ。

もう一つの「コスト面のメリット」も、マイホーム購入では重要なポイントになる。

たとえば、建物にお金をかけ、「ZEH-M(ゼッチマンション)」とか、「低炭素住宅」の認定を受けていると、住宅ローンの金利優遇を受けたり、住宅ローン減税の枠が大きくなる。つまり、得が大きいわけだ。

住宅ローンの金利が上昇する可能性があり、住宅ローン減税の枠が縮小する可能性がある2024年、このメリットは無視することができない。
加えて、「ZEH-M(ゼッチマンション)」とか、「低炭素住宅」の認定を受けていれば、省エネ性能が高く、毎月の光熱費を節約できることになる。

少しでも有利にマイホームを購入し、毎月のランニングコストを抑えたいと考えれば、高品位のマンションを狙うべき、という理由がお分かりいただけただろう。

金利やローン減税で有利なのは、「ZEH-M(ゼッチマンション)」より「低炭素住宅」のほう。もっと有利なのは「長期優良住宅」の認定を受けたマンション……以上の要素を併せ持つマンションも、2024年には増えて行くことが予想される。

新築マンションを購入するときには、どのようなつくりになっているのか、詳しく説明を聞くことが大切になってくるわけだ。


(2024年1月30日掲載)


お話を聞いたのは●櫻井幸雄さん(住宅評論家)

さくらい・ゆきお/住宅評論家。人生相談家。1954年生まれ。2000年から住宅評論家としての活動をスタート。年間200物件以上の取材を行う現場主義で、首都圏だけでなく、近畿圏、中部圏、福岡、札幌など全国主要都市部の住宅事情に精通する。住宅評論の第一人者として、新聞、テレビ、雑誌など幅広いメディアで活躍している。Yahoo!ニュース「個人」オーサー。
https://sakurai-yukio.com/