ライフデザイン

消化器内科医が教える!肌が老けない食べ方

洗顔や高級化粧品などで毎日のケアを怠らないのに、老けて見える肌。もしかするとその原因は「体の中」にあるのかもしれない。今回、話を伺ったのは『老けない人が食べているもの』の著者・工藤あきさん。消化器内科医師である工藤さんが考える食事の重要性とは。食が肌に与える影響や食べ方を教えてもらった。

肌の老化を促進する、3つの要因

同じ年齢でも若く見える人の特徴の1つに、肌の美しさがある。多くの基礎化粧品は皮膚の深部組織までは届かないため、内面から整えなければ外部からのお手入れの効果もムダになりかねない。肌が老けて見える原因には大きく「腸内環境(腸の不調)」と「糖化」、「酸化」の3点が深く関わっている、と工藤さんは指摘する。

【要因1】有害物質が全身に広がる「腸の不調」

腸の不調は肌に影響を与える。例えば、便秘が続くと吹き出物や肌荒れが生じる人は少なくないはず。

「腸は食べ物を消化・吸収し、腸の粘膜や腸内細菌を水と一緒に便として排出します。しかし、上手に排出されず腸内にとどまると、腐敗して腸内で増加した悪玉菌が生成した物質が、血流に乗って全身に広がってしまうのです」

つまり、しっかり消化ができないと食べたものが栄養として取り込まれず、これが肌のターンオーバーの乱れにもつながりかねない。

【要因2】シミやたるみを引き起こす「酸化」

「酸化」は鉄のサビやフルーツが空気に触れて変色するのをイメージしてほしい。酸素が他の物質と結びついて起こる反応で、肌でも同様の現象が生じる。酸化は「紫外線や喫煙、激しすぎる運動」などによって引き起こされる。

「酸化が進むとメラニンが増え、シミの原因になったり、コラーゲンが破壊されてハリが失われたりします」

【要因3】くすみやガサガサ肌の原因になる「糖化」

一方、“美肌”とは結びつかないイメージがあるが、「糖化」も肌にとっては重要なポイントだ。糖化は食べ物に含まれる糖分がタンパク質と反応した状態で、体内で糖質が増えると、血液中の糖が老化物質・AGEs(エイジズ)に変わり、肌のくすみや乾燥の原因になるという。

スムージーは要注意?老化を防ぐ食事と生活

医療の進歩が目覚ましい近年、「老化は病気」との認識も増えてきたという。老化は仕方がないものだと諦めるのではなく、日々の気づきや注意によって「遅らせる方法はある」と工藤さん。腸内環境の重要性でも触れたように、細胞の生まれ変わり(ターンオーバー)には、食事の栄養が欠かせない。

「外側からのケアに加え、内面から細胞をイキイキと若く保つことが大切です」

工藤さんは、生活における3つのポイントを指摘する。

【ポイント1】「腸内環境」を整える

近年、腸内環境についての情報は増え、一般的な知識を持っている人も多いだろう。その際に柱となるのは「腸内環境を良くする菌を摂る」「菌のエサを摂る」最後に「自身がリラックスする行動」の3つだ。

「具体的にはヨーグルトや発酵食品。もともと体内には“人間にとっていい働きをする菌”がいますので、それらを継続的に取り入れることが第一歩です。ただ摂り続けるだけでは便として排出されてしまうため、エサとなる食物繊維やオリゴ糖も併せて摂取してください。また腸の動きが活発になるのは、リラックスした状態のときです。好きなエクササイズなど、自身がリラックスできる時間を作ることも効果的といえるでしょう」

【ポイント2】「酸化」を防ぐライフスタイル

紫外線や喫煙、飲酒といった生活は見直したい。体質によっては適量のアルコールは健康に有用だといわれることもあるが、「できれば制限してほしい」とのこと。アルコールの代謝過程において発生するアセトアルデヒドが、体内で活性化酸素を酸化させてしまうことが理由だ。

【ポイント3】「糖化」を防ぐ食事

ついつい摂りすぎてしまうのが糖分。体の代謝機能を超える糖分には要注意だ。

「炭水化物やスイーツなど糖質を摂りすぎていないか、普段の食生活を見直すだけでも価値はあります。スムージーや野菜ジュースで栄養を補おうとする方もいると思いますが、実は果糖が多く、あまりおすすめはできません」

継続しやすい、毎日の食事の考え方

食事でバランスよく栄養を摂取できることが理想だが、仕事に家事、プライベートと相変わらず日々多忙な現代人。毎日ちゃんとした食事を用意するのも容易ではない。そんな際に取り入れてほしいのが「マイナス」と「プラス」の考え方だ。

「わかりやすく体に悪いものをマイナスする、例えば、過剰な糖分を控えたり、喫煙や飲酒を制限したりするだけでもいいと思います。プラスとしては、積極的に肌にいい栄養素を摂取すること。生活する上で糖化や酸化は避けられません。抗酸化作用のあるビタミンB、C、Eやカルテノイド、ポリフェノールが含まれている食材を積極的に取り入れるなど、ちょっとした工夫をしてみてはいかがでしょうか」

食事は日々のこと、継続できることが重要だ。食事の一品だけ意識するなど、できることから挑戦してほしい。加えて、1日に1.5~2リットルの水をこまめに飲むこともおすすめする。

また、食事で足りない要素をサプリなどで補うことは、悪いことではない。

「ポリフェノールを多く含むのが赤ワインであるように、必ずしも摂りやすい栄養素ばかりではありません。そのような場合はサプリを試してみるのもいいかもしれません。試す際には体への負担が少ないものからがいいでしょう。水溶性のビタミンなら、万が一取りすぎても排出されるので試しやすいですよ」

老化予防に期待が集まるものには、高い抗酸化作用を持つ「レスベラトロール」や、免疫反応を抑制する「ラパマイシン」、抗ウイルス作用のある「エピガロカテキンガレート」などがある。合う栄養素がわからなければ、サプリ会社のホームページにあるようなチャート式診断を利用してみると参考になる。

自分に不足している栄養素を知ることは難しいが、1つの目安として「口内炎ができたらビタミン不足」など、ちょっとした不調から測ることはできる。また、厚生労働省が発表している年代別の「栄養素等摂取量」を参考に、自身の食生活を見直すのも一手だ。

「肌への効果は目に見えてわかりやすいものではありませんが、“不調が気にならなくなった”と感じることは1つの改善の目安です。外からのお手入れに加え、日々の食事によって、美しく健康な肌と体を目指してください」

お話を聞いたのは●工藤あきさん

くどう・あき/消化器内科医、工藤内科副院長、美腸・美肌評論家。一般内科医として地域医療に貢献しつつ、消化器内科医として、腸内細菌、腸内フローラに精通し、「腸活」×「菌活」を活かした美容・エイジングケア治療に力を注いでいる。テレビ、本、雑誌など幅広いメディアで活躍し、その美肌から「むき卵肌ドクター」の愛称で親しまれている。著書に『老けない人が食べているもの』(アスコム)。