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「家具の向き」を変えるだけ!家庭円満になる空間づくり

家庭の空気は日々の会話に左右されるもの。ふだんからお互いの顔を見て会話ができているだろうか。家族のコミュニケーションには「家具の配置が影響する」と唱えるのは、建築士で空間デザイン心理学協会代表理事を務める高原美由紀さん。リフォームせずに家族円満になる空間づくりのポイントを解説する。

どうすれば幸せに暮らせる?感情に着目した空間デザイン心理学

カフェに入ったとき「どこに座ろうか」と、私たちは無意識で席を選んでいる。高原さんによると「そこには何かしらの理由がある」という。

「人の無意識の心理や行動を科学的なエビデンスに基づいて解明するのが、私たちが提唱する空間デザイン心理学です。心理学や脳科学、行動学、生態学など30以上の学問から成り立っています」

空間デザイン心理学の大きなテーマは「どうすれば幸せになれるか」。人が空間から受ける影響をひも解き、得たい感情や理想に合わせて、空間をつくり上げていくものだという。

「一般的に空間デザインは、家具などのモノに着目してつくられていますが、私たちが注目するのは“人がどう感じるか”。主語をモノではなく、人にして考えているのです」

これまでに何万件ものコンサル業務にあたってきた高原さん。ある日、顧客から悩みを受けて要望通りに対応したものの、その人が“幸せを実現できた”とはいえなかった。これをきっかけに「本当のニーズとは何か?人の幸せとは?」を考えるようになった。

「長年研究を重ねる中で、家庭円満・不仲には、それぞれに共通した空間があることに気づきました。住人たちの関係性に影響を及ぼすのは、家具の位置や距離などの環境。そして大切なのは、心理的に居場所があることです」

家具の位置や距離を変えれば、家族関係が変わる!

空間デザイン心理学の考えでは、少しの工夫で家族円満が期待できる。ここでは特に大切な3つのポイントを紹介する。

①「視野60度」「3.5mの法則」

まずは空間デザイン心理学を考える際に重要となる条件から見ていこう。人は左右の目で約180度の視野を持つが、相手の表情や顔色まできちんと認識できるのは、約60度の範囲が限度。それを外れるとコミュニケーションが取りづらくなる。

「たとえばリビングでテレビを見ているとき、キッチンやダイニングにいる家族の顔は見えるでしょうか。声の届く距離だったとしても、背中を向けているなど60度外であれば、相手から話しかけづらく、会話がはずみません。表情が読み取れる60度内のコミュニケーションを意識した配置にすることが重要です」

加えて「距離」も大切な要素だ。LDKなどでの家族の居場所が直径3~3.5mの円周上にあることが理想的だという。

「つながっていると共有感を持ちつつ、それぞれが自由に過ごせる距離です。また3.6m以上の距離があると、声を張り上げてつい言葉尻がキツくなりがち。些細なことですが、毎日の習慣となると“その人の性格”のように感じてしまい、家族関係に影響を及ぼすことがあります」

②テレビの位置とソファの向き

家具の配置を考える際にポイントとなるのはテレビ。というのも、多くの場合、ソファの向きはテレビの位置によって決まるからだ。そこで、キッチンやダイニングにいる人とリビングにいる人の角度や距離を、①の法則に基づいて見直してほしい。キッチンやダイニングからも画面が見えるようにと、真正面に設置してしまうと、ソファはキッチンに背を向ける形になりがち。お互いに顔が見える方向にテレビとソファを置くのがベストだ。

「壁や家具は人間の体を規定し、それによって行動が決まってしまいます。しかし意外と間取りを決める際には考慮されないもの。リフォームほど大がかりなことはしなくても、家具などの位置や角度を変えると印象はグッと変わります」

③個人の尊厳を守るパーソナルスペース

高原さんが大切に考えるのが、居場所感のあるパーソナルスペース。これまで受けてきた親子関係の相談の多くの原因が“居場所のなさ”だったそう。

「住まいには誰もが家族みんなで過ごす場(リビングなど)での個人の居場所と、一人で自由に過ごせる自分の居場所の2つがあることが重要です。パーソナルスペースは、その人の周りに常にある移動式の縄張りのようなもので、侵されると尊厳が守られていないと感じ、子どもは自分の部屋に逃げてしまいます。大切なのは、パーソナルスペースが物理的に守られた上で、“ここにいてもいいんだ”と思える安心感や受容感があり、自分らしく自由に過ごせることです。パーソナルスペースを保つことで“大切にされている”と感じることができます。親子に限らず家族みんなが共有感を持ちながら、それぞれ別のことをしていても気にならない程よい距離感を目指してください」

住まいが整うと、人生の幸福度も上がる!

動物の中で、唯一住まいづくりを人に委ねる人間。情報過多の中で生きる人間は、他の動物のように、住まいを心地よさなど“感覚”ではなく、見た目の良さなど“思考”で選ぶようになったという。しかし、空間づくりで重要なのは「家具やカーテンなどのコンテンツ(中身)ではなく、理想の暮らしや得たい感情を生み出すコンテクスト(環境)」だと高原さんは話す。

「SNSやインテリア雑誌の素敵な家具ばかりに目が向きがちですが、大切なのは安心・愛情・自己肯定感を感じられる住まいの環境(コンテクスト)なのです。どんなにおいしいコーヒーを淹れても、カップにヒビが入ると中身は流れてしまいますよね。頑丈なカップをつくるためのコツが、この空間デザイン心理学です。人生の約1/2の時間を過ごす住まいが整うと、家族関係だけでなく、自然と人生全体の幸福度・満足度を上げられる可能性があります」

家具の置き方を変えるだけで家庭円満になり、ひいては充実度の高い人生につながるのなら試さない手はない。



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お話を聞いたのは●高原美由紀さん

たかはら・みゆき/一級建築士、空間デザイン心理学協会代表理事
早稲田大学大学院人間科学研究科修了。空間デザイン歴30年、コンサル歴25年以上。累計1万件以上の間取りコンサル歴を持つ。心理学・脳科学・行動科学・生態学など、科学的根拠をもった空間づくりの法則を「空間デザイン心理学®」として体系化。「夫婦仲がよくなる」「仕事に集中できる」「ストレスが減る」など、そこで過ごしているだけで自然に幸せになる空間づくりを伝えることで、世界を愛と輝きで満たす活動をしている。著書に『ちょっと変えれば人生が変わる部屋づくりの法則』(青春出版社)がある。
URL:https://www.sdpa.jp/