ライフデザイン

生き残りたいなら片づけろ! 自衛隊式「絶対散らからない」整理整頓テクニック

つい増えてしまった雑品が収納スペースに入り切らず、部屋が散乱する。何度経験しても繰り返す、そんな状況から抜け出すにはどうすればいいのか。自衛隊で合理的な整理整頓のノウハウを学び、清掃のプロとなった畠山大樹さんは「自衛隊では、所有物の整理整頓が生き残りに直結すると教わりました。実は簡単なルールを徹底するだけで誰でも整理整頓は維持できるんです」と語る。

道具が一つ足りないだけでも生死に関わる

自衛隊のエリート隊員から清掃会社の社長へ、まさかの転身を果たした畠山大樹さん。「学生時代は特にきれい好きではなく、自宅の部屋も学校のロッカーの中も汚かった」と話す畠山さんは、22歳で陸上自衛隊第1空挺団に入隊。訓練施設で徹底的な生活習慣の指導を受けた。

「訓練施設では4人1部屋で、与えられた収納スペースはロッカー1つとベッドの下に置く収納ボックス1個だけでした。しかも、空挺団はパラシュート部隊なので備品の種類が多く、訓練時は指示された物を素早く揃えて集合しなければならない。同僚に『私のロッカーのアソコにあるアレを持ってきて』と指示する訓練もありました。いやでも与えられたスペース内でモノの置き場所を決め、整理整頓された状態を保つ習慣が身に付きました」

あるときは、教官が自室に入ってきてロッカーの中身をぶちまけ、ベッドをぐちゃぐちゃにして散らかし、ひとつだけ備品を持ち去る。その部屋を整理して、持ち去られた備品を言い当てなければいけない「台風」という訓練もあった。パラシュートでの降下や銃火器を扱う自衛官にとっては、任務中に道具が一つ足りないだけでも生死に関わる。体力や作戦実行能力と同じぐらい、自衛官にとって整理整頓は必要なことだった。

上官に怒られながらも整理整頓とモノの管理を徹底し続け、自分のスペースがきれいになるにつれて喜びを覚えた畠山さん。必要なモノを迷わずに取り出し、ストレスなく元の場所に戻せる状況が大切なのは、日常生活でも同じだと気づいた。そして、除隊後、自衛隊で学んだ片づけのテクニックとノウハウを活かし、ハウスクリーニングなどの清掃サービス業を始める。

「整理整頓ができなかった自分がこれだけ片づけられるようになったのだから、このノウハウはほかの人にも役立つと思いました」

家族全員でモノの所在地を共有すべし!

「自衛隊のロッカーも散らかっている家も同じで、『アイテムAは場所Aに』というアドレスが決まらず、『アイテムAは場所AでもBでもいい』とあいまいにしていると、いつまでも片づきません。昨日はあそこに置いた、今日はここに置いたというブレがないように、まずは毎回モノを決められたところに戻せるようになると片づけが苦ではなくなります」

片づいている家を保つには、家族全員がモノの所在地を知っておく必要がある。よくあるのは、家族が3人、4人いてもお母さんが一人で片づけをしているパターン。例えば「とりあえず入れておこう」とモノが詰め込まれがちなクローゼットは、中の見取り図とモノの配置をノートにメモして、家族全員が収納場所を把握するまで共有しておくことをすすめる。複数人が片づける機会の多い食器棚や玄関の棚なども同様だ。

「なんでもメモを取って共有するというのも自衛隊式です(笑)。わかりやすく配置するコツは、モノを減らすこと。クローゼットでは、全ての服を収納しようとしてはダメ。『いつか着るかも』と思うのではなく、むしろ、置いているスペースがもったいないと考え、1年以上着ていない服は思い切って手放す。すると、100枚あった服が50枚になり、扱う量がぐんと減って、収納のハードルが下がります」

クローゼット内に吊るす洋服は、ハンガー同士の間隔が指2本分となる量を上限とするのがおすすめ。「詰めて吊るしている状態より、指2本分空けている方が取り出しやすく、戻すときも吊るしていた場所が一目瞭然です」と畠山さん。

複数人が片づけることの多い食器棚は、収納場所をメモで共有するだけで、使いたい時にすぐ取り出せるようになる。
増えてしまいがちなクローゼットの衣類。「ハンガーの感覚は指2本分」を徹底すれば、風通しも良くなり匂いがこもることも少なくなる。

部屋をきれいに見せるには、面を揃えよ!

収納内の整理整頓ができたら、普段から目に見えている場所にも気を配ると、さらに生活が快適になる。

「私の会社ではホテルの清掃も受け持っていますが、いくら床やベッドをクリーニングしても、小物がきれいに並んでいないと掃除したようには見えません。大切なのは、モノの縦横のライン。自衛隊では『面(ツラ)を揃えろ!』とよく言われていました」

TVのリモコンやボックスティッシュなど、リビングに乱雑に置きがちなモノを並行線、直角線に沿ってきちんと整列させることで、整理整頓された印象を与えてくれる。「急な来客があったときでも、小物をさっと並べるだけで片づいた感を演出できます」と畠山さんは続ける。

「旅行先でホテルや旅館に泊まったとき、心地よく感じるのは、きれいに片づいていて、全てのモノが整列されているからです。自宅でも整理整頓を意識すれば、片付ける前より開放感を感じられるようになり、普段の暮らしが効率化して、ストレスフリーで快適な生活を送れるはずです。ぜひ、自衛隊式の整理整頓を試してみてください」

まずは小物が多いテレビ台周りの面を揃えるだけで、いつもより整った印象になる。

お話を聞いたのは●畠山大樹さん

はたけやま・だいき/1990年、北海道生まれ。株式会社お掃除レンジャー代表取締役。22歳から陸上自衛隊第1空挺団に所属。自衛隊で培った掃除・片づけ、整理整頓の技術を活かして清掃会社を起業する。ホテルや民泊、個人宅など月間約1000件以上の清掃業務を請け負う。著書に「自衛隊式片付け術 生き残りたければ片づけろ!」(飛鳥新社)がある。
https://osoujiranger.com/