最低3日、できれば1週間分を目安に
高荷さんによれば、災害に備え、準備すべき量は「最低3日、できれば7日間分が理想」だという。
「大きな災害が起こった際、最初の3日、行政や外部の支援は、人命救助や道路の復旧を最優先します。無事だった方々に対する食料などの支援はそれ以降。最低3日分は自分で確保しておかなくてはなりません。また、被災が東京や大阪など大都市であれば、状況はよりシビアになると予測されます。被災者数が多く、支援が行き届くまでに時間がかかるからです。特に東京のインフラがストップした場合、国内に東京を支援できる地方は現状ありません。コンビニやスーパーに物品が届かなくなると、買い占めなどが起こらなかったとしても、すぐに店舗の在庫はなくなります。備蓄がないと都心でも餓死する可能性はゼロではないのです。ふだん便利に物が手に入るエリアほど、長期間分、できれば1週間程度の備蓄が必要といえるでしょう」
具体的には、下記の4タイプの非常食を備蓄しよう。
①行動食(1日分程度)ようかん、ゼリー飲料、栄養補助食品、キャンディなど
食事というよりは、カロリー補給のための非常食をイメージするといいだろう。ふだんから持ち歩いたり、防災リュックに入れておきたいアイテムだ。
「便利なお菓子の1つがようかん。長期保存でき、高カロリーで高温にも低温にも耐えやすいのが特徴です。チョコレートやクッキーは、溶けたり粉々になったりすることがありますが、ようかんはさほど影響を受けません。また、ゼリー飲料は水代わりにもなります」
②避難食(3日分程度)そのまま食べられる備蓄食、野菜ジュース、お菓子など
避難所や車内泊など調理器具がない状況でも取れる簡易的な食事。調理せず、常温のままで食べられるもので、食器を使わずに済ませられるとより良い。背負った際に重さを感じない範囲の量を防災リュックに入れるほか、追加の食料は大きめの旅行鞄やスーツケースでも保管しておくと、避難時に余裕がある場合は避難所にもそのまま持っていける。
③短期備蓄(7日分程度)缶詰、レトルト食品、インスタント食品、アルファ化米など
電気やガス、水が使えないケース(在宅避難)を想定した備蓄。お湯を沸かしたり、温めたり、簡単な調理で作るため、カセットコンロとガスボンベもセットで用意しておこう。
「比較的ふだんに近い食事が可能で、この短期備蓄で1日3食をまかなうことも可能です。自宅に食材が残っていればプラスしてもいいですし、缶詰も温められるとよりおいしく食べられるでしょう」
④長期備蓄(数週間から数カ月を想定)①から③の備蓄を可能な範囲で
流通が長期間にわたって途絶える「食料危機」を想定した場合は、数週間から数カ月分の食料を。上記の品をスペースが許すだけ、多く用意できると安心だ。ただし長期備蓄を行うのは大変なので、まずは「最低3日分・できれば1週間分」を揃えるところからはじめよう。
備蓄用の食料をどのくらい用意するかは「1日に必要なカロリー」が目安となる。性別や年齢、体格、運動量などによって異なるが、政府が示す基準値(※)によると全国平均は「2168kcal」。これを基準にストック量を考えるといいだろう。
※食糧危機時における国の食料供給計画の基準値を参照
食料を絶やさず置いておく「ローリングストック」
備蓄は多いほどいいが、現実的に収納スペースも考えなくてはならない。そこで高荷さんが推奨するのが「日常備蓄(ローリングストック)」だ。“ふだん食べるもの”を少し多めに買っておき、日々の食事で期限の近いものから消費しながら、なくなる前に補充する手法。避難時でも、ふだん食べているものなのでストレスが起きにくいという。
「これを続けるだけで、常に家の中に何かしら食べ物がある状態になります。いつか食べるものを先に買うだけなので余計な出費もありません。キッチンに専用の箱を用意してストックすれば、残量がわかりやすいでしょう。期限が近いものを手前に、自由に食べられるようしておき、少なくなったら買い足してください」
高荷さんイチ押し! おいしくてユニークな非常食2選
ボローニャ「缶deボローニャ」

デニッシュパン専門店・ボローニャが作るパンの缶詰。味はプレーン、チョコ、メープルの3タイプ。1缶にはマフィンカップに入ったパンが2つ、手を汚さずに食べられるのも高ポイントだ。
「備蓄食と言えば『乾パン』が長らく使われていましたが、パンの缶詰が登場したことでふんわり・しっとりのパンをいつでも食べられるようになったことは、大きな進化と言えます」
賞味期限:製造日を含む3年6カ月
価格:6缶セット3,326円(税込)〜
https://bologne-shopping.com/shopbrand/ct19/
※現在、ご注文からお届けまでに4〜5カ月ほどかかります。
セイエンタプライズ「サバイバル®️フーズ」

未開封で25年保存可能な究極の非常食。大缶1つで約10食分に相当する。おすすめはクラッカーやシチュー、雑炊など主食と副食がセットになったタイプ。
「セイエンタプライズが、フリーズドライ技術を持つ永谷園に委託して作っているので、味がおいしい! ちょっと高いのですが買い換える必要がないので、長い目で見るとそうでもありません。我が家では年に1箱ずつ買い増しして備蓄しています」
賞味期限:製造から25年(未開封/常温保存)
価格:バラエティセット(大缶6缶)49,248円(税込)など
https://www.seishop.jp/survivalfoods/sf/
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お話を聞いたのは●高荷智也さん
たかに・ともや/合同会社ソナエルワークス 代表|備え・防災アドバイザー
1982年、静岡県生まれ。「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに「自分と家族が死なないための防災対策」を体系的に解説するフリーの防災専門家。大地震や感染症など自然災害への備えから、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝える活動に定評がある。講演・執筆・メディア出演も多く、防災YouTuberとしても活動をしている。著書に『今日から始める家庭の防災計画』『今日から始める本気の食料備蓄』(徳間書店)他多数。
https://sonaeru.jp/