名医が教える!一生、自分の歯で食べるための「3つの鉄則」

日本人の8割が患っているといわれ、歯を失う一番の理由である「歯周病」。30代以降から患者数が急増し、40代、50代ではほとんどの人が歯周病に侵されている。「たかが口の中の話」と侮ってはいけない。歯周病は、命に関わる重篤な疾患を引き起こす一因となることが近年の研究で明らかになっている。一生、自分の歯を守り、健康に生きていくための歯周病対策を、歯科医師の森下真紀さんに聞いた。

目次

お話を伺った人●森下真紀さん

歯科医師・歯学博士・株式会社日本歯科総合研究所代表取締役社長。国立東京医科歯科大学歯学部歯学科首席卒業。同大学大学院にて博士号取得の後、日本学術振興会の特別研究員を経て、2017年に日本歯科総合研究所を設立。「日本を世界一の歯科先進国へ」を掲げ、医学的見地に基づいた口腔ケアの啓発を行っている。著書に『東京医科歯科大学を首席卒業した名医が教える 世界の一流はなぜ歯に気をつかうのか:科学的に正しい歯のケア方法』(ダイヤモンド社)がある。

http://www.shikasouken.co.jp/

日本は「歯周病大国」になっている!

糖尿病、動脈硬化、アルツハイマー型認知症、肺炎……。歯周病が引き金となって起こる可能性のある重篤な疾患はいくつもあり、まさに「万病のもと」といえる。それにも関わらず「日本人の口内の健康への意識はあまりにも低い」と、森下さんは指摘する。
 
「日本では、手厚い保険制度のおかげで、歯の治療にさほどの負担がかかりません。そのため、多くの人は『痛くなったら歯科医院に行けばいい』というスタンスで、むし歯や歯周病の予防に力を注いでいません。それが、日本が歯周病大国となっている理由です」
 
歯周病の怖さは、初期症状が乏しく、痛みもほとんどないため自覚できないところにある。そのため、気づいた時にはすでに手遅れという状況もよく起こり、加えて一度罹患すれば、口内は二度と元の状態に戻ることはない。
 
人生100年時代と言われる今、歯周病を予防し、口内をできる限り健康に保つことが、長い人生を健やかに過ごすための鍵となる。
では、私たちは日ごろどのようにして、口内のケアを行うべきなのか。
 
「意識の変容に加えてやるべきことは、大きく三つ。難しいものではありませんから、ぜひ明日から始めましょう」

鉄則その1:最低でも1日1回、フロス・歯間ブラシを使う

口の中には500種以上の細菌が存在していると言われている。その中でも歯周病の原因菌となるのは、空気に触れるのを苦手とする「嫌気性細菌」と呼ばれる細菌類だ。それゆえこの細菌類は、空気にさらされる歯の表面ではなく、歯と歯の間や、歯と歯ぐきの間といった空気が届きにくい場所を好み生息する。
 
「歯ブラシでいくら歯を徹底的に磨いても、歯周病菌は排除することはできません。なぜなら、歯周病菌が潜む歯と歯の隙間には、歯ブラシの毛先は到達できないからです。つまり、歯ブラシだけでは歯周病は防げないのです」
 
そこで重要になってくるのが、フロスや歯間ブラシといった歯間清掃器具を用いたケアだ。欧米では当たり前に使われるアイテムだが、日本ではその普及率はまだまだ高いとはいえない。
 
「アメリカでは、“Floss or Die”(フロスか、死か)という言葉がありますが、歯周病が全身で様々な疾患を引き起こすことを考えれば、決して大げさな話ではないのです。歯周病を予防するためには、最低でも1日に1度は必ずフロスや歯間ブラシを使ったケアを行う必要があります」
 
フロスや歯間ブラシを使ったケアにおける最も重要なポイントは、単に歯と歯の間に器具を通すだけではなく、「歯の面にしっかりと沿わせる」という点だ。歯ぐきが締まっていて歯と歯の間に隙間が少ない場合にはフロス、歯ぐきが下がってきて隙間がある場合には歯間ブラシを使うといい。

また、舌のケアも忘れてはいけない。汚れている舌には多くの細菌が住み着いており、腸内環境に悪影響を与える可能性が近年言われている。舌ブラシなどを使って1日1回、舌をきれいにする習慣を身につければ、より一層口内の環境が整い、かつ口臭も抑えられる。

鉄則その2:30代以上は「歯ぐき」も磨く

世界でも「きれい好き」として知られるだけあって、日本人はかなりまめに歯磨きをしており、およそ8割の人が1日に2回以上歯を磨いている。それでも歯周病が多いのは、歯磨きの方法に問題があるからだという。
 
「口の中に残った食べ物の残りカスを取り除くことが歯磨きの目的である、と誤解されている方が多いのですが、それは間違いです。『細菌の塊である歯垢を取り除くこと』こそが、本来の歯磨きの目的です。

歯垢は、歯と歯の間、および歯と歯ぐきの間につきやすいものです。しかも、それらの部位は歯周病菌が好んで生息している箇所であることは前述した通り。つまり、歯周病予防のためには、歯磨きの際、歯と歯ぐきの境目にこそきちんとブラシを当てることが重要なのです。
また、歯ぐき自体を優しい力でゆっくりと磨くことは、歯ぐきの血行、代謝を促進させ、歯ぐきをより健康的にします」
 
歯磨きの回数は、朝と夜に1回ずつでいい。寝ている間は唾液が減り、細菌が繁殖しやすくなるため、特に夜には時間をかけ、フロスや歯間ブラシを併用して丁寧に磨くようにする。最近は電動歯ブラシを使う人も増えたが、手磨きでも遜色なく磨けるため、好みで選べばいい。
 
使用する歯磨き粉は、年齢で使い分けるのがベスト。幼児から10代は歯を丈夫にし、虫歯を予防するフッ素配合のもの、30代を超えたら歯周病予防に効果ありと謳うものを使うようにしよう。

鉄則その3:3カ月に1度は歯科医院に行く

歯磨きやフロスといった日常的なケアに加えて、歯科医院での定期検診を継続的に受けるのも極めて重要なこと。海外では、歯科医院での定期メンテナンスは常識となっている。
 
「口というのは、数少ない『目に見える臓器』です。それゆえ、日頃から口の中を見る習慣をつけ、正しいケアを実践すれば口の中の病気の殆どは予防できます。しかし、自己流のケアのみだとどうしても見逃しや確認不足が起きてしまいます。それを補うためには、プロによる定期的な検診とメンテナンスが必須といえます。ホームケアとプロケア、この両輪が揃って初めて歯周病の効果的な予防ができると考えてください」
 
歯科医院でのメンテナンスは、3カ月に一度ほどのペースで行うのが理想的で、最低でも半年に一度は実施してほしい。気になる費用は、平均すると1回で1万円ほど。負担が大きいと感じる人もいるだろうが、長い目でみれば実は経済的であるという。
 
「例えば3カ月に一度、歯科医院に通うとすると1年の費用は約4万円。それを30年間続ければ約120万円となります。ただ、ケアをせずに歯を失い、インプラントで補うなら、その相場は1本あたり40~50万円かかります。1本の歯が持たないほど歯周病が進行しているなら、他の歯の状況もかなり悪いはずで、治療は1本ではすまないでしょう。プロケアを習慣的に行うほうが、結果として費用対効果が高いのです」
 
なお、定期的に通い続ける歯科医院は、できるだけ優良なところを選びたい。
 
「メンテナンスの主役となるのは、歯科衛生士です。説明やアドバイスを詳細にしてくれる歯科衛生士がいる医院を選ぶといいでしょう。また、治療機材の滅菌管理がしっかりと行われているかどうかも重要です。そうした衛生面もしっかりと確認しておきたいところです」

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