静岡・春野町から“世界一”を目指す――英国王室も魅了された絶品キャビア
静岡県の山奥にある春野町に流れる川は“日本一きれいな川”と呼ばれ、その水質は日本人の舌と相性の良い軟水。その地下水で育ったチョウザメの卵から作られたのが「HAL CAVIAR(以下、ハルキャビア)」。このハルキャビアはイギリスで開催されるポロの世界大会「The Royal Windsor Cup」の昼食会でエリザベス女王や世界のVIPに献上されたほどの絶品です。生産しているのは、なんと食産業とは縁のなかったケーブル・電線メーカーです。社長の金子智樹さんが一念発起してはじめたキャビア事業、英国王室にも認められた味に込めた想いとは――。
春野町でしか味わえない、 “本当の”キャビアの風味とくちどけ
――キャビアは国産や輸入物などさまざまですが、「ハルキャビア」とはどのようなものなのでしょうか?
金子社長 「日本で一番きれいな水」で育ったチョウザメの卵です。キャビアの養殖をはじめるにあたりリサーチしたところ、キャビアの味には「水」が非常に大きく影響することがわかりました。そこで、北海道から沖縄まで日本全国、さらには海外も視野にいれてきれいな水を探したところ、静岡県・春野町の水が「まさに求めていた水」ということで、この地を選びました。「ハルキャビア」の「ハル」は春野町に由来しています。
――「きれいな水」とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
金子社長 もちろん、ゴミや不純物がなく澄んでいることが大前提です。加えて、春野町の水は南アルプスに育まれた天然水であり、「日本人がもっともおいしい」と感じる軟水。このようなきれいな水でチョウザメを育てると、まったく臭みのないキャビアになります。
――水以外にも特徴がありますか?
金子社長 塩選びから配合まで研究を重ねました。厳選した300種類ほどの塩でキャビアを試作し、塩分濃度においても試行錯誤を重ねました。さらにブレンドした塩でも試してみるなど、星の数ほど研究を重ねて、ようやくできあがったのがハルキャビアなのです。
――水、塩ともに最高の状態が見つかったというわけですね。
金子社長 そうですね。日本は世界有数の魚卵を食べ慣れた国です。たらこをはじめ、数の子やいくらなど、食べてみたことがあるし、その味の違いもわかるでしょう? そんな魚卵に対して舌の肥えている日本人でも納得できるものを提供したいと思いました。
――ハルキャビアの食感はどのようなものなのでしょうか?
金子社長 キャビアの食感は、本来はクリームに近いのです。バターのように口の中で溶けていくのです。キャビアの食べ方というのは、舌の上に一口分をのせて噛まずに上顎に押しつけてとろけていくのを楽しむものです。そして、口全体でキャビアの風味を感じ取っていきます。ハルキャビアではこのクリーミーさと風味を追求し、長くて美しい余韻を楽しめます。
――お酒との相性もよさそうですね。
金子社長 臭みがないので、後味を十分に楽しんでもらってからマリアージュをしていただくのをオススメしています。ワインやシャンパンと合わせるイメージがあると思いますが、良質なキャビアはお酒を選びません。ハルキャビアは日本酒との相性も抜群です。

ケーブル・電線メーカーから、チョウザメ養殖へ
――金子コードさんはもともと電話線を製造されていた会社ですが、どのような経緯でキャビア事業を立ち上げることになったのでしょう?
金子社長 弊社は89年の歴史を持つ会社で、私で3代目。最初は電話線をつくっていましたが携帯電話の普及に伴い、メディカル事業としてカテーテルの製造を始めました。しかし、社会情勢も激しい今の時代、売上の柱をもう一つ立てる必要があると考え、食品事業を立ち上げることにしました。仮説と結果を数値化して、同じ失敗をしないために研究を重ねて仮説を検証する。考え方やプロセスは、電話線でもカテーテルでも、キャビアにおいても共通していました。
―― 「食品事業をはじめる」と決断し、なぜキャビアをつくることにしたのですか?
金子社長 私自身がソムリエ資格を持つほどのワイン好きだったからです(笑)。それでキャビアに。ただ、つくるからには、「世界一を目指そう」と誓った。そして、当時の電線事業部長だった者を全くの未経験からキャビア事業部へ異動させて、ゼロから二人三脚でスタートしました。
――初めてキャビアを生産するに至るまで、やはり苦労も多かったのでしょうか?
金子社長 牛や豚など、ほかの養殖産業とくらべて、チョウザメは育てはじめてからキャビアが獲れるまでに7年と相当長い。なので、つくりはじめてもすぐに採算が取れません。さらに最初の頃は、チョウザメの稚魚が餌をなかなか食べてくれないので育たず、本当に苦心しました。「世界一」を目指すには、自分たちがどうチョウザメを育て、どのようなキャビアをつくりたいかを描き、温度やエサ、泳がせ方などを専門家の助言を得ながら考究し実践を重ねました。素人だったからこそ、研究に余念がありませんでした。
―― 様々な試行錯誤を重ねて初出荷に至ったのですね。
金子社長 本格的に出荷を始めたのは2018年。その味が少しずつ認められ、今では、ミシュランを獲得しているお店のシェフをはじめ、国内外のレストラン関係者の方から注目していただいています。
11月からはオンライン販売を開始予定
――とてもおいしそうなハルキャビア、どこで食べられますか?
金子社長 基本的には飲食店のみに卸しており一般販売はおりませんが、今年はキャビアの旬である11月~3月にかけて数量限定でオンラインでの販売を予定しております。
――11月ですね! 待ちきれない場合、食べられる場所はあるのですか?
金子社長 ハルキャビアは静岡県内の「ホテルグランバッハ熱海クレッシェンド」のレストランをはじめ、日本全国の料理店で提供されています。東京では直営店である「Bar HAL PINOT」というお店でも提供しています。レストランによっては、弊社が扱う塩をシェフ自身で調合してオリジナルのキャビアを作って提供しているお店もあります。実は、この「オリジナルキャビア」がまた絶品です。
――食べてみたいです!
金子社長 富士山静岡空港から春野町にある養殖場へ来ていただき、レストランでキャビアを味わってもらいつつ、自分好みのオリジナルのキャビアを作って持ち帰ってもらうというツアーの企画を構想しています。人数限定なので激戦になると思いますが(笑)。詳細は11月頃、直接お問い合わせください。
――ぜひ参加してみたいです! 本日はありがとうございました!
(写真=クロダユキ、文=半澤則吉)
春野キャビアヴァレー(金子コード)
静岡県浜松市天竜区 春野町川上34−1
053-542-0670
https://www.hal-caviar.com
Bar HAL PINOT(都内直営店)
東京都港区麻布十番3-3-1 三喜ビル3F
03-6453-7506
営業時間/19:30〜翌2:00(月〜木)、19:30〜0:00(金〜日)
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