宮古諸島の宝物

“神の依り代”と呼ばれるクバの葉から作られた、宮古に根付く神秘のアート

“神の依り代”と呼ばれるクバ(和名:ビロウ)を使って作品を生み出しているバスケットアーティストの小川京子さん。小川さんの作品は、みやこ下地島空港ターミナル内をはじめ宮古諸島内のホテルなど、あらゆる場所に飾られています。アート作品だけでなく、バッグやシェードランプなど実用的なアイテムも置かれている小川さんのアトリエ兼ギャラリーを訪ねました。
※取材および撮影は2020年10月上旬に行ったものになります。

目次

たった一枚のクバの葉から生まれる作品
作るときは大切に、情熱的に

――小川さんが作られている作品について教えてください。

小川さん 基本的にどの作品も、クバの葉っぱで作っています。クバの葉を乾かして、葉先を編んでいきます。編みやすさや仕上がりの観点から、私は新芽だけを使います。ただ、クバはヤシ科の植物で、新芽をすべて取ってしまうと成長が止まり、木が死んでしまうのです。だから一本の木から、1枚か2枚しか取らないと決めています。

――どのくらいの時間をかけて作っているのですか?

小川さん よく聞かれますが、答えるのが一番難しい質問です。クバの葉を取ってきてから乾かし、その後に作品のアイディアを考えて制作作業に入ります。でも、日によって気分がいいときも悪いときもあるじゃないですか。気持ちが乗らないときは全然アイディアが出ないんです。調子がいいと一瞬で作品のイメージが沸くこともありますが、無理やり生み出すようなことはありません。だから、正味何日かかると伝えることは、難しいんですよ。一度作品の形が決まってしまえば、集中してあっという間に作り上げます。

「一度決めたら全身の集中を作品に向けて、一気にのめり込んで作り上げてしまうの」と小川さん。スイッチが入ってから作り上げるまでの勢いは並々ならぬものだそう。

神に祈るように、縄を綯うように、
畏敬の念を作品に込めて

――クバは“神の依り代”と呼ばれているそうですが、なぜでしょう?

小川さん 一説には、神様のいる天高くへクバの木が伸びていて、そこから神様が降りてくるとされることから神の依り代と呼ばれるようになったとされています。昔から、御嶽(琉球における祭祀を行う施設)には必ずクバが植えてあります。神事をする際、クバを利用してきたという歴史があるわけです。自然崇拝している宮古や沖縄本島には、今でも御嶽がたくさん存在していて、そこに植えられているクバは神の象徴的なものになります。

――小川さんの作品に影響を与えている部分はありますか?

小川さん 私の作品をよく見てみると、通じている部分が細部に表れていると思います。私の作品には、葉先を編んでいる部分と、綯う(なう)部分があります。「縄を綯う」という行為は、祈っている姿に似ているでしょう。もちろん、作品としての造形美もありますが、神聖なクバへの敬いの気持ちも込めて、最後はクバの葉先を綯って“祈り”の形で仕上げるようにしています。

宮古諸島内のホテル「the rescape(ザ・リスケープ)」のエントランスに飾られている小川さんのアート作品。圧倒的な存在感で、来館者の目を惹きつける。

宮古諸島のあらゆる場所で
クバのアートに触れられる

――小川さんの作品は、みやこ下地島空港ターミナル内や、宮古諸島のホテル「HOTEL LOCUS(ホテル ローカス)」「the rescape(ザ・リスケープ)」など島内の様々な場所で見かけました。

小川さん みやこ下地島空港ターミナルでは国内線の出発ロビーやアートスペースにいくつか作品が置いてあります。「HOTEL LOCUS」に飾られている作品は、宮古島の人たちと一緒に作ったものです。

――観光客の方からも人気がありそうですね。

小川さん ありがたいことに、日本だけでなく海外の方からも注目していただいているみたいです。以前、「the rescape」に泊まったフランス人のお客さんが、エントランスに飾られている私の作品を見て「欲しい」と問い合わせてきたことがありました。でも、すごく大きいから海外へは持ち出せないんですよね。結局、代わりにクバで作った小さいライトを作ってあげたことがありました。昔から、「あなたの作品は日本より海外の方が好まれる」と言われます。新型コロナウイルスが拡がる前は、インドネシアで個展を開くなどしていました。新型コロナウイルスの影響でどうなるかわかりませんが、スペインのバルセロナにあるアートセンターで今年の4月から7月に個展を開くことが決まっており、準備もしていました。

小川さんのアトリエ兼ギャラリーには、クバで作られたアート作品やバッグ、ランプシェードが所狭しと並べられている。当然、どれも小川さんによる一点ものだ。

擦り切れたところも愛着が沸く
日常使いにおけるクバの作品の魅力

――インテリアとして飾るアート作品だけでなく、バッグなど実用的なものも作っているのですね。

小川さん アート作品として家に飾ってもらうのも嬉しいけど、身に着けて使って欲しいという思いからバッグなども作っているんです。常に身近に置いてもらって、クバの作品に触れてもらえたら。

――使用しているうちに素材がボロボロになってしまわないか、心配になってしまいます。

小川さん ボロボロになってもいいんですよ。土台をしっかり作っているから、なかなか壊れることはありません。多少ほつれても修理することができるし、追加で編み込んでいくことだってできます。それに、擦り切れてしまっても、そこに愛着が沸いてきて素敵でしょう。

――長く使い続けてほしいという思いはあるんですか?

小川さん 長く使えるものは、長く使ってほしいとは思います。木工製品の場合、50年生きた木を切り倒して作ったのなら50年は使わないといけない、という考えがあります。でも、私の使っているクバの葉は新芽だから、ある意味素材としては1年物。博物館で保存されているクバの民具には50年物もありますが、日常生活の中で1年使って、2年目以降も使い続けられたら、これはすごいことだなと思うようになりました。

――小川さんの作ったアート作品やバッグなどの商品は、通販などで買うことはできるのですか?

小川さん 通販などはしていないですね。ぜひ新型コロナウイルスが落ち着いて、また旅行ができるようになったら、ぜひ遊びにきてもらえたらと思っています。

 

【小川京子さんのアトリエ兼ギャラリー】
Studio ゆい
住所:沖縄県宮古島市平良下里549
アクセス:下地島空港から車で約23分
営業時間:11:00~19:00
定休日:不定休

  • 新型コロナウイルス感染症の影響により、営業時間・定休日が異なる場合がございます。



三菱地所が運営する「みやこ下地島空港ターミナル」公式サイトはこちら


(撮影=古谷千佳子、構成=レジデンスクラブマガジン編集部)

 

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