素材の魅力を引き出す、五感で堪能するコース
オホーツク海にほど近い、女満別空港。ここから北見方面へ車で1時間ほど進むと、小さくおだやかな湖・チミケップ湖にたどり着く。その湖畔にあるオーベルジュ「チミケップホテル」には、ほとんどの携帯電話の電波も届かない。それにもかかわらず全国から宿泊客が集まってくるのは、海外の名店で腕をふるってきた渡辺賢紀(わたなべ・まさき)シェフが作る、目にも美しい創作フレンチを食するためだ。
ディナーはシェフのおまかせコースで、北海道産の旬の食材を中心に構成される。シェフ自ら生産者の元を訪ねて選ぶ肉や野菜をはじめ、湖周辺に自生する滋味深い山菜やキノコ類を採って提供することもあるという。
「料理人になってからはフランス、アメリカ、スイスのフレンチで仕事をしていました。たまたま一時帰国したときにここに手伝いに来たのですが、そのときに北海道の食材のクオリティの高さに驚いたんです。魚介類はもちろん、小規模な牧場でも高品質な肉質の牛を育てていた。仔羊もフランス産のような独特の臭さがない。ジビエも血抜きが上手で新鮮でした」
渡辺シェフが作るコース料理の一皿一皿は、独創的なセンスが光る。食材の組み合わせの妙や、一口ごとに変化していく味など、想像を超越するものばかりだ。
「フランスで伝統的なフレンチを身に付けましたが、アメリカのフレンチは発想が自由でした。そうした経験がいまに活きているのだと思います。フレンチではあまり使わない食材を取り合わせたり、あえて違う食感を忍ばせたり、一瞬違う香りを漂わせたりと、五感で食事を楽しんでもらえるコース構成を心がけています」
- とろける甘みの北海道産新玉ねぎのポタージュ。添えられたウニも甘みが強く絶品。
- エゾ豚、鹿肉、牛タンのパテアンクルート。付け合わせのフレッシュなさくらんぼは余市産。
- 敷地内で採れたナスタチウムと根室産トキシラズ。新鮮で濃厚な味わいが特長。
- 驚くほど臭みがない十勝産仔羊。北見産のグリーンアスパラのみずみずしさに思わず感動。
- ふっくらとした鯛のポワレと、身の厚い厚岸のあさり。クリームソースでコク深い味わいに。
- ホワイトアスパラに添えられているのは、網走産の毛蟹。甲羅から取った出汁を蟹の身にあえて、旨味を増幅。
- 釧路の酒蔵による酒麹を使ったソルベ。イチゴの下には黒ゴマチョコのソース。メレンゲの器ごと崩していただく。
- なめらかさを極めた自家製のフロマージュブランは、雪崩れるようにつるりとした新食感。
まるで北欧の森で過ごしているような、非日常感
チミケップホテルの内観は、木の温かみを感じるロッジ風。別荘に訪れたような、アットホームな雰囲気がある。エントランスを抜けるとすぐにレストランフロアが広がり、木々が生い茂るテラスへと続く。
オーベルジュの周りには、ほとんど人の気配はない。食事の時間以外は、都会の喧騒を忘れ「自分だけの時間」を楽しむのが良いだろう。ほっとする木々のにおいを感じながら森の中を散歩したり、湖のほとりで読書をしたり、カヌーで湖上をゆったり漂うのも心地が良い。静謐を湛えた空間に、ただひとり。美しい森も、湖面に散りばめられた陽の光も、すべて独り占めしているような、贅沢な感覚になる。燃えるような赤い空と湖の夕暮れに全身を包まれたときは、思わず言葉を失う――。
チミケップ湖のまわりを囲む森の中には、様々な生き物が棲んでいる。テラスには毎朝、リスが挨拶にくる。チミケップホテルのスタッフが用意した朝食を目当てに、森から訪れるそうだ。少し歩けば、木々の隙間から愛らしいエゾシカが顔をのぞかせることもある。野生の動物と共生できるこの場所にいると、まるで北欧の森に迷い込んだような非日常的な気分になる。
夜は野生動物の鳴き声が聞こえるほど、静か。晴れた日には幾千の星が輝くロケーションでは、おのずと五感も研ぎ澄まされていく。この宿だからこそ味わえる、「食」と「自然」の贅沢な旅だ。
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女満別空港から車で1時間ほど北見方向へ向かって走るとチミケップホテルへ到着する。一泊したあとは旭川方向へと向かい、上川大雪酒造での地域限定酒を購入。旭川空港までは約1時間で到着。
(撮影=本田匡、文=ホシカワミナコ)
チミケップホテル
北海道網走郡津別町沼沢204
0152-77-2121
チェックイン/15時~
チェックアウト/10時
宿泊料/ラグジュアリーコース ツイン
2名1室利用時 1名3万800円~
※連泊不可
アクセス/女満別空港から車で約1時間







